地方自治体による企業誘致のための『優遇措置』を利用しよう
企業の成長を支援するために、多くの地方自治体は、法人税や固定資産税などの優遇税制、またはさまざまな補助金および助成金制度を積極的に打ち出しています。
こうした優遇措置は、単に企業を誘致するためだけではなく、地域経済の活性化や雇用の創出を目指す、地方自治体にとっての重要な施策の一つといえます。
その内容は自治体ごとに多岐にわたり、地方への進出を考えている企業は、該当地域の優遇措置を把握しておく必要があります。
地方進出を踏まえた企業の事業戦略を進めるうえでは欠かせない、地方自治体の優遇措置の全体像を解説します。
優遇税制を受けることで納める税金を減らす
地方自治体による企業誘致とは、自治体が企業に対し、特定の地域に事業所や工場、研究開発拠点などを新設・増設してもらうよう働きかける活動のことを指します。
企業がその地域で事業を始めることで、新たな雇用の創出や人口流入、税収の増加などが期待できるうえ、誘致された企業が地域に根ざした活発な経済活動を行うことで、関連産業にも波及効果が生まれ、地域全体の活性化につながります。
そのため、自治体は優遇税制や補助金・助成金制度のほかに、土地の紹介や地域住民との関係構築の支援など、さまざまな形で企業をバックアップします。
企業としても、地方自治体の誘致に応じることで、これら多様な優遇措置を受けられるのは、大きなメリットとなります。
自治体からのこうした支援は、企業側が地方で事業を立ち上げて安定的に運営していくうえで、欠かせないものだといえるでしょう。
地方自治体が提供する優遇措置は、大きく分けて「優遇税制」と「補助金・助成金」の二種類があります。
まず「優遇税制」は、企業が納める税金を減免する制度です。
代表的なものには、法人事業税や不動産取得税、固定資産税などに対する減免措置があります。
特定の地域に新設された事業所や工場について、一定期間、各種税金を免除するといった優遇税制は、多くの地方自治体で採用されています。
たとえば、福井県では「地方拠点強化税制」を設けており、県内における本社機能の拡充や移転をする場合に、法人税や地方税の優遇措置を受けることができますし、和歌山県では「和歌山県地方活力向上地域特定業務施設整備促進プロジェクト」に基づき、法人税の減税・税額控除、地方税の大幅軽減などを受けることが可能です。
補助金や助成金制度で新事業にチャレンジ
「補助金・助成金」は、企業が特定の条件を満たす場合に、事業に要する費用の一部を自治体が支援する制度です。
一例として、新設する事業所で地域住民を一定数以上雇用した場合に支給される「雇用奨励金」や、先端技術を活用した研究開発を行う企業への「研究開発補助金」などがあります。
これらの補助金は、企業の初期投資の負担を軽減し、新たな事業へのチャレンジを後押しします。
たとえば、青森県では「青森県産業立地促進費補助金」を設立し、県内に工場などを新増設する企業に対し、設備投資額の一部を補助する取り組みを行なっています。
ほかにも、IT産業やサービス業の誘致を重視する自治体では、オフィス賃料の一部を補助する制度や、高度な技術を持つ人材を雇用した場合に奨励金を支給する制度を提供している例もあります。
これは、都市部に比べて賃料や人件費の負担が大きいという企業の懸念を払拭し、地方での事業展開を後押しする狙いがあります。
さらに、近年では、再生可能エネルギー関連事業や、特定の地域資源を活用した事業を支援する優遇措置も増えています。
太陽光発電施設の設置費用を補助したり、地元の特産品を加工・販売する企業を支援したりする制度などは、企業の活動が地域の発展に貢献することを期待して設けられたものです。
地方自治体による企業誘致のための優遇措置は、企業の成長を力強く後押ししてくれる、非常に有益な制度です。
各自治体は独自の特色を活かし、さまざまな形で企業誘致に取り組んでいます。
これらの制度を積極的に活用することで、企業はコスト削減だけでなく、地域社会との新たな関係を築き、事業の可能性を広げることができます。
ただし、優遇措置の内容は自治体ごとに異なり、申請には多くの手続きや条件が付随します。
そのため、各制度の情報を正確に把握し、自社の事業に最適なものを選ぶことが重要になります。
まずは、その地域の優遇措置に詳しい専門家に相談してみることをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2025年10月現在の法令・情報等に基づいています。