グッドブリッジ税理士法人

企業が対応しなければならない『安全配慮義務』とは

20.09.29
ビジネス【人的資源】
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企業には従業員の安全を守る義務が課せられており、これを『安全配慮義務』と呼びます。
その名称から、安全配慮義務は仕事上での事故や怪我などから従業員を守るためのものだと思われがちですが、それ以外にも、従業員の体調不良や精神的苦痛、過労死などが起きないようにすることも義務の範疇に含まれます。
今回は、この『安全配慮義務』について、紹介していきます。
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安全配慮義務とは何か、その施行の背景

『安全配慮義務』とは、労働契約法に定められた従業員を安全に働かせるための企業の義務で、2008年に施行されました。

労働契約法の第5条では、安全配慮義務について、『使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする』と明文化しています。

事業者にとっては、1人でも従業員を雇用すれば発生する義務であり、この義務を怠って、従業員になんらかの損害が発生した場合には、『安全配慮義務違反』となります。
過去には、これが損害賠償請求にまで発展することもありました。

そもそも安全配慮義務が施行されたのは、1965年に発生した陸上自衛隊員の死亡事故、いわゆる『陸上自衛隊事件』がきっかけでした。
この事件は、陸上自衛隊員が、車両整備工場で車両を整備中に後退してきたトラックに轢かれて死亡したというもので、遺族が原告となり、裁判で国の責任を追及しました。
そして、1975年に、最高裁判所は『国は、公務員の生命および健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解すべきである』という判決を下し、遺族による国への損害賠償請求を認めました。

この事件から、労働契約法において安全配慮義務の根拠が明確化し、確立されました。


企業側に求められる対応とは

安全配慮義務を怠り安全配慮義務違反となっても、労働契約法上は罰則規定がありません
しかし、労働者から訴えられ、裁判で責任を追及される可能性はおおいにあります。

とはいえ、どのように配慮すべきかは、企業の業種や業態、業務を行う場所、状況によって異なるため、明確には定義されていません。
各企業は現状を鑑みて、それぞれ適切な“配慮”をしていかなくてはなりません。

たとえば工場や作業場など、事故や怪我の発生する可能性がある場所では、設備や機械の定期的な点検、整備、安全装置の設置なども必要です。

また、従業員の心や体の健康に関しても、対策を講じなくてはいけません。
従業員に長時間労働をさせない職場環境の整備や、ハラスメントが起きないようにするための啓蒙活動なども、安全配慮義務の範疇です。
もちろん、定期的な健康診断の実施も含み、事業者は通常1年に1回の健康診断を従業員に受けさせる必要があります。

ほかにも、安全衛生教育の実施や、環境管理のための衛生管理者や安全衛生推進者の配置、作業管理のための責任者の設置など、業種によって行わなければいけない『安全配慮義務』が定められていることもあります。


コロナ禍における安全配慮義務

また、昨今の新型コロナウイルス感染症に対しても、企業は安全配慮義務を講じなければならず、多くの企業がその対策に追われています。
コロナ禍において、企業側は従業員が感染しないように最大限の配慮を行う必要があります。

厚生労働省では『職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト』を作成しており、三密回避の徹底など感染防止のための基本的・具体的な対策や、在宅勤務の推奨、症状が出た場合の対応などを提示しています。
これらのリストに沿って対策を講じることが安全配慮義務を果たすことになり、逆に濃厚接触者をそのまま出社させたり、感染者が出た場合に適切な対応をしなかったりすると、安全配慮義務違反となってしまいます

ほかにも、マスク無しで多人数が参加する会議を行ったり、感染リスクのある場所への出張要請をしたりするなども、安全配慮義務違反となる可能性が高いでしょう。

労災防止、健康面への配慮、メンタルヘルス対策からコロナ対策まで、企業側はこれまで以上に安全配慮義務をより強く意識し、適切な措置をとっていく必要があります。
一度、自社の体制、状況を見直してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2020年9月現在の法令・情報等に基づいています。