会計がわからんで経営ができるか
所長の大橋より、その時々の話題をお届けするコーナです。アベノミクスにより景気は上向きつつある中、来るべき時代をどう予測すべきなのか、難しい判断を迫られる状況はまだまだ続いています。
経営者をはじめとする読者の方々に、この難局を乗り切るヒントとなるような話題がお伝えできればと思います。
是非ご一読下さい。
会計がわからんで経営ができるか
アベノミクス効果により先行きの期待感から景気の浮上感を感じる今日この頃ですが、金融緩和による景気刺激が吉とでるか凶とでるかは、この金融緩和がどう実体経済に好影響を与えるか次第でしょう。特に、金融緩和により市場にばら撒かれた今までの倍にも及ぶマネーが、不動産や株などの投機的なものだけに向かうならバブルと同じ状況が起きることになります。
このマネーが企業へ貸し出され設備投資に向かい、企業の積極的な経営によって給料水準があがるなどの実態経済への波及効果が現れることを期待したいと思います。日銀は大手銀行の副頭取会で、「国債の買い付けを通して、銀行に滞留している資金を積極的に企業への貸出しに向けてほしい」と頼み込み、銀行側も融資拡大に向けた数値目標を掲げ、リスクをとって企業への貸出しを増やそうという姿勢を見せています。
私ども中小企業にとってこのアベノミクスは、追い風とし事業への発展・成長へ繋げるチャンスとなり得るのでしょうか?
会計がわからんで経営ができるか!
~会計データは経営のコックピット~
さていきなりですが、もし経営を飛行機の操縦に例えるならば、会計データはどんな役割を担っていると思われますか? 経営者は機長にあたり、会計データは飛行機のコックピットの計器盤に表示される数字に相当します。
計器盤は経営者たる機長に、刻々と変わる機体の高度、速度、姿勢、方向を正確かつ即時に示すことができなければなりません。それがなければ今どこを飛んでいるのか分からないわけですから、まともな操縦などできるはずがありません。
機長が“方位計の読み方が分からないけど、たぶん目的地はこっちだろう。よしこのまま突っ走れ”というような人物でしたら、その飛行機に同乗している乗組員(従業員)や乗客(お客様)は心配でとても一緒にフライトを楽しむことはできないはずです。
JAL再生で皆さんもご存知の京セラの稲盛和夫氏は、その著書「実学」のなかで【会計が分からなければ真の経営者になれない】と言っています。そのためにも経営者自身がまず会計というものを理解し、計器盤に表示される数字の意味するところを手に取るように理解できなくてはなりません。
稲盛氏は、月次決算書を見ていると“問題となる場所が浮き出てくる”様に見えるといいます。経営者たるもの、会計に精通をする姿勢をもちたいものです。私共も会計事務所の立場からそんな社長をサポートできる様に共に研鑽に努めてまいります。
儲かったお金はどこにあるのか?
~キャッシュベースの経営を心がける~
決算上は利益があがっているのに実際の資金繰りは苦しく、いつも資金が不足をしているという会社をよく見かけます。これは会計が「発生主義」という基準で処理をされているためです。
例えば物を販売した場合、会計上は物を引き渡した時点で売上として計上がされますが、実際の現金は、売り渡されたその1ヵ月後に回収をされたり、取引相手によってはその回収が受取手形となり、現金化されるまでに4ヶ月もかかるなどということがあるためです。
「勘定あって銭足らず」といいますが、これが“黒字倒産”などを引き起こす原因ともなります。最近はキャッシュフロー(現金)をどれだけ生み出せるかが企業の健全性を図る指標となっています。自社の生み出した利益がどのような形で会社に留保されているのか、できるだけ『キャッシュベースの経営』を心がけ強い財務体質の企業を目指しましょう。
松下幸之助氏の『ダム式経営』
お金のことを常に気にしていては仕事ができません。また事業環境の変化によっては、試験研究費や設備投資に一定の投資をせざるを得ない状況が生まれますが、資金捻出ができないばかりに、将来への投資ができないということにもなりかねません。
松下幸之助氏は『会社を経営する際、ダムをつくることで川がいつも一定の水量で流れていくように「ダムの蓄え」をもって事業を進めていかなければならない』と“ダム式経営”を説いています。
またその講義で聴衆の一人が「どうやったらそのような余裕のある経営が出来るのでしょうか?」と尋ねたところ、幸之助氏は「その答えは自分も知りません。しかしそのような余裕のある経営が必要だと思わな、あきませんな。」と答えたそうです。
何かを為そうとするときには、心の底からそうしたい、こうしたいという強い意志が必要です。経営者が“会計への理解を深め経営の舵を取り、キャッシュベースの経営を心がけることで、会社を『ダム式経営』という高みに導く”そんな覚悟で力強い財務力を備えた会社を作っていきましょう。
最後に・・・息子が幼稚園に入園しました。経営者としてだけでなく、父親としての自分も考えなければ… がんばります (^^)