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相続したくない不動産を引き継いだ場合の『負動産』の対処法

26.01.06
業種別【不動産業(相続)】
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相続といえば財産を引き継ぐイメージがありますが、実際には「もらっても困る」不動産を相続するケースが増えています。
使い道のない山林、荒れ果てた畑、管理が困難な原野など、いわゆる「負動産」は、売却も活用も容易ではなく、固定資産税や草刈りなどの維持管理費用だけが発生し続けます。
こうした負動産を相続してしまった場合、どのような選択肢があるのでしょうか。
今回は、負動産の相続で起こりやすい問題点と、相続放棄や売却、寄附といった対処法について、手続きの期限や注意点も含めて解説します。

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負動産の相続で生じやすい問題点

「負動産」とは、所有しているだけで負担となる不動産を指す言葉です。
法律上の正式な用語ではなく、実務上、維持管理に費用ばかりかかり、資産価値が乏しい土地を指す表現として用いられます。
典型的な例として、荒れた山林、利用予定のない畑、管理が行き届かない原野などがあげられます。
これらの土地は立地や需要の影響で、売却がむずかしく、資産価値が低くなりがちです。

負動産を相続したまま放置すると、さまざまな問題が発生します。
まず避けられないのが、固定資産税の負担です。
利用価値が乏しい土地であっても、所有者である限り固定資産税の納付義務は原則として免れることができません。
評価額が低い土地でも、年間数万円規模の税負担が生じることもあり、長期間保有すれば相当な金額に膨らむ可能性があります。

さらに、管理責任も重くのしかかります。
特に山林や原野では、台風や大雨による土砂崩れのリスクがあり、万一事故が発生すれば、所有者として損害賠償責任を問われる可能性があります。

負動産の処分がむずかしい理由として、地域特性によるハードルも無視できません。
代表的なものとして「境界の不明確さ」が大きな問題となります。
取得してから長い年月が経過した土地では、隣地との境界があいまいなことが多く、売却前に測量が必要になるケースがあります。
測量費用は土地の規模や地形によって変動しますが、少なくとも数十万円以上の予算が必要になることが多いです。

また「地形の問題」も深刻です。
急傾斜地や湿地、岩盤が多い土地などは、建物の建築が困難で、なかなか買い手がみつかりません。
さらに「インフラ未整備」も大きな障害となります。
上下水道はもちろん、電気すら通っていない土地や、建築基準法上の道路に接していない土地は、建物の建築が認められないため、誰も手を出そうとしないのが現実です。

このように、負動産は所有しているだけで経済的・精神的な負担が続く、まさに「負の遺産」となり得ます。

負動産を相続した際に選べる主な選択肢

負動産を相続してしまった場合、または相続する可能性がある場合、どのような選択肢があるのでしょうか。
最も現実的な解決策の一つは「相続放棄」です。
相続放棄をすれば、負動産を含むすべての相続財産を引き継がずに済みます。
ただし、相続放棄には重要な制限があります。
家庭裁判所への申述が必要で、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に行わなければなりません。
この期間を過ぎると、自動的に相続を承認したものとみなされるため、迅速な判断が求められます。
また、相続放棄は「全部相続するか、何も相続しないか」の選択であり、預貯金だけ相続して負動産だけ放棄するといった部分的な放棄は認められません。
なお、相続財産を売却したり処分したりといった、財産の利益を得る行為をすると「単純承認」とみなされ、相続放棄できなくなる点には特に注意が必要です。

相続放棄をしない場合でも、いくつかの対処法があります。
まず検討すべきは「売却」です。
「こんな土地、誰も買わないだろう」と諦める前に、不動産会社や土地買取専門業者に査定を依頼してみることをおすすめします。
地域によっては、太陽光発電用地や資材置き場、キャンプ場などの需要があり、思わぬ買い手が見つかることもあります。
複数の業者に相談することで、活用可能性が見えてくる場合もあるでしょう。

売却がむずかしい場合には「寄附」という選択肢もあります。
自治体への寄附、隣地所有者への寄附、公益法人への寄附などが考えられます。
ただし、自治体は管理コストを理由に寄附を受け付けないケースが多いのが実情です。
一方、隣地所有者は土地をまとめることでメリットがある場合があり、交渉の余地があります。

2023年4月27日からは、相続した土地を国が引き取る「相続土地国庫帰属制度」も始まりました。
ただし、この制度の対象は、一定の要件を満たす土地に限られます。
建物がないこと、境界が明確であること、土壌汚染や崩壊の危険がないことなど、厳格な審査が行われます。
また、審査手数料(1筆につき1万4,000円)に加えて、国が10年間管理するための負担金(最低20万円から、土地の地目や面積、区域によって加算の算定式が定められています)が必要です。

最終的に、畑・山林・原野など、一般には使い道が乏しい土地は、維持コストだけが続く負動産となる可能性が高いのが現実です。
相続してから後悔しないためには、相続放棄・売却・寄附など複数の選択肢を早い段階で把握しておくことが重要です。
特に相続放棄は3カ月という期限があるため、負動産となる可能性がある不動産を相続する場合は、すぐに専門家へ相談することをおすすめします。
司法書士や弁護士などの専門家は、個別の事情に応じた最適な解決策を提案してくれるでしょう。
早期の判断と適切な対処が、将来にわたる負担軽減につながることを覚えておきましょう。


※本記事の記載内容は、2026年1月現在の法令・情報等に基づいています。