グッドブリッジ税理士法人

導入企業が増加中! 『電子契約』のメリットと導入の条件とは

21.01.05
業種別【建設業】
dummy
従来、建設業界では紙での契約書を交付することが主流でしたが、近年では電子契約書を交付するケースも少しずつ増えてきています。
新型コロナウイルスの影響で、社会全体で急速にリモートワークが浸透したこともあり、今後は電子契約書の普及も進んでいくでしょう。
そこで今回は、電子契約を導入することでどのようなメリットがあるのか、そして、電子契約を導入する際にどのようなことに注意したらよいのか、解説していきます。
dummy
2001年の法改正で電子契約書の交付が可能に

従来の法律では、工事請負契約書は書面で交付することが義務づけられていました。
しかし、2001年の法改正により、現在は条件を満たすものについては、書面ではなく電子契約書として交付することが認められています。

電子契約には『コストの削減』や『契約のスピードの向上』などのメリットがあります。

まず、電子契約では、請負契約書を書面で交付するときにかかる印紙税がかかりません。
書面で交付する場合の印紙税の額は、以下のとおり契約金額に応じて決まっています。
※2014年4月1日から2022年3月31日までの間に作成される契約書で、記載金額が100万円を超えるものについては軽減税率が適用され、( )の額となります。

●1万円~100万円以下:200円
●100万円を超え200万円以下:400円(200円)
●200万円を超え300万円以下:1,000円(500円)
●300万円を超え500万円以下:2,000円(1,000円)
●500万円を超え1,000万円以下:1万円(5,000円)
●1,000万円を超え5,000万円以下;2万円(1万円)
●5,000万円を超え1億円以下:6万円(3万円)
●1億円を超え5億円以下:10万円(6万円)

印紙税は、積もり積もればかなりの金額になってしまいますから、これを節約できるのは大きなメリットの一つです。

また、印刷代、郵送費、契約書を製本するための手間や人件費を減らすこともできます。
建設業では、一つの工事について複数の企業や一人親方などとの間で工事請負契約が交わされるのが一般的ですから、契約書を作成してプリントアウトし、製本して署名押印、さらに相手方に送付するなどの手間は膨大なものです。
しかし、電子契約に移行すればこうした契約書に関する業務負担やコストを軽減することができるのです。
郵送するタイムラグもなくなるため、契約にかかる時間を短縮することもできます。


建設業における電子契約書交付の条件

ただし、電子契約書を交付するには、『相手方の承諾』と『電磁的措置の技術的基準に適合していること』という二つの条件を満たさなくてはなりません。

一つ目の『相手方の承諾』とは、あらかじめ契約の相手方に対して電磁的措置(コンピュータ・ネットワーク利用の措置と電子記録媒体利用の措置のいずれか)の種類、内容などを示し、承諾を得なければならないということを意味します。
承諾を得る方法についても、書面、あるいは国土交通省令で定める方法でなければなりません。

二つ目の『電磁的措置の技術的基準に適合していること』とは、見読性と原本性が確保されていることをいいます。
すなわち、ディスプレイに表示でき、出力して書面作成ができること、そして、公開鍵暗号方式による電子署名、電子的な証明書の添付、電磁的記録等の保存などによって、改変を確認することができる措置を講じていることが必要となります。

現状では、『紙の契約書のほうが安心できる』と考える企業はまだ多いため、全ての契約を電子契約に移行することは難しいといえます。
取引先が紙の契約書にこだわりを持ち、電子契約書の交付を拒否する場合は、電子契約書を交付することができません。
また、電子契約書は基本的に紙での保存が必要ないため、サーバーなどにデータを保管することになります。
万が一データが毀損してしまったら元本は社内に残りませんし、漏洩のリスクもありますから、セキュリティを強固にするためのコストはかかってきます。

こうした課題はあるものの、コスト削減などのメリットも大きい電子契約書。
建設業界でも今後ますます普及していくことが予想されますから、まだ導入していないようでしたら、一度検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2021年1月現在の法令・情報等に基づいています。