税務調査
2012年1月から所長の大橋より、その時々の話題をお届けするコーナーです。
厳しい経済状況が続き、来るべき時代をどう予測すべきなのか本当に難しい判断を迫られる昨今です。経営者をはじめとする読者の方々に、この難局を乗り切るヒントとなるような話題がお伝えできればと思います。
是非ご一読下さい。
(髪の毛をさっぱりイメチェンしました。いかがでしょうか?)
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いよいよ梅雨も明け夏の到来を迎えるこの時期は、税務署の税務調査着手の開始時期でもあります。税務署の基本的な事業年度は7月1日~6月30日で、6月末を基準に人員の異動が行われます。それゆえに事業年度末の6月30日をまたぐ税務調査はほとんど実施されず、大方の税務調査が6月末までには一段落するのが実情です。そしてこの7月初旬より本格的に調査が開始されるのです。
対象となるクライアントの皆様も税務調査となると気が気ではないと思いますが、私共も同様、日頃の仕事の成果が問われるわけで、私も担当者も結果に対する自信はある一方、その結果に対する責任が胸に重くのしかかります。調査になる毎にこの重責に負けないような誠実な仕事を常日頃から心がけようと、改めて仕事に対する姿勢を問いただす機会でもあります。
さて、税務調査の対象となる企業はどのように選出されるのかですが、基本的に黒字企業が対象とされます。まれに赤字でも調査の対象となる企業がありますが、長期間調査の対象とされていない企業で、取引内容が過去から大きく変化のあるケースと、取引内容に異常があるケースのどちらかの場合であることが多いようです。前者のケースは過去の経験値より想定が可能ですが、後者の取引内容に異常があるケースの例はさまざまで、会社の休眠口座での取引があったり、ネットや海外の取引が社長の個人口座で行われたり、会社名義の動産の売却代金が現金で授受されるなどの取引情報を税務署サイドが補足して調査に至ることが大半で、発覚した場合には大きな問題に繋がることが多くあります。
最近の税務署は取引に関するデータベースが非常に豊富です。このデータベースには調査官が税務調査を行った際に不正につながりそうな情報を持ち帰って載せたものや、金融機関が異常と捉えて報告した取引など様々なものが複数年に渡り累積して登録されています。このデータベースをもとに上記の取引内容に異常があるケースが発覚し調査に至るのです。イレギュラーな取引が行われる際には是非事前に相談を頂き、無意味な税務調査に繋がらない様に対応したいものです。
税務調査は取引の経理処理が企業会計原則や税法を遵守しているかどうかの観点から行われるのはもちろんのこと、調査を通して「この経営者は誠実なのだろうか」という定性的な部分での評価によっても流れが左右されます。「このぐらいは大丈夫だろう」という勝手な憶測のもとに行ったほんの少しの違法行為が調査官の経営者に対する信頼を一気に失墜させることがあります。100の内99適切に処理をしていても、たった1の仮想・隠ぺい行為が調査官の心証を「もしかしてこの経営者は何かを隠しているのではないか」というネガティブなものにさせてしまうのです。すべての事象は肯定的にも否定的に捉えることが可能で、極端かもしれませんが、交際費の食事ひとつでも否定的な見方をすれば“会社のお金を流用して食事をしているにすぎない”という捉え方もできてしまうわけです。まさしく、税務調査を通して“経営者の姿勢”が問われるのです。
ドラッカーの著書に「経営者たるもの、社会の公器として会社を考える」という言葉があります。会社組織はすべて人と社会をよりよいものにするために存在するという意味ですが、常日頃から経営者の皆様がこうした信念を抱き経営に真摯に取り組まれることが何よりの税務調査対応になるのではないかと思います。
とはいえ、どうか税務調査が少ない年度でありますように…と願う今日この頃です。