グッドブリッジ税理士法人

赤字の補填や節税にもなる!? 資本金を減らす『減資』とは

19.10.30
ビジネス【税務・会計】
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2019年10月から、小売店舗でキャッシュレス決済を行った人に2~5%のポイント還元が行われる『キャッシュレス・消費者還元事業』がスタートしました。 
現在、多くの事業者がこの制度の加盟店に登録。
さらに、加盟店の対象は中小・小規模事業者に限定されているため、対象外の企業が、資本金の『減資』により中小企業になり、加盟店に加わる動きすら活発化しています。 
しかし、いくら制度の対象になるからといって資本金を簡単に減らしてよいものなのでしょうか。 
今回は『減資』を行う必要性と、そのメリット・デメリットをご紹介します。
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減資で法律上の中小企業となるケースが増加

『キャッシュレス・消費者還元事業』は、小売店舗で消費者が買い物を行った際に、QRコードやクレジットカード、電子マネーなどのキャッシュレスで決済すると、その消費者に2~5%のポイントを還元するというものです。
これはキャッシュレス決済を促進させることを主な目的としています。

加盟店の対象となるのは、小売業の場合、資本金が5,000万円以下か、常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人事業主です。
なお、『中小企業基本法』では、この条件を満たす企業を『中小企業』と定義しています。

今回のポイント還元が集客上で有利になるのは間違いなく、現在、資本金が5,000万円を超えている企業が『減資』を行い、法律上の中小企業になるというケースが増えています。

そもそも資本金とは、会社を設立する際に用意した会社の運転資金のこと。
創業時に株主や投資家から出資を受けたものを資本金とする場合もありますが、中小企業では、実際は、創業者が自己資金を投じて、自社の資本金とすることがほとんどです。
かつては株式会社を創業する場合は、資本金が1,000万円以上必要でしたが、法改正によって、現在は資本金が1円でも会社を設立することが可能になりました。


資本金の大小で、何が違ってくる?

資本金の額面だけでは、その会社がどういう会社なのか、どんな事業を手掛けているのかなど、本当の意味でのその会社の価値はわかりません。
しかし、資本金からその会社の規模などはわかりますし、資本金の額が多いほうが、今後の融資も受けやすくなり、信用度も高まります。
資本金が少なければ、借金のある会社だと思われる可能性もあり、信用のない会社とみなされて十分な融資が受けられない恐れもあります。

しかし、だからといって資本金が多ければよいというわけでもありません。
それは、資本金は税金の額に大きく関わってくるからです。
たとえば法人税を見てみると、資本金が1億円以下の中小企業では、年間800万円以下の所得に対し、15%の軽減税率が適用されますが、1億円を超える企業の場合、法人税率は現状で23.4%にもなってしまいます。
ほかにも消費税や地方税など、資本金は少ないほうが税制面でのメリットは大きいといえます。


『有償減資』と『無償減資』の違いとは

今回の件で多くの企業が行っている『減資』とは、資本金の額を減らすことをいいます。
減資には、実質的に会社の資金が減る『有償減資』と、帳簿上の数字が減るだけで、実際に会社の資金は減らない『無償減資』があります。

『有償減資』とは、通常、事業の規模に対して資本金が大きすぎるような場合に行われます。
資本金を減少させて増えたその他資本剰余金を財源として剰余金の分配を行いますので、株主等に対して出資金を払い戻すことになり、資金が減少します。

一方、『無償減資』は、赤字を抱えた会社が繰越損金を補填するために行う減資で、実際に会社の資金が減るわけではないのが特徴です。
たとえば資本金が3,000万円あり、繰越欠損金が1,000万円ある場合に、帳簿上で資本金を2,000万円にして、その1,000万円を繰越欠損金の補填に充当すれば、繰越欠損金をなくすことができます。
会社の実質的な資金を減らすことなく繰越欠損金をなくすことができるため、対外的な信用を得ることにもつながるなどのメリットがあります。
また、前述した通り、減資は節税の恩恵を受けられることもポイントです。
資本金が1億円以下になれば、軽減税率の適用はもちろん、交際費のうち800万円までを損金として算入できたり、法人事業税の外形標準課税が免除になったりするのです。

一方、デメリットはやはり対外的な信用問題の低下があげられます。

本来、減資はそれほど頻繁に行われるものではなく、今回のような、“ポイント還元事業の対象となるための減資”は特別なケースです。
それほど、ポイント還元事業の対象となることが、その企業にとって大きなメリットになると判断したのでしょう。
減資を検討する際は、自社の状況や減資のメリットとデメリットを踏まえて、十分に熟慮することが大切です。


※本記事の記載内容は、2019年10月現在の法令・情報等に基づいています。