事業の多角化を考える
所長の大橋よりその時々の話題をお届けするコーナーです。
今月は「事業の多角化を考える」。アベノミクスに期待をもって幕開けした2013年ですが、皆様の事業ではその効果を実感することができていますでしょうか。
まだまだ中小企業には厳しい現状との実感しかありませんが、その打開策のひとつとして「自社事業の将来」を熟考し、多角的に事業をすすめていくことも大事なのではないでしょうか。
「小さく一歩」、まずはしてみませんか?
是非、ご一読ください。
(写真は先月、父の故郷の大連に行った時のものです)
事業の多角化を考える
アベノミクスという名のもと景況感が良くなってきている指標もあるものの、中小企業にとっては相変わらず先行きが判然としない状況が続いています。金融機関向けの専門雑誌には「経営支援の打ち切りと債権回収」といった見出しで特集が組まれており、金融円滑化法における一次的な対応でリスケジューリングに応じたものの、再建の実現可能性が乏しく「延命」状態にある企業にとっては、抜本的な改革なくしての生き残りは非常に難しくなっていくだと思います。
隣の芝生は青かった
社会構造の変化が著しいなか、現在の事業について10年後20年後、市場規模はどうなるのか、ニーズはどう変化するのか、など自社の未来への洞察力は経営者にとって最も大事な仕事です。我々中小零細企業はとかく自分の事業領域でのプレイを好み、多角化を目指すケースは私から見ていても非常に稀です。
しかし、現在の事業領域における将来像が描けない場合には、従業員の雇用を守るためにも、新しい事業分野における事業創造が必要になる という考え方も必要な時代になってきたのではないでしょうか。事業規模は違いますが、オリックスは環境エネルギーやレンタカー、温泉旅館、介護施設の運営など事業領域は金融分野にとどまらず、多角的な事業展開をしています。わずか13名で始めた会社が総資産8兆円もの巨大グループになったのはなぜなのか、グループCEOの宮内義彦会長が解き明かしています。
オリックス的事業創造
~今日一日が新しい日~
オリックス多角化のひとつのヒントが「隣地拡大」というキーワードです。新たな事業に乗り出す際には既存事業に隣接する領域に少しずつ進出する、という方法をとっているのです。機械装置のリースから自動車のリースへ、そして車検を含めた面倒を見てもらいたいという要望に応えて、メンテナンスリースの取扱いからレンタカー事業への参入など、“何事にもチャレンジし続ける”社風のもとその事業領域の拡大はとどまることを知りません。
そしてもうひとつが「マイナー出資」という事業戦略です。つまり未踏の分野に進出する際にはマイナー出資にとどめ、そろりと始めることにしているのです。マイナー出資であればリスクも限定的ですし、万が一の撤退も比較的容易です。その間にマーケットの勉強をして、うまく事業化できそうだと判断できれば思い切って事業展開を進めるのです。宮内会長は常々社員に「すべてに手を挙げろ」と言っているそうです。
「まずあらゆることに興味を示すこと。よく吟味して、ビジネスとして折り合わなければやらなければいい。一番よくないのは何もやらないことだ。」と言っています。
中堅企業へ脱皮するための「多角化」への道 ~ 稲盛和夫 ~
稲盛氏は「ある程度成功していく会社は単品で成功した中小企業なのです。単品というのは、単純な仕事、単純な技術、単純な商品のことで、その単品で成功し、ずっとそのままで満足している状態の会社が中小企業なのです」といっています。そのうえで中小企業が中堅企業へ脱皮するには、まさに『多角化が必要』と説いています。
一方で「多角化というのは、すさまじい坂道を登るようなもの」と表現し、一定の能力しかないトップが色々なものに展開をしていった場合には、その限られた能力が分散してしまいどう見ても不利になるのはあたりまえだが、その不利を承知で勇気を奮い起こして苦難の道を歩むようなものだと言います。
日本の戦後の経済史を見ますと、あるときには新聞雑誌も多角化をはやし立て、それがうまくいかなくなると「何にでも手を出すのは駄目だ」という繰り返しです。何が正しいのか、それは結果のみぞ知るところではないでしょうか。
「多角化」が現状の打開策の筆頭とはいいませんが、経営者はいろいろな事例を学び、今ある自身の価値観の枠組みを超えて、あらゆる角度から真剣に事業の構築を考えなければならないと思います。そしてまず「小さく一歩」踏み出してみてはどうでしょうか。