社長~企業の将来に手を打つ人~
所長の大橋よりその時々の話題をお届けするコーナーです。
前回今回と紹介させて頂いている経営者の学び場ですが、経営者の皆様に少しでも気づきを得て頂きたいという思いから開催させて頂いております。今回紹介させて頂く米デュポン社や、一倉定氏の例でもありますが、企業における社長の役割を改めて認識させられることばかりです。これからの時代を生き抜く眼力を養うためにも、学び場を通じて共に学んでいければ幸いに思います。
夏もいよいよ終盤、皆様いかがお過ごしでしょうか?
原子力発電所の稼働がゼロの中、この暑い夏を心配なく乗り切れる日本の電力インフラの強さには驚かされますが、3.11の東日本大震災後の電力の暴騰には、家庭も企業も悲鳴を上げざるを得ません。私どものクライアントの皆様の財務内容を見ても、さまざまな経費の削減をしているにもかかわらず、水道光熱費だけは平均15%程度の負担増になっているケースが見受けられます。しかし、電力会社は財務から見ると破綻間近といわれるほど切迫した状況ですので、そのしわよせはまだまだ消費者へ向かうのかもしれません。
世界人口は現在70億人を突破し、2050年までに90億人、2060年代には100億人に達するといわれています。人口が増えれば、食糧などの資源がその分必要になります。しかも経済発展により経済的に恵まれた中間層が増えることから、その需要は莫大です。また、都市化による膨大なインフラ需要が喚起され、エネルギー消費は拡大するでしょう。しかし、化石燃料への依存を続ければ二酸化炭素の排出に歯止めがかからず、地球温暖化は取り返しがつかなくなります。
危機はビジネスチャンスの宝庫 米デュポン社
人口問題やエネルギー問題などのこうした危機をビジネスチャンスの宝庫ととらえる企業があります。創業212年の米デュポン社です。火薬製造で起業したデュポン社は、その後化学品メーカーへ、そして現在バイオ技術を軸におく企業へ変革を遂げています。50年後、100年後の地球や社会の未来を描き、そこから逆算して今の経営戦略を決める。時代を先読みする眼力で、未来に必要となる事業を選び抜き、必要な資源を投入する。中小企業からすると巨人としかいいようのない企業ですが、そこには中小企業にも役立つ経営のヒントがあると思います。すごいと思ったのは、現在利益を生んでいる事業であっても、未来に不要な事業であれば手放すという姿勢です。将来の事業戦略に関連の薄い事業については、別会社化もしくは売却などにより本体事業とは切り離し、自社のもつ経営資源を未来に必要となる事業へ最大限活用しています。中小企業においても、現存する事業が5年先、10年先に世の中から必要とされる事業であるか見直し、現在の資源配分について再考する必要があります。
社長とは企業の将来に手を打つ人である 一倉定
どんなに優れた商品でも斜陽化していくことは避けられません。とするならば、わが社の将来の収益を得るための商品を、まだ現在の商品の収益力のあるうちに開発しておかなければなりません。一倉氏は「新事業というのは、それが軌道に乗って、わが社の収益の柱になるには、少なくとも3年はかかると思わなければならない」といいます。ということは、3年後のことを今日からはじめなければ間に合わないことになります。前向きにものを考え、前向きに手を打つ、これこそが社長の仕事です。社長とは、企業の将来に関することをやる人であり、そして、それは社長以外の誰もやってくれないことです。
現在のビジネスが全く不必要になるということはないと思いますが、外部環境の変化により、お客様の要求は日々変遷していくことは間違いありません。時代の変化を先読みする眼力を磨き、その先にあるお客様ニーズの変化を先読みすることで、世の中に必要とされ続ける企業でありたいものです。そのためには、経営者が自らの成功体験にとらわれず、新たな将来ビジョンを描くことが必要になります。当事務所では、経営者が、多様な時代の変化への気づきを得るための場として「経営者の学び場」を月一回開催していますので、是非一緒に考えてみましょう。