突然! 無断! 飲食店を悩ませるキャンセル問題への対処法
飲食店のオーナーを悩ませる問題の一つが、お客の「突然のキャンセル」や「無断キャンセル」です。
予約時間直前にキャンセルの連絡があったり、予約時間を過ぎても連絡が一切とれなかったりすると、その日の売上が消えるだけではなく、行き場を失った食材の廃棄ロスや、手持ち無沙汰になってしまうスタッフの人件費といったコストの無駄が発生します。
さらに、ほかのお客に対する機会損失も起きてしまうでしょう。
飲食店経営にとっては看過できない深刻なリスクとなり得る、キャンセル問題を深掘りします。
深刻化する「ノーショー」と経済的損失
連絡のない無断キャンセルは、「No show(ノーショー)」とも呼ばれ、昔から飲食店を困らせてきました。
キャンセルの連絡があったとしても、予約時間直前の連絡は、店としても対処のしようがないため、ほぼノーショーと同義となります。
2017年度に経済産業省の委託調査事業として行われた「サービス産業の高付加価値化に向けた外部環境整備等に関する有識者勉強会」は、「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」という報告書を発表しました。
このレポートによると、国内における飲食店のノーショーによる被害額は推計で年間2,000億円にものぼるとされています。
さらに、事前の連絡があるものの直前すぎて席が埋まらないようなケースも含めると、その被害総額は約1.6兆円に達するとの試算もあります。
これは飲食店の予約全体の約1%弱を占めているといわれており、100件の予約があれば1件は無断キャンセルが発生するという確率です。
「たかが1件」ではありますが、利益率の低い飲食業界において、原価と人件費がかかった状態での売上ゼロは、小さくない影響があるといえるでしょう。
無断キャンセルの増加と多岐にわたる被害
近年、ノーショーは増加しているといわれています。
かつては電話での予約が主流でしたが、現在ではグルメサイトや予約アプリなど、Webを通じた予約ツールが普及・多様化しています。
これにより24時間いつでも手軽にお店を予約できるようになりました。
この利便性は集客にとって大きなメリットですが、同時に「キャンセルの心理的ハードル」を著しく下げてしまっているという側面があります。
スマートフォンを数回タップするだけで予約が完了するという手軽さは、逆にいえば「とりあえず席だけ押さえておこう」という軽い気持ちでの予約(仮押さえ)を助長します。
友人との食事会のために、念のため複数の店舗を予約し、当日行く店以外は連絡もせずに放置するといったモラルの欠如も一部で見受けられます。
また、予約したこと自体をうっかり忘れてしまうというケースも、ツールが便利になりすぎた弊害の一つといえるでしょう。
無断キャンセルによる被害は、目に見える金銭的な被害だけにとどまりません。
もちろん、食材が無駄になる食品ロスは大きな問題ですし、そのために配置したホールのスタッフや厨房スタッフの人件費も回収できません。
また、予約のための席を確保しておかなければならないため、いつまでもほかのお客を案内できないという機会損失も無視できません。
キャンセルを防ぐための具体的な予防策
突然のキャンセルや無断キャンセルを防ぐためには、どのような対策が有効なのでしょうか。
前述のレポートでは、「予約の再確認(リコンファーム)の徹底」を対策の一つとしてあげています。
予約日の数日前に、電話やSMS(ショートメッセージ)、メールなどで予約内容の確認連絡を入れます。
現在は予約システムが自動でリマインドメールを送る機能も充実していますが、特に大人数の宴会や高単価のコース予約の場合は、直接電話を入れて入念に確認をしておくと効果的です。
「ご来店をお待ちしております」というメッセージを伝えることで、お客の「うっかり忘れ」を防ぐと共に、来店への責任感を思い出してもらう効果があります。
次に重要なのが、「お客がキャンセル連絡をしやすい仕組みの整備」です。
無断キャンセルの多くは「キャンセル連絡をするのが面倒」「怒られるのが怖い」という心理から発生します。
Web予約の確認メールにキャンセル用のURLを添付し、電話をしなくてもワンクリックでキャンセルができるようにしておけば、少なくとも「無断」で来ないという最悪の事態は防げます。
早めにキャンセルがわかれば、その席をSNSなどで告知し、新たなお客を募集することも可能になるからです。
さらに、「キャンセルポリシーやキャンセル料の目安を明示」することも重要です。
予約を受ける段階で、「前日キャンセルは50%、当日は100%のキャンセル料を頂戴します」といったルールを明確に伝え、同意を得るプロセスを組み込みましょう。
万が一の場合にキャンセル料を請求するための根拠になるだけでなく、お客に対して「予約は契約である」という意識を持ってもらうための抑止力として働きます。
被害額が大きくなりがちなコース料理や貸切予約、あるいは繁忙期の予約に関しては、「事前決済や預かり金(デポジット)の徴収などの導入」も検討するとよいでしょう。
近年では、予約時にクレジットカード情報を入力してもらい、無断キャンセルの場合にのみキャンセル料を引き落とす機能(与信確保)を持った予約システムも増えています。
導入のハードルは少し高いかもしれませんが、ノーショー対策としては強力な手段となります。
飲食店におけるキャンセル問題は、経営上、無視できない課題となっています。
まずは自店のキャンセルポリシーを見直し、予約確認のフローを再構築することから始めてみてはいかがでしょうか。
できるところから一歩ずつ見直すことで、キャンセルによる損失を減らすことができます。
※本記事の記載内容は、2026年1月現在の法令・情報等に基づいています。