参加強要はNG!? ハラスメントにならない忘年会や新年会の開き方
年末年始に開催される忘年会や新年会は、企業文化を形成するうえで重要なイベントの一つです。
しかし、その一方で、仕事の延長上にない飲み会への強制参加はハラスメントにあたるのではないかという見方も広がっています。
忘年会や新年会は、社員への感謝と慰労を目的に行うものですが、その対象となる社員から不満の声があがるのであれば、実施しないという選択肢もあるのかもしれません。
多くの会社にとって、毎年の恒例行事となっている忘年会や新年会について、考えてみたいと思います。
飲み会への強制参加がハラスメントになる?
会社が主導となって開かれる忘年会や新年会は、一年間の努力を労い、社員が気持ちをリフレッシュして次の仕事に臨めるようにするためのものです。
また、慰労の場であると同時に、社員間の親睦を深めてチームワークを強化するための場でもあります。
普段の業務ではなかなか話す機会がない部署のメンバーや上司、部下と交流することで、人間関係が円滑になり、コミュニケーションが活性化します。
しかし、こうした会社側の狙いが必ずしも成功するわけではありません。
社員によっては、強制的に参加させられる忘年会や新年会を、ハラスメントの一種ととらえる向きもあるようです。
現代の職場において、ハラスメントに対する意識は非常に高まっています。
忘年会や新年会への参加を強制することは、社員の自由な意思を尊重しない行為であり、状況によっては精神的な苦痛を与えるハラスメントとみなされる可能性があります。
では、具体的にどのような場合に、飲み会の参加強制がハラスメントと判断されるのでしょうか。
厚生労働省が定義する「パワーハラスメント(パワハラ)」の類型には「精神的な攻撃」や「人間関係からの切り離し」といった要素が含まれます。
たとえば、忘年会や新年会に「参加しないと今後の人事評価に響く」「チームの一員として認めない」といった発言や示唆があった場合は、明らかなパワハラとなります。
また、直接的な発言がなくても、参加しない社員だけが情報共有から外されたり、露骨に避けられたりするような雰囲気をつくり出すことも、パワハラとみなされるケースがあります。
さらに、一度、社員が断っているにもかかわらず、何度も参加を強要したり、しつこく誘ったりする行為も、精神的な負担を与えるため、パワハラに該当する可能性があります。
特に、上司と部下など明確な上下関係があるうえでの行為は、その立場を利用したハラスメントと判断されやすくなります。
「任意参加」が忘年会などの開催のポイント
会社側は、忘年会や新年会など、飲みの席でのハラスメントにも注意する必要があります。
人によっては、アルコールが入ることで、普段はしないような言動が出てしまうことも少なくありません。
最も典型的なのが飲酒の強要です。
無理にお酒を飲ませようとする行為は「アルコールハラスメント(アルハラ)」であり、パワハラの一種です。
当然、酒の席だからといって、部下や同僚を嘲笑したり、プライベートな話題を暴露したりする行為もパワハラです。
また、性的な言動や身体に触れる行為、プライベートな質問などは「セクシャルハラスメント(セクハラ)」に該当する可能性があります。
これらのハラスメントは、被害者の精神的な苦痛はもちろんのこと、優秀な人材の離職につながる可能性もあります。
ハラスメントのリスクを回避しつつ、社員が楽しめる忘年会や新年会を開催するためには、参加を強制しないことです。
飲み会への強制参加は、ハラスメントになる可能性があるばかりか、賃金の支払義務が発生する可能性もあります。
労働時間と判断された場合、企業は社員に対し、通常の賃金に加えて時間外手当を支払う義務が生じます。
特に、参加が事実上強制されている、業務に関する具体的な指示や役割が与えられている、欠席した場合に不利益が生じるなどの状況では、労働時間とみなされやすくなるので注意が必要です。
忘年会や新年会を開く際には、参加が「任意」であることを強調し、参加しないことによって不利益が生じないことを明確に伝えましょう。
また、参加・不参加の確認は、業務に支障がない範囲で、あくまで個人が選択しやすい方法で行う必要があります。
上司が部下に対し、執拗に参加を促すようなことをしてはいけません。
また、お酒が飲めない人でも参加しやすいように、「ノンアルコールドリンクの充実した店を選ぶ」「食事を中心に楽しめるメニュー構成にする」なども、工夫の一つです。
乾杯の際もアルコールを強要するような雰囲気は避け、ソフトドリンクでの乾杯も容認するなどの配慮をしましょう。
忘年会や新年会は、社員の慰労と親睦を深めるための貴重な機会ですが、状況によってはハラスメントの発生するリスクもあります。
社員一人ひとりの意思を尊重し、誰もが安心して楽しめる場を設けることが、ハラスメントを未然に防ぐことにつながります。
※本記事の記載内容は、2025年10月現在の法令・情報等に基づいています。