グッドブリッジ税理士法人

遺言者の思いを伝える『付言事項』で、相続トラブルを回避

24.10.01
業種別【不動産業(相続)】
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人が亡くなると、家族などがその人の財産を引き継ぐ「相続」が開始します。
相続には「法定相続」と「遺言相続」があり、遺言書がある「遺言相続」の場合は、遺言で遺産における相続分の指定や、分割方法などを決めておくこともでき、原則としてその内容が優先されます。
このように「遺言書」は法的効力のある書面として扱われますが、遺言書には、お世話になった人への感謝や家族などへ自分の気持ちを伝える『付言事項(ふげんじこう)』という、法的効力のない事項を自由に記載することもできます。
今回は付言事項について説明します。

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最後に感謝のメッセージを伝える

遺言書は、死後の財産や相続に関する取り扱いなどを定める重要な書面です。
そのため、遺言の方式による遺言の種類や、その種類ごとの要件などについては細かく民法で定められており、遺言に法的効力を持たせるためには、厳格にその要件を充足したものを作成する必要があります。

一方で、遺言書を通じて、最後に家族や大切な人たちへ感謝の気持ちを伝えたいという方も多いでしょう。
そうした場合に活用するのが、付言事項です。
付言事項は、法的効力を持たない代わりに自由な記載が許されており、主に家族や大切な人への感謝の言葉やメッセージ、葬儀や納骨についての自身の希望などを伝えるといった用途で使われます。

ほかにも相続配分が偏っている理由について説明するなど、相続人の間でのトラブルを防止する目的で、付言事項を活用するケースも考えられます。
たとえば、妻や同居家族に法定割合よりも多くの財産を相続させる場合、取り分が少なくなるほかの相続人は不公平さを感じるかもしれません。
そうした場合は、付言事項として、あえてそのように相続配分の割合を決定した理由を説明することで、ほかの相続人に納得してもらうなどの効果が期待できます。
なお、法的効力こそありませんが、付言事項も遺言書の本文の一部としてみなされます。

付言事項に書かない方がよい内容は?

原則、付言事項は遺言者が自由に記載できるものなので、記載内容に制限はありません。
ただし、文面によっては相続人に悪印象を与えてしまうなど、後々のトラブルにつながる可能性があるため、注意が必要です。
あくまで一般論にはなりますが、以下のような内容は記載しない方が無難だといえます。

(1)特定の相続人に対するネガティブな内容
遺言者の状況によっては、最後だからと特定の相続人に向けた愚痴、怒りや悲しみを書きたくなる場合もあるかもしませんが、そうした内容をきっかけに、相続人の間での遺産トラブルに発展する可能性は十分にあり得ます。
また、そういった意図がなかったとしても、相続人同士を比較するなど、書き方によっては特定の相続人が気を悪くする可能性もあります。
付言事項は自由に記載してよいからといって気を抜かず、読む人への配慮は怠らないようにしましょう。

(2)遺言書と矛盾する内容
原則、付言事項に法的効力はありませんが、遺言書の内容と矛盾した記載が付言事項にある場合、遺言の内容に疑義が生じ、紛争に発展するおそれも考えられます。
基本的に発生することは少ないケースと考えられますが、付言事項の内容が多い場合などに、意図せず遺言書の内容と一部が相反してしまうこともあり得ます。
付言事項を記載する際には、内容は簡潔にすること、解釈の余地が生まれる曖昧な記載は避けることなどを心掛けましょう。

(3)誤解を招く内容
特定の子供に、より多くの財産を相続させる場合に、ほかの子どもたちを納得させるために詳細な理由を書くことがあるかもしれません。
「同居しており、面倒を見てくれたから」といった内容であれば問題ないことが多いですが、「(ほかの子どもには)余分にお金を渡していたから」など、多額の生前贈与の事実を暗に伝えてしまうような記載は後々のトラブルにつながりかねません。
場合によっては、生前贈与の申告漏れを疑われ、税務調査が入ることも考えられます。
いずれの場合も、正当な手続きや情報共有がなされていれば問題ありませんが、あらぬ疑いをかけられる可能性があるため、誤解の余地がない書き方を検討しましょう。

遺言書の付言事項には、遺言者が思いの丈をつづることで、相続トラブルを未然に防ぐなどの効果が見込めます。
ただし、付言事項の記載内容によっては、別のトラブルを起こしかねません。
自分自身が書いた内容を客観的に見直すのはむずかしいこともあるので、事前に専門家などの第三者にチェックしてもらうことをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。