グッドブリッジ税理士法人

目に見えない価値

13.09.30
所長の一言
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 所長の大橋よりその時々の話題をお届けするコーナーです。

 今月は「目に見えない価値」。「目にみえる価値」で万人共通の代表的なものといえばズバリお金だと思いますが、「目に見えない価値」を見出すその源は個々の心にあるのではないでしょうか。  

 「見えない価値」について思いを馳せ、何に価値を見出し、何を生み出していくかを熟考して頂くきっかけになればと思います。

 是非、ご一読ください。

(写真は先月行った当事務所の研修合宿の模様です。内容は次回事務所行事にてお伝え予定です。)

目に見えない価値

 

  9月7日、IOC総会で2020年東京五輪の開催が決定しました。世界最大規模の「スポーツの祭典」の開催が決定したことで、長きにわたる停滞からの脱却を目指す日本経済への好影響が早くも期待されていますが、テレビでの五輪決定の瞬間の映像には大きな感動を覚えました。そこにはオリンピックの誘致に向けた関係者の熱い思いが映し出されていました。東日本大震災という未曾有の危機に見舞われた我々日本人に大きな夢を与えてくれた彼らに心からの敬意を払わずにはいられません。

  また9月17日には、台風の影響で増水していた淀川に足を滑らせて転落し流されていた小学4年の男の子を、中国人留学生の厳俊さんが自ら飛び込み助けた出来事がありました。「助けなければいけない、と自然に思った」と偉ぶる様子もなく語っていましたが、身の危険を顧みないその勇気に誰もが心から感銘を受けたと思います。

  この二つの出来事には、何か忘れていたものを呼び覚ましてくれる気がしました。それは自分のためでない、「世のため、人のため」という誰もがもっている「良心」だと思います。我々は、純粋な人の良心に触れた時に大きな感動を覚えるのではないでしょうか。であるならば誰もが持っているこの「良心」で世の中はより良くなるのかもしれません。

 

 田坂広志氏は「目に見えない資本主義」という著書の中で、「豊かさ」というものを「貨幣経済」のパラダイム(基本的な枠組み)だけで評価することをやめてはどうかと提言しています。簡単に言うと、「お金という尺度だけでは豊かさははかれない」ということです。我々は「幸福度」を「お金」という価値の視点から見る習慣が身についてしまっています。しかし実際に我々の周りでは既に「貨幣経済」という尺度を超えたパラダイムの転換が起こっているのです。

 

 

「マネタリー(貨幣)経済」から

「ボランタリー(自発)経済」へのパラダイムの転換

 

 これまでの社会においては「貨幣経済」が圧倒的な主流の経済原理でした。つまり「お金の獲得」を目的として人々は活動をしてきたのです。しかしインターネット革命によってこれまで影を潜めていたボランタリー経済が急速にその影響力を増大しつつあります。ボランタリー経済とは、善意や好意など、「精神の満足」と目的として人々が活動する経済です。そして現在、このマネタリー経済とボランタリー経済という対立するかに見える二つの経済原理が融合し、アマゾン.コムの草の根書評などの「ハイブリット経済」(融合経済)と呼ぶべき新たな経済原理が生まれています。

 

 

 

「目に見えない価値」を見つめる企業経営

 

 これからの資本主義においては、「知識」や「関係」、「信頼」や「評判」「文化」といった「共感」をベースとした価値が高まり、こうした『目に見えない資本』を評価し、増大させていくことが経営に求められます。しかし、かつての優れた経営者は既に、「仕事の働き甲斐」「社員の和」「顧客からの共感」「社会からの信用」「人間としての成長」などの「目に見えない価値」を大切にしてきました。また、かつて日本人は、単に「生活の糧を得るため」に働くのではなく「世のため、人のため」に働くという意識を持っていました。日本のこうした素晴らしい企業観、労働観への原点回帰こそが、冬の時代の先に到来する進化した資本主義において我々が目指すべきものとなるのでしょう。 

 私ども会計事務所は、それこそ貨幣価値がものごとの尺度となっています。財務諸表には表れない、こうした「共感」や「良心」といった「目に見えない価値」を意識しながら仕事をしていく時代が到来していることを改めて認識しました。もしかすると「日本人の伝統的な調和の精神や文化」を学ぶことに次の時代のヒントがあるのかもしれません。