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入札に参加できなくなる!?『指名停止措置』の基準を理解しておく

25.09.30
業種別【建設業】
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『指名停止措置』とは、建設業者が一定期間、公共工事の入札に参加できなくなるペナルティのことです。
官公庁や自治体といった公共工事の発注者ごとに実施され、指名停止期間などは国土交通省を含む関係機関で運用されている「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」という基準に基づきます。
建設業者であれば、指名停止措置を受けないためにも、要因となる違反行為や、指名停止期間などについて、把握しておかなければいけません。
建設業を営むうえで知っておきたい、指名停止措置の基本を解説します。

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指名停止措置と営業停止処分の違いとは?

日々、大小問わずさまざまな規模の建設業者が指名停止措置を受けています。
2025年4月には、インフラ工事の最大手と大手ゼネコンの主要子会社が、道路の舗装材偽装を巡る問題で、国土交通省から最長4カ月の指名停止措置を受けました。

指名停止措置とよく似た措置として「営業停止処分」がありますが、これは建設業法に基づく処分であり、建設業の営業自体を停止させるものです。
一方、指名停止措置は、あくまで特定の発注者による公共工事の入札に参加できなくなる措置で、民間の工事は受注することができます。
したがって、営業活動自体が完全に止まるわけではないものの、公共工事が経営の柱である会社にとっては、実質的に営業停止に等しい打撃となります。

また、指名停止措置は発注者である官公庁や自治体ごとに行われるため、たとえば、国土交通省の指名停止措置を受けた場合でも、地方自治体の指名競争入札には参加することができます。
しかし、指名停止措置には公表の義務があり、一つの発注者から指名停止措置を受けると、ほかの発注者からも同様の措置を受ける可能性があります。
特に、国交省と地方自治体との間でも情報は共有されており、広く波及するのが実情です。

指名停止措置の対象となる事由を把握する

指名停止措置の基準は、各発注者によって定められていますが、国土交通省などの各省庁が行う指名停止措置は、「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」に基づきます。
この要領では、指名停止措置の対象となる事由を具体的に定めており、大きく「事故等に基づく措置基準」と「贈賄及び不正行為等に基づく措置基準」に分けることができます。

「事故等に基づく措置基準」は、入札に必要な資料への虚偽記載や過失による粗雑工事、安全管理が不適切だったために起きた公衆損害事故および工事関係者事故などが該当します。
「贈賄及び不正行為等に基づく措置基準」は、発注者の役員や職員に対して行われた贈賄、業務に関する独占禁止法違反行為、入札を妨害するなどの公契約関係競売等妨害、入札者同士の談合、建設業法違反行為、不正または不誠実な行為などです。

これらの基準は、建設業者が公正かつ誠実に業務を遂行することを求め、違反した場合に厳格なペナルティを課すことで、公共工事の質と信頼性を保つために設けられています。
事業者は、不正行為や不誠実な行為、社会的信用を失墜させる行為などを行うと、指名停止措置を受ける可能性があることを理解しておきましょう。

ちなみに、前述の道路の舗装材偽装を巡る指名停止措置は、過失による粗雑工事と、不正または不誠実な行為が理由でした。

指名停止期間と情報が公開されるリスク

「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」では、指名停止の事由とそれに応じた停止期間が定められています。
たとえば、虚偽記載は当該認定をした日から1カ月以上6カ月以内、贈賄は逮捕または公訴を知った日から4カ月以上12カ月以内などとされています。

期間はあくまで目安であり、事案の軽重や悪質性、是正措置の有無などによって、最終的な期間が変動します。
特に、談合や贈賄、暴力団関係者との関わりは、公共工事の公正性と社会的な信用を根底から揺るがす行為として、重いペナルティが科せられることがあります。

また、指名停止措置は、単に一定期間入札に参加できなくなるだけでなく、その情報が公的に公表されることにも留意が必要です。
多くの発注者がWebサイトなどで「指名停止措置情報」として、事業者名、所在地、事由、停止期間などを掲載しています。
これにより、民間の工事は受注可能であっても、信用を失い、新たな取引先との契約が困難になったり、既存の取引先との関係が悪化したりする可能性があります。

指名停止措置を避けるためには、単に法律を守るだけでなく、会社全体でコンプライアンスを徹底し、社内全体に浸透させることが大切です。
あわせて、指名停止措置の基準を正しく理解し、常に情報をアップデートしていきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年10月現在の法令・情報等に基づいています。