自主防衛
2012年1月から所長の大橋より、その時々の話題をお届けするコーナーです。
厳しい経済状況が続き、来るべき時代をどう予測すべきなのか本当に難しい判断を迫られる昨今です。経営者をはじめとする読者の方々に、この難局を乗り切るヒントとなるような話題がお伝えできればと思います。
是非ご一読下さい。
9月も中旬というのに30度を超える真夏日が続き、秋の気配が待ち遠しいこの頃ですが、この厳しい残暑ばかりでなく、我々を取り巻く環境はますます厳しくなっているように感じてしまいます。ギリシャに端を発した欧州危機、尖閣諸島の領有権を巡る中国での反日デモ、混迷の政局、国内有数メーカーであるシャープの経営危機などの顕在化している問題に加え、今後はエコカー補助金の終了による国内自動車業界の低迷も予想され予断を許さない状況です。
そんな中、米国ではFRBが量的金融緩和第三弾(QE3)の実施を決定しました。米国では2008年11月〜2011年6月迄の過去2回の量的緩和で2兆3千億ドル(約200兆円)の大量のお金を市場にばらまいていますが、今回のQE3はその第三弾で、市場の予測では6千億ドル(約50兆円)規模になる予定です。前回の2回と同様に市場に溢れた大量のマネーはガソリン価格や資源の価格に上昇圧力を加えることになり、今後は以前のようにレギュラー160円代という状況になることも予想されます。また当然のように円高ドル安の要因ともなりますので、現地法人化が進み影響は小さくなってきているとはいえ、輸出企業には厳しい円相場となりそうです。
私の住む沼津では地元のシンボル的な存在でもある西武百貨店が来年1月をもって閉店撤退となります。それによりおそらく他都市から沼津市への流入人口も減少となり、中心市街地の空洞化が益々進むことが危惧されます。
取り巻く環境の悪さを上げ始めるとキリがないのですが、周りに期待をしても全く無駄そうですので、こうなると残された手段は『自主防衛』しかありません。まずはしっかりとした『体幹』を身につけることでどんな過酷な状況にも負けない体力を身につけたいものです。
そんな『体幹』を鍛える豆知識をひとつ…
〜 任意成年後見制度の活用 〜
身近な問題で、最近相談があったのは「私は結婚をしないで養母と二人で過ごしてきましたが、その養母も他界し今は一人で暮らしています。近くには頼れる親族もいません。もし私が認知症などで万が一ものの分別がつかなくなったら、先生あとの面倒を見てもらえますか」というものです。
2000年の介護保険制度の導入と同時に「成年後見制度」がスタートしました。これは判断能力や意思能力が不十分な高齢者等に対し、その不十分な能力を補完し、“財産管理”や“身上看護”などを“裁判所の監督下”で行う公的な制度です。親族が後見人となることが多いのですが、手続きが煩雑なため第三者後見人として専門家に依頼するケースが増加しており、昨今は私共税理士にもその受皿としての役割を担うことが期待されています。
高齢者人口にしめる一人暮らしの高齢者の割合は既に30%を超え、約480万人に達しました。そのうち約30%の140万人の高齢者が「頼れる人がいない」という統計があります。知らず知らずのうちに進行した認知症の一人暮らし高齢者が、強引な営業により高額商品を買わされる等の被害は非常に多いそうです。晩婚化、非婚化、核家族化が進み、誰もがこのような状況に陥る可能性を持っているのではないでしょうか。
こんな状況に備え、本人の判断能力が低下する前に、本人が認知障害等により判断能力が不十分になったときに予め将来後見人となる人を選任できる「任意後見制度」というものがあります。自分の選んだ後見人に、判断能力のある時点で将来事理弁識を欠く状況に陥った場合の財産管理や身上看護あるいは死後の事務を委託することが可能です。しかも裁判所の監督下においてその状況がチェックされるのです。
例えば、こんなことが任意後見人へ依頼できます。
・自宅を売却して、介護施設に入所させてほしい。
・延命治療はしないでほしい。
・ペットを大事にしてほしい。
・残った財産は○○さんへ渡したい。(これは遺言ですが…)
・自分に代わって税金の申告をしてほしい。
ちなみに企業がこのような被後見人と行った意思能力に問題があるとされる取引は後日無効とされることもありますので、意思能力に問題のある高齢者等との取引には十分な注意が必要です。
どのタイミングで活用するかは様々だと思いますが、「自主防衛」の手段として覚えておいていただけたらと思います。
さて今回の写真はお盆休み恒例の事務所BBQの様子です。天城湯ケ島にある水恋鳥広場というところですが、狩野川の清流で川遊びやマスの掴み取りができる自然豊かな広場です。是非皆様も行ってみて下さい。