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サブスク契約に潜む法務リスクとは? 見落としやすいポイント

25.10.07
ビジネス【企業法務】
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定額制で継続的に収益が見込めるサブスクリプション(サブスク)型ビジネスは、中小企業にも広がっています。
企業にとって安定収益を確保できるビジネスモデルである一方で、契約書や利用規約の不備、消費者保護法の理解不足など、提供者側がつい見落としがちな法務リスクも存在します。
たとえば、2022年6月施行の改正特定商取引法により、申込みの最終確認画面では『契約の申込みに関する要旨』(契約期間、料金、解約条件など)を明示することが義務化されました。
今回は、サブスク事業を提供する企業が気をつけるべき法的ポイントを解説します。

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契約書の不備がトラブルの原因に

サブスクリプション(サブスク)サービスとは、月額や年額などの定額料金を支払うことで、一定期間、商品やサービスを継続的に利用できる契約形態です。
提供内容は、物の販売やレンタル、サービスの利用、体験など多岐にわたります。

事業者側にとって、安定的かつ継続的な売上が見込める点が最大のメリットです。
従来の売り切りモデルと異なり、顧客との長期関係を構築でき、収益の予測が立てやすく、経営の安定化につながります。
また、新規顧客を獲得しやすいという利点もあります。
初回無料や低価格での試用期間を設けることで、消費者の心理的ハードルを下げられます。
さらに、顧客の利用情報や行動履歴を継続的に取得・活用できるため、サービス改善やマーケティング戦略の精度向上にもつながります。

顧客側のメリットとしては、安価で商品やサービスを利用できる点があげられます。
高額商品を一括購入する代わりに、月額料金で利用できるため初期費用を抑えられます。
また、いつでも解約できる柔軟性があることも魅力です。
物品のサブスクでは、保管場所に悩む必要がないという利点もあります。

しかし、サブスクサービスには複数の法規制が適用されます。
景品表示法では、商品やサービス内容の表示について規制があり、誇大広告や誤認を招く表示は禁止されています。
特定商取引法では、契約締結の勧誘時における表示義務や、申込み画面での詳細情報の明示が求められます。
資金決済法は、あらかじめ購入したポイントを利用して決済する場合のシステムについて適用され、消費者契約法では消費者の利益を守るため、契約条項に関する規制があります。
2020年施行の改正民法では、定型約款の変更には『合理性』が求められ、変更内容を事前に周知する必要があります。
特に、利用者に不利益となる変更については、原則として個別の同意が必要とされています。
加えて、消費者庁が公表したガイドラインに従った運用も必要です。

安定運営のための準備ポイント

サブスク事業では、利用者との長期関係ゆえに起こりやすいトラブルがあります。
最も多いのが、自動更新条項の不備や通知義務違反による「知らぬ間の契約延長」です。
利用者が更新タイミングを把握できず、不要な課金が続いてクレームが発生するケースが頻発しています。
また、解約条件が不明確なまま課金が継続し、消費者トラブルに発展する事例も少なくありません。

対個人の場合は特に注意が必要で、特定商取引法や消費者契約法による厳格な規制が適用されるため、契約条件が消費者に不利すぎると無効とされるリスクがあります。
これらのトラブルを防ぐため、取引条件を設定する際には注意が必要です。
まず、継続課金のルールを明確に定めることが重要です。
開始時期、更新タイミング、解約方法について、あいまいさのない明確な表現で契約書や利用規約に記載しましょう。
特に2022年6月施行の改正特定商取引法により、サブスク契約では申し込み最終確認画面に詳細な契約内容の表示が義務づけられました。

利用者がポイントを使用する場合の対応についても、事前にルールを決めておく必要があります。
ポイントの有効期限、使用条件、失効時の扱いなどを明確に定めることで、後のトラブルを防げます。

さらに、トラブル時に備えた体制整備も欠かせません。
FAQ(よくある質問)の充実、専用相談窓口の設置、返金対応のルールを事前に策定しておくことで、問題が発生した際の迅速な対応が可能になります。

サブスクモデルは、企業の利益を安定化させる一方で、利用者との関係が長期にわたるため、小さな説明不足が大きなトラブルに発展しやすい特性があります。
サービスの魅力を正しく伝えるだけでなく、契約や運用面からのリスク対策を講じておくことが、消費者から信頼されるビジネスの基盤づくりとなります。


※本記事の記載内容は、2025年10月現在の法令・情報等に基づいています。