グッドブリッジ税理士法人

全国的な普及を目指す『電子処方せん』の仕組みとメリット

25.05.06
業種別【医業】
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医療現場におけるIT化や医療DXが急速に進展するなか、「電子処方せん」の導入が進められています。
電子処方せんとは、従来の紙による処方せんに代わり、電子データとしての処方情報を医療機関と薬局間で共有する新しいかたちの処方せんです。
電子処方せんの導入により、患者の利便性の向上はもちろん、医療機関・薬局における業務効率化や医療の安全性の向上など、多岐にわたるメリットが期待されています。
日本でも導入が始まった電子処方せんの基本的な仕組みや処方から調剤までの流れなどを解説します。

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コストや手間の削減と安全性向上がメリット

官民が一体となったデータヘルス改革の一環として、2023年1月26日から全国で電子処方せんの運用が始まりました。
電子処方せんとは、電子的に処方せんの運用を行う仕組みのことです。
「オンライン資格確認等システム」を基盤とした「電子処方箋管理サービス」を利用することにより、患者の同意がある場合、複数の医療機関や薬局をまたいで、患者の過去3年間に処方・調剤された情報を参照できるようになるほか、併用禁忌や重複投薬のチェックなどもこれまでより簡単に行えるようになります。

患者側のメリットは、今まで以上に薬を受け取りやすくなることと、より安心して処方・調剤を受けられるようになることの2点です。
従来の紙の処方せんは、患者が医療機関で受け取った処方せんを薬局まで持参する必要がありましたが、電子処方せんではその手間が省けます。
また、これまでは別の医療機関・薬局で処方・調剤されている薬の情報は、お薬手帳や患者の記憶をもとに、医師や薬剤師が確認する必要がありました。
しかし、電子処方せんに対応した医療機関や薬局であれば、お薬手帳や患者の記憶に頼ることなく、医師や薬剤師が電子処方箋管理サービスで薬の情報を確認することにより、正確に薬を処方・調剤できるようになります。

一方、医療機関や薬局側にとってのメリットは、処方せんの発行・管理の手間やコストの削減や薬局との連携強化による問い合わせ対応の減少、医療事故のリスク軽減などがあげられます。
従来の紙の処方せんは、発行や管理に手間やコストがかかっていましたが、電子処方せんの導入により、これを減らすことができます。
特に薬局では、処方内容を入力する作業負荷が軽減されますし、紙の処方せんを保管する場所やファイリング作業なども不要になります。
また、電子処方せんは、電子処方箋管理サービス側で項目に不備がないかチェックするため、医療機関にとっては、形式の不備による薬局からの問い合わせの減少が期待できます。
もちろん、医師が患者情報を確認したうえで、薬を処方することになるため、医療事故のリスクも下がります。

電子処方せんの利用方法と日本の導入率

電子処方せんによる処方から調剤までの流れは、従来の紙の処方せんよりも簡易的なものとなります。
まず、患者からの求めに応じて、医師が電子処方箋管理サービスを参照し、患者の容体と過去の処方・調剤情報を確認します。
その情報に応じた処方内容を電子処方箋管理サービスに登録し、電子処方せんの控えを患者に交付します。
一方、薬局はマイナンバーカードや健康保険証による患者の本人確認を行い、電子処方せんの控えをもとに電子処方箋管理サービスから処方せんを取得し、医師の処方内容に合わせて調剤された薬を患者に引き渡すことになります。
同時に、薬剤師が調剤内容を電子処方箋管理サービスに登録するまでが、一連の流れになります。

業務の効率化にも役立つ電子処方せんですが、医療機関における導入率は2025年3月時点で1割ほどとなっています。
オンライン資格確認等システムを導入済の薬局では、約6割が電子処方せんの運用をスタートさせているものの、今後はさらなる導入促進が求められます。

医療機関・薬局における電子処方せんの導入は、オンライン資格確認の仕組みを活用するため、まずはオンライン資格確認の導入が必要になります。
また、電子署名を行うためにHPKIカードも取得しなければいけません。
厚生労働省では電子処方せんの導入方法や利用方法などを、動画でも詳しく案内しているので、チェックしておきましょう。

電子処方せんは、患者側にも医療機関・薬局側にもメリットのある仕組みとして、アメリカ、イギリス、エストニア、韓国、スペイン、オーストラリアなどの諸外国ではすでに広く普及しています。
時期によっては補助金による支援なども受けられるので、導入を検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。