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建設工事の『騒音』や『振動』についての規制と対策

26.01.06
業種別【建設業】
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建設現場において、避けては通れない課題が「騒音」と「振動」です。
重機が稼働すれば大きな音が出ますし、地面を掘削すれば揺れも生じます。
しかし、こうした騒音と振動を放置していると、近隣住民とのトラブルに発展し、最悪の場合は行政からの工事停止命令や損害賠償請求を受けるリスクがあります。
建設工事を行ううえでは、騒音や振動に関する法令を正しく理解し、現場レベルで適切な対策を徹底させることが重要です。
建設業者は理解しておきたい建設工事における騒音・振動の規制内容と、現場で実践すべき具体的な対策を説明します。

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工事で発生する騒音・振動の実態とリスク

建設工事では、掘削機やクレーンといった重機の稼働音、コンクリートを破砕する衝撃音、資材を運搬する大型車両の走行振動など、どうしても避けられない音や揺れが発生します。
こうした騒音や振動は、人の感覚を刺激して、不快にさせる「感覚公害」と呼ばれ、近隣住民の睡眠不足や会話の妨げなど、日常生活に深刻な影響を及ぼします。

また、リスクは外部に対してだけではなく、現場で働く作業員にとっても、大きな騒音や振動に長時間さらされ続けることは、難聴や耳鳴り、めまい、手指のしびれといった健康被害を引き起こす可能性があります。

騒音・振動対策は、周辺環境への配慮であると同時に、自社の従業員を守る労働安全衛生の観点からも、経営者が率先して取り組むべき優先度の高い課題といえます。

こうした被害を未然に防ぐため、国は「騒音規制法」や「振動規制法」といった法律を整備し、建設工事に対して厳しいルールを定めています。
さらに、各自治体によっては、環境確保条例など、国の法律よりも厳しい独自の条例を設けている場合もあるため、施工場所ごとの確認が欠かせません。

法律のなかで特に注意が必要なのが、「特定建設作業」と呼ばれる区分です。
これは、建設工事として行われる作業のうち、著しい騒音や振動を発生させる作業として政令で定められたものを指します。
この特定建設作業を行う場合には、工事開始の7日前までに、所轄の市町村長や特別区長へ届け出を行う義務があります。

騒音と振動に関する法的な規制

「騒音規制法」では、くい打機(もんけんを除く)、びょう打機、さく岩機、空気圧縮機(一定の定格出力以上のもの)、バックホウ、トラクターショベル、ブルドーザー(環境大臣が指定する低騒音型機以外のもの)を使用する作業、あるいはコンクリートプラントを設けて行う作業などが「特定建設作業」として指定されています。

これらの特定建設作業を行う際、敷地境界における騒音の大きさは「85デシベル以下」に抑えなければならないと定められています。
85デシベルは、地下鉄の車内やパチンコ店内に近い大きさで、これを超えると日常生活に支障をきたすレベルとされています。

音の大きさだけでなく、作業ができる時間帯や日数にも厳しい制限があります。
原則として、夜間から朝までの間は作業を行なってはいけません。
また、1日あたりの作業時間も原則10時間以内(第1種区域の場合)と定められています。
さらに、同一の場所で作業を継続できる期間は連続6日以内であり、日曜日やその他の休日には作業を行なってはならないという決まりもあります。
これらの基準を超過し、周辺の生活環境が著しく損なわれていると判断された場合、市町村長から改善勧告や改善命令が出されることになります。

一方、「振動規制法」では、くい打機や、鉄球を使用した建築物の解体作業、舗装版破砕機、ブレーカーを使用する作業、あるいは鉄球を使用して建築物を破壊する作業などが「特定建設作業」として指定されています。
振動に関する規制基準値は、敷地境界において「75デシベル以下」です。

時間や日数の制限についても、騒音規制法とほぼ同様の枠組みが採用されています。
夜間・早朝の作業禁止、1日の作業時間の上限、連続作業日数の制限(6日以内)、日曜・休日の作業禁止などが法令で明確に定められています。
振動は音と違って体感として直接伝わるため、心理的な不安をあおりやすく、数値基準をギリギリでクリアしていてもクレームにつながりやすいという特徴があります。
そのため、数値管理だけでなく、より慎重な運用が求められます。

近隣住民の信頼を得るための対応と技術導入

法令遵守はあくまで最低限のルールであり、実際の現場運営においては、それ以上の配慮と対策が求められます。
近隣住民とのトラブルを回避するために最も効果的なのは、丁寧なコミュニケーションと情報の「見える化」です。
工事を始める前の挨拶回りはもちろんのこと、いつ、どのような作業を行い、どの程度の音や振動が出るのかを、近隣住民へ事前にわかりやすく説明することが大切です。

具体的な対策としては、工事の進捗状況や騒音・振動計の数値を掲示板でリアルタイムに報告したり、万一の際のクレーム受付窓口を設置して周知したりすることがあげられます。

さらに、ハード面での対策も進化しています。
近年では、低騒音・低振動型の建設機械(国土交通省指定のものなど)が普及しているほか、高性能な防音シートや防音壁、吸音材などの技術も向上しています。
多少のコストはかかりますが、こうした技術を積極的に導入することは、周辺環境への負荷を減らすだけでなく、企業としての誠実な姿勢を示すことになります。

建設工事における騒音・振動対策は、規制値の遵守を大前提としたうえで、周辺住民の生活を守るという視点を持ち、誠意ある対応を尽くすことが大切です。
徹底した環境対策と丁寧なコミュニケーションが、不要なトラブルを未然に防ぐカギになります。


※本記事の記載内容は、2026年1月現在の法令・情報等に基づいています。