明日からできる! 歯科クリニックの『コスト管理』と『経費削減』
歯科医院経営において重要な要素の一つが、出ていくお金をコントロールするコスト管理です。
日々の忙しい診療業務に追われていると、コスト管理はつい後回しになりがちです。
しかし、適切な経費削減は、新たな広告費をかけたり労働時間を増やしたりすることなく、手元に残る利益を確実に増やすことができる手段です。
歯科医院における経費の仕組みを整理し、無理なく実践できるコスト管理と経費削減の手法について解説します。
歯科医院で「必要経費」に該当する費用とは
経費とは、事業を行うために必要となる支出の総称を指します。
歯科医院の場合、その内訳は多岐にわたりますが、大きくは「診療に直結する費用」と「医院を維持する費用」に分けることができます。
診療に直結する代表的な費用が、治療に使用する金属やセメント、薬品、印象材などの「材料費」です。
また、詰め物や被せ物の製作を外部に委託する場合の「歯科技工料」も大きな割合を占めています。
これらは患者数や診療内容に比例して増減する変動費です。
一方、医院を維持する費用には、テナントの「家賃(地代家賃)」や、診療ユニット、レントゲン、CT、レセコンなどの高額な医療機器に関わる「購入費用(減価償却費)」が含まれます。
これらは毎月一定額が発生する固定費です。
さらに、医院運営に欠かせない電気・水道などの「水道光熱費」、スタッフのユニフォーム代やスタッフルームの備品などの「消耗品費」も経費となります。
そして、歯科医院の経費のなかで最も大きなウェイトを占めるのが、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付スタッフへ支払う「給与賃金」と、それに付随する法定福利費などの「人件費」です。
これら一つひとつの項目が、適正な水準にあるかどうかを見極めることが、コスト管理の第一歩となります。
経費を削減することの「真のメリット」
経営的な視点で見ると、経費削減は売上をアップさせるよりも、クリニックの利益に大きな影響を与える場合があります。
たとえば、利益率が20%の歯科医院において、利益を10万円増やそうとした場合、売上ベースでは50万円アップさせる必要があります。
新規の患者を集めたり、自由診療を増やしたりして50万円の売上をつくるには、広告宣伝費やスタッフの労力、長い時間が必要です。
しかし、経費を10万円削減できれば、それはそのまま10万円の利益として手元に残ります。
つまり、経費削減は、少ない労力で利益を生み出すための最も即効性のある手段といえるでしょう。
また、経費削減によって安定した財務体質をつくることは、医院の存続にも関わります。
景気の変動や近隣への競合医院の開業、感染症の流行などで一時的に患者数が減少した場合でも、損益分岐点を低く抑えておくことで、赤字に転落するリスクを最小限に抑えることができます。
経費削減によって生まれた余剰資金は、最新機器への投資やスタッフの昇給・研修費へと還元することができ、結果として医療の質とスタッフのモチベーション向上という好循環を生み出します。
歯科医院の具体的な経費削減方法
トップがやみくもに「節約しよう」と号令をかけるだけでは、現場のスタッフに負担を強いるばかりで長続きしません。
ポイントは「在庫管理(モノ)」と「時間管理(ヒト)」の合理化にあります。
まず「モノ」の管理、特に材料費の削減についてです。
多くの医院で見られるのが、ディーラーからのキャンペーン情報につられて大量購入してしまった過剰在庫や、いつか使うかもしれないと保管されているデッドストックです。
これらは保管場所を圧迫するだけでなく、使用期限切れによる廃棄ロスを生む温床となります。
まずは在庫の適正数を決め、発注点を明確にするルールづくりが必要です。
さらに重要なのが「品目数の削減」です。
同じ用途のセメントや印象材が、メーカー違いでいくつも存在しているケースは少なくありません。
院長の好みもあるかもしれませんが、医院全体で標準的な材料を統一することで、大量発注による単価交渉がしやすくなるだけでなく、スタッフが覚える手順もシンプルになり、ミスやロスが減少します。
次に「ヒト」の管理、つまり人件費のコントロールです。
人件費のコントロールとは、給与を下げるということではなく、生産性の低い時間を減らすことを意味します。
最も注目したいのは「残業時間」です。
診療後の片付けや締め作業が常態的に長引いている場合、それは個人のスキルの問題ではなく、業務設計や運用ルールといったシステムの問題なのかもしれません。
たとえば、アポイントの入れ方を工夫して診療終了間際に重い処置を入れないようにする、片付けの手順をマニュアル化して全員で共有するなど、業務フローを見直すことで残業代を削減できる可能性があります。
また、技工料についても、補綴物の再製(リメイク)率をチェックしてみてください。
再製が多い場合、形成や印象の精度に問題があるのか、技工所との連携不足なのか、原因を突き止めて改善することで、無駄な技工料の支払いを防ぐことができます。
歯科医院におけるコスト管理と経費削減は、単なる節約ではなく、医院の経営基盤を盤石にして、よりよい医療を提供するための大切なプロセスです。
必要経費の性質を理解し、材料の在庫管理や品目の統廃合、スタッフの業務効率化による残業時間の短縮など、できることから着手してみましょう。
※本記事の記載内容は、2026年1月現在の法令・情報等に基づいています。