テントゥーワン税理士法人

相続で困らないために押さえておきたい借地権付き不動産の手続き

26.03.31
業種別【不動産業(相続)】
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親族から不動産を相続する際、その不動産が「借地権付き」である場合には、通常の不動産とは異なる特有の手続きや注意点があります。
借地権付き不動産とは、他人の土地を借りる権利(借地権)と、その土地上に建てられた建物が一体になった財産のことを指します。
建物だけでなく、土地を借りる権利も相続の対象となるため、地主との関係調整や地代の引継ぎ、将来的な譲渡時の承諾取得など、通常の不動産とは異なる対応が求められます。
今回は、借地権付き不動産を相続する際に知っておきたい基本ルールと実務上の注意点を解説します。

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借地権承継の法的性質と地主への対応

借地権付き不動産は、建物は借地人の所有である一方、土地は地主から借りている状態の不動産です。
相続が開始すると建物の所有権と共に借地権も相続財産として相続人に承継されます。

ここでは、契約の更新が可能な「普通借地権」を前提に解説します(定期借地権は別途取り扱いが異なります)。

実務上最も重要なのが、地主の承諾が必要かどうかという点です。
法定相続人が借地権を相続する場合、借地借家法により借地権は当然に承継されるため、地主の承諾や名義書換料は原則として不要です。
ただし、法定相続人以外の者が借地権を取得する特定遺贈の場合には、地主の承諾が必要となるため注意が必要です。
いずれの場合も、地代の支払義務は相続人に承継されます。
相続開始後は、速やかに地主に報告し、地代の金額や支払い方法などの条件を確認し、地主との良好な関係を築いておくことが大切です。

また、登記手続きも重要です。
2024年4月からは不動産の相続登記が義務化されており、相続開始を知った日から3年以内に登記を行わないと、過料の対象となる可能性があります。
借地上の建物の登記があれば、借地権を第三者に対抗することができるため、借地権を登記することもできますが、借地権自体が登記されていないケースも多く見られます。
借地権の登記がある場合には、建物の相続登記とあわせて借地権の名義変更登記が必要となるため、事前に登記簿を確認しておくと安心です。

さらに、将来的に借地権付き建物を第三者に売却・譲渡する場合には、原則として地主の承諾が必要となります。
この際、譲渡承諾料の支払いを求められるのが一般的で、金額の目安は借地権価格の5~10%程度とされています。
ただし、地域性や契約内容、地主との関係性によって金額や条件は大きく異なることがあるため、売却を検討する場合は、事前に地主と協議し、承諾の可否や条件を確認しておくことが重要です。

借地権の相続税評価と流動性の課題

借地権は相続財産として評価され、相続税の課税対象となります。
借地の評価額は「自用地評価額×借地権割合」によって算出され、自用地評価額は路線価方式または評価倍率方式により求められます。
借地権割合は国税庁が地域ごとに定めており、一般的には30~90%の範囲で設定されていますが、都市部など利便性の高い地域では、70%~90%と高めに設定されていることが多いです。
たとえば、自用地評価額が5,000万円で、借地権割合が70%の地域であれば、借地権の評価額は「5,000万円×70%=3,500万円」となります。

土地を所有する場合と比べて、借地権付き不動産は相続税評価額が圧縮されるため、相続税の負担が軽減されるというメリットがあります。
一方で、借地権付き不動産は市場での流通性が低いため、相続後に売却して納税資金に充てたい場合には注意が必要です。

売却には地主の承諾や名義変更手続きが必要で、一定の時間を要することもあり、現金化までに時間がかかる点がデメリットです。
相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内です。
限られた時間のなかで、適正な評価や手続きを進めるためには、必要に応じて、税理士や不動産の専門家と連携し、早期に戦略を立てるとよいでしょう。
それが、トラブルを回避し、スムーズな相続を実現するための近道となります。


※本記事の記載内容は、2026年3月現在の法令・情報等に基づいています。