グッドブリッジ税理士法人

格差社会の全貌~トマ・ピケティ「21世紀の資本」

15.07.29
所長の一言
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所長の大橋よりその時々の話題をお届けするコーナーです。

今回のテーマは、1月の来日の際に大きな話題になったトマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」を元にお届けします。この本がこれだけ話題なのはやはり多くの人が世の中の行き詰まり感を感じているからなのではないでしょうか。

是非、ご一読下さい。

(写真は、息子さんの幼稚園の納涼会での2ショットです)

 トマ・ピケティの「21世紀の資本論」を読まれた方はいますでしょうか?資本論と聞いただけでも少し気が引けますが、書店のあの分厚い本を手に取る勇気はなく、最初にまず“60分でわかるピケティ入門”を手にしました。しかし少しもの足りずにいたところ、自宅の机の上に「まんがでわかるピケティ21世紀の資本」なる本が…。期待せずに読み始めたところこれが意外や意外、とても面白いものでした。文鳥を好む愛好家が集まる交流会で知り合った人たちが、それぞれの立場から、ピケティが描く「持てる者」と「持たざる者」の格差の壁を上手に表現しています。論文も、こうしたドラマ仕立てにしてくれると早く理解も深まるものだとつくづく、監修している人に感心してしまいました。

 

 さて「21世紀の資本論」の内容に触れてみたいと思いますが、確かにこれが現実なのだろうと格差社会を裏付ける理論が展開されています。大前研一氏によると「分析自体はあたりまえのことを述べているにすぎない」とコメントしていますが、一般庶民には厳しすぎる現実だと受け止めざるをえません。

 

「辛抱して頑張れば経済が良くなって給料があがる」というのは夢物語

 

 国の経済が成長をしていけば、そこに住む人々の生活も豊かさを増していきます。では国の経済成長の要因は何かというと①人口増加 ②一人当たりの産出の成長なのですが、①の人口の増加には全く期待はできない状況であることは周知の事実で、人口減少が予測されるなか経済成長のマイナスの要因にはなり得ます。そして一人あたりの産出の成長も成熟してきた社会においては大きくは望めないようです。すると…今後の大きな経済成長は見込むことはできないのです。

 

 では、成長の見込めない経済の状況で、今後存在感を増していくと想定されるのが「過去の蓄積」です。つまり今までに蓄積されてきた“資本の影響力”がますます高まっていくのです。ここでいう資本とは単に貯蓄だけでなく、知的財産や人脈、組織をさします。ピケティ氏はこの事実を『資本収益率r>経済成長率g』という理論で表現しています。もっと分かりやすく言うと、労働が生み出す価値よりも資本の生み出す価値の方が大きいということなのです。具体的に言えば、日本などの先進国では技術が進歩し、労働が生み出す価値が高まるのと並行して、ショベルカーや産業用ロボットなどの(産業)資本が、労働を代替する手段として増えてきています。確かに、レジの作業ひとつをとっても釣銭まで自動化される時代で労働の価値は低くなりつつあります。これからの時代、労働が資本を超えて重要性をもつことはないようなのです。

 

 

 個人的に頑張るだけでなく、世の中の仕組みのツボを押さえて社会資本を利用する

 

 社会資本を利用するというと難しく感じるかもしれないが、これがまた漫画で上手く表現されています。身近な社会資本といえば…「人脈」です。人と人との間柄は持ちつ持たれつであるため一方的に利用するばかりはできないが、身近な社会資本であることには間違いありません。漫画では主人公の女の子が、知り合った“税理士さん”の意見などを活かしながら人生を切り開いていくのです。

 

資本を蓄積して資本に働いてもらう

 

 ピケティの資本論は、だからといって労働の持つ価値を否定するものではありません。格差を見据えてなにができるのかを考えようというものです。ある投資家の意地の悪そうなおば様が「使ったらそれっきりという使い方は一番ダメ」といっていますが、資本を蓄積することは大切なことです。仕事でも、仕事以外の人生でも人の出会いや挑戦から得ることのできる経験など“蓄積”できるものはたくさんあります。こうした「目には見えない資本」を蓄積し、その資本の働きをも活用することで格差社会に対応していきたいものです。資本の蓄積へのキーワードは『挑戦』により新しいものと交わることではないでしょうか。