グッドブリッジ税理士法人

新たに創設される『イノベーションボックス税制』とは?

24.09.10
ビジネス【税務・会計】
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「令和6年度税制改正大綱」では、『イノベーションボックス税制』という新しい税制の創設が示されています。
この制度は、企業が取得した特許権や著作権などから生じる所得について、優遇措置を受けられるというものです。
イノベーションボックス税制は2000年代からヨーロッパの各国で導入がはじまり、アジア諸国でも導入および検討が進められています。
そして、日本でもイノベーションボックス税制が始まろうとしています。
制度が創設された背景や具体的な中身について解説します。

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制度の対象となる知的財産や所得の範囲

日本語で「(経済発展の一因としての)技術革新」と訳される『イノベーション』は、日本全体の成長には欠かせないものです。
イノベーションに関する国際競争が激化していくなかで、日本はこれまで以上に競争力を強化し、諸外国に対して優位性を示していかなければいけません。

経済産業省が公表している「外資系企業のアジア・オセアニア地域統括拠点数」では、2017年度時点で、中国が247拠点、シンガポールが324拠点なのに対し、日本は104拠点に留まっています。
そこで、民間による無形資産への投資を後押しし、国際的な競争力の強化を図るために、『イノベーションボックス税制』が創設されることになりました。
この制度は、企業が開発・取得した知的財産によって生じた所得に対し、その所得の30%に相当する金額の損金算入(所得控除)を認めるというものです。
細かく確認していきましょう。

まず、対象となる知的財産は、企業が2024年4月1日以降に取得した特許権とAI関連のソフトウエアの著作権です。
そして、この特許権とAI関連のソフトウエアの著作権を活用した『ライセンス所得』と『譲渡所得』が、対象となる所得の範囲になり、さらに、その所得のうち企業が主に『国内』で『みずから』行なった研究開発に係るものが対象となります。
30%の所得控除率を適用させるためには、次のような計算式で『制度対象所得』を求めます。

制度対象所得=ライセンス所得もしくは譲渡所得 ×  知的財産開発のための適格支出 知的財産開発のための支出総額

こうして算出した制度対象所得に30%を乗算した数字が所得控除額となります。
イノベーションボックス税制による所得控除は、法人税にすると約7%もの優遇措置に相当するため、特許権とAI関連のソフトウエアの著作権を取り扱う企業は積極的に制度を利用していきたいところです。

また、現段階で制度の対象となる範囲は、特許権とAI関連のソフトウエアの著作権を活用した所得に限られていますが、制度の効果などを検証したうえで、将来的には状況に応じて見直しが検討される予定です。

日本初となるアウトプットに対する優遇措置

イノベーションボックス税制は、フランスが2001年に導入したのを皮切りに、2007年にはベルギーとオランダ、2008年に中国、2011年にスイス、2013年にイギリス、2014年に韓国と、各国で導入が進められてきました。
また、アメリカでも無形資産に由来する所得に関する優遇措置が存在します。

こうした諸外国に続いて、日本でも導入されることになったイノベーションボックス税制は、2025年4月1日に施行されます。
ただし、制度は適用の期限が2032年3月31日までの7年間に限定されており、2025年4月1日から2032年3月31日までに開始する各事業年度で、対象となる企業は制度の適用を受けることができます。

日本にとってイノベーションボックス税制は、所得全体から知的財産によって生じる所得のみを抜き出して優遇を行う初めての制度になります。
イノベーションボックス税制とよく似た制度に『研究開発税制』があります。
この制度は、企業の試験研究費の額に税額控除割合を乗じた金額を控除できる制度で、研究開発の不確実性のリスクを軽減するための制度といえます。
つまり、研究開発税制はインプットに対する優遇措置で、イノベーションボックス税制はアウトプットに対する優遇措置といえるでしょう。
国は研究開発税制による研究開発投資の促進と、イノベーションボックス税制による無形資産投資の促進の両輪によって、イノベーションのさらなる促進を目指しています。

今後、研究開発税制と共に重要性が増すことになるイノベーションボックス税制について、ますます注目が集まることでしょう。
これからの動きについて、経済産業省のホームページなどを確認するなどして、理解を深めておきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。