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熱中症による労災が急増! 介護事業所が実施すべき対策とは

24.09.03
業種別【介護業】
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近年、地球温暖化などの影響により夏場の気温が上昇しています。
日本各地で35℃以上の猛暑日が続いたり、40℃を超えて観測史上最高気温に迫る酷暑になっていたりと、さまざまなところで暑さの影響が出ています。
介護業界では、介護サービスを利用している高齢者の方々だけでなく、介護現場に従事するスタッフの熱中症リスクも増大しているため、介護事業所は熱中症対策を講じる必要があります。

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熱中症対策は事業所の安全配慮義務

厚生労働省が2024年5月に発表した『令和5年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)』によると、2023年の職場での熱中症による死傷者数(死亡者および休業4日以上の業務上疾病者の数)は1,106人(前年比279人増)で、そのうち死亡者数は31人となっています。
熱中症による労災発生状況は年々増加傾向にあり、介護事業所においても、労働災害の状況を踏まえて、スタッフの熱中症防止に向けて適切な措置を行なっていかなければなりません。

訪問介護サービスでは、利用者に必要な買い物や利用者宅の移動などで真昼の時間帯に屋外に出る機会がほかのサービスと比べて多く、利用者によっては真夏でもクーラーをつけない場合などもあり、熱中症のリスクが高くなる傾向にあります。
また、室内の施設介護であっても、忙しくて水分補給ができていなかった場合や、入浴介助などの高温多湿の状況で作業を行なっている場合には、熱中症のリスクが高まります。
このような業務上のリスクから従業員を守るため、企業には安全配慮義務が義務づけられています。
安全配慮義務とは、従業員が安全かつ健康に労働できるようにするため、事業者が従業員の安全に配慮する義務のことで、労働契約法第5条に「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定されています。
介護事業者は、労働・安全衛生に関する法律上、熱中症対策についてさまざまな義務を負っており、これに違反して労働者が熱中症になった場合、安全配慮義務違反として損害賠償責任を負うことになる可能性があります。

安全配慮義務違反となるポイント

事業者が安全配慮義務に違反しているかの一般的な判断ポイントは下記の通りです。
(1)予見可能性
事業者が、労働者の心身の健康を害すると予測できた可能性があったかどうか。
予見できていたにもかかわらず、回避するための配慮を怠った場合は事業者の過失が問われ、安全配慮義務違反になる可能性があります。
(2)因果関係
事業者が「予見可能性」や「危険回避義務」を果たしたかという点をポイントに、熱中症の症状と因果関係があった場合は安全配慮義務違反と判断される可能性があります。
(3)労働者側の過失
熱中症による損害が労働者側に過失がある場合、事業者側の責任が低減され、損害賠償額も減額される可能性があります。

それでは、実際に事業所が介護スタッフに実施すべき熱中症対策について考えてみましょう。
職場の状況やサービス内容によって変わりますが、実施すべき一般的な熱中症対策として、以下の取り組みが考えられます。
(1)熱中症対策計画の策定
温度・湿度・WBGT値(暑さ指数)の測定値を基に、施設内や外部での業務内容に応じた適切な作業時間や休憩時間、回数を検討する。
(2)職場環境・設備の整備
休憩室や、施設内のエアコン、冷水機、シャワーなど体を冷やすための場所の整備や、冷水、スポーツドリンク、塩分、冷たいタオルなどを常備し、適切な水分補給を実践する。
(3)定期的な健康チェック
始業前・終業後に体調チェックを行い、作業方法や作業手順に負荷がかかっていないか判別し、負荷の大きい場合は内容の変更を検討する。
(4)定期的な研修の実施
管理職、一般スタッフ、パートタイマーなどへ定期的に熱中症対策や健康管理についての研修を実施し、意識を高める。

事業者や管理者が率先して熱中症について正しい知識を持つことで、介護スタッフの熱中症予防につながり、万が一、熱中症の症状を発症したときでも、適切な処置を行うことができます。
熱中症から、大切なスタッフの命・健康を守るためにも、日頃から介護事業所の熱中症対策をしっかりと整備することを心がけましょう。


※本記事の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。