グッドブリッジ税理士法人

若手社員の『ホワイト離職』を防ぐために考えたいこと

24.10.08
ビジネス【人的資源】
dummy

一般的に、良好な労働環境で従業員が働きやすいホワイト企業よりも、劣悪な労働環境であるブラック企業の離職率のほうが高い傾向にあります。
しかし、ホワイト企業であっても、まったく離職者がいないわけではありません。
特にホワイト企業で顕著なのが、若手社員の『ホワイト離職』です。
働きやすい職場なのに、若手社員はなぜ会社を辞めてしまうのでしょうか。
ホワイト企業で起きる可能性のあるホワイト離職について、解説します。

dummy

ブラック企業とホワイト企業の特徴

明確な定義こそないものの、劣悪な職場環境で社員に過酷な労働や負担を強いる会社のことを「ブラック企業」と呼びます。
社員に極端な長時間労働やノルマを課す企業や、セクハラやパワハラなどのハラスメントが横行している企業、採用時の労働条件を守っていない企業などはブラック企業といえるでしょう。

2013年に新語・流行語大賞に選ばれたことで、広く知られるようになったブラック企業ですが、その8割で時間外労働など労働基準法関連の法令違反があったというデータもあり、厚生労働省は2017年より、法令違反のあった企業の一部を公表しています。

一方、ブラック企業に比べて、労働基準法関連の法令を遵守し、ハラスメントもない「ホワイト企業」は、その良好な職場環境から採用の場面で有利に働きます。
実際に、さまざまな媒体が毎年発表している、新卒向けの就職人気企業ランキングの上位は、ホワイト企業と呼ばれる企業が名を連ねています。

誰しもブラック企業よりは、有給休暇が取得しやすく、福利厚生もしっかりしているホワイト企業で働きたいと思うものです。
しかし、離職率が低いといわれているホワイト企業であっても、職場を去ってしまう社員がいます。
こうしたホワイト企業に勤めている若手社員の離職を『ホワイト離職』と呼びます。
近年は報道などで「ホワイト離職」が取り上げられることも増えてきました。

では、なぜ良好な職場環境や労働条件であるにもかかわらず、若手社員は離職してしまうのでしょうか。
そこには、ホワイト企業ならではの問題が潜んでいました。

『やりがい不足』で辞めてしまう若手社員

ホワイト離職の原因の一つとして、仕事に対する『やりがい不足』が考えられます。

多くのホワイト企業では業務の標準化が進められており、誰が担当しても同じ成果が出せるように業務フローが設計されています。
ブラック企業にありがちな属人化を廃することで、業務の効率化や生産性の向上を図ることが目的で、たとえミスをしても一人の社員が全責任を取らされることはありません。

しかし、責任がなく、誰でもできる仕事は、若手社員の意欲をそぐことにもなります。
過重労働を課されることも、大きな責任を負わされることもない代わりに、仕事の自由度や力を発揮できる機会がなければ、働くモチベーションも下がってしまいます。

また、経営が安定していることの多いホワイト企業では、新規事業を手がけたり、新規市場に参入したりする機会も少なく、仕事も定型作業の反復になりがちです。
上昇志向の若手社員であれば「このまま成長の機会のない職場にいてよいのだろうか?」と不安を覚え、将来的なキャリア形成を見据えて、離職を選択することもあるでしょう。

このようなホワイト離職を防ぐためには、若手社員でも挑戦できる環境を整備することが重要です。
決められた仕事だけを与えるのではなく、新規プロジェクトに参加させたり、難易度の高い業務を担当させたりするといった、これまで若手社員が携わることのなかった業務へ任命することで、きっとやる気を引き出せるでしょう。
新しい仕事を任されたことによって若手社員の負担が増えたとしても、上長が適宜フォローしたり、仕事量や労働時間の管理をしっかりと行なったりすれば、仕事のやりがいと働きやすさを両立させることが可能です。

また、上長のサポートは前提として、若手社員にある程度の裁量権を与えることも効果的です。
自分で仕事の進め方を考えたり、決断したりすることは若手社員の自主性を養い、責任感を持たせることにつながります。
また、仕事に対してのモチベーションも上がるでしょう。

もし現在、若手社員に定型業務ばかりさせているのであれば、まずは面談などを行い、「どんな業務にチャレンジしたいか」「どういったことに不満があるのか」「どんな働き方が理想なのか」などをヒアリングして、聞き出しましょう。
若手社員にも個性があり、新しい仕事で活躍したい人もいれば、現在の業務内容で満足している人もいます。
適切にコミュニケーションを取り、社員に合わせた仕事内容や働き方を模索していくことがホワイト離職を防ぐうえで重要なポイントです。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。