過剰消費にうんざり!?『アンダーコンサンプション・コア』とは
「アンダーコンサンプション・コア」とは、過剰な消費を良しとするこれまでの価値観に疑問を抱き、本当に必要なものだけを厳選し、長く大切に使うことを目指す新しいライフスタイルです。
2024年頃から、アメリカの若者世代を中心に広まったこのライフスタイルは、SNSを中心に大きな共感を呼び、世界的に広まっていきました。
消費のあり方を見直す「アンダーコンサンプション・コア」の基礎と、その新しい価値観に寄り添うマーケティング戦略について解説します。
モノを長く大切に使うライフスタイル
「アンダーコンサンプション・コア」は、日本語で「過少消費コア」などと訳される通り、必要以上の消費を避けるライフスタイルを指します。
インターネットやSNSが普及した現代では、常に新しい商品やサービス、トレンド情報が供給され、消費者は本当に必要かどうかを考える間もなく、新しいものを買い続けるサイクルに巻き込まれてきました。
このサイクルに疑問を投げかけたのが、アンダーコンサンプション・コアの中心となるZ世代の若者たちです。
若者たちが消費を抑える主な理由は、単なる節約志向だけではなく、経済的な不確実性や環境問題への意識の高まりなどが根底にあります。
若者世代は、インフレや学費ローンといった経済的な負担を抱えているうえ、環境への負荷を減らすサステナブルな考え方が浸透しています。
過剰な消費文化は、こうした若者たちの価値観と相性が悪く、既存の消費文化への反発がアンダーコンサンプション・コアを生み出す土壌になりました。
この「たくさんモノを持つことが豊かさではない」という価値観はミニマリズムと共通する部分もあります。
ただし、ミニマリズムが「モノを極限まで減らすこと」に焦点を置くのに対し、アンダーコンサンプション・コアは「すでに持っているモノを最大限に活かし、長く使うこと」を重視します。
たとえば、穴の開いた靴下を捨てずに繕ったり、使い古したバッグを修理して使い続けたり、壊れた家電を直して使ったりといった行動が、アンダーコンサンプション・コアに基づくライフスタイルといえます。
過剰消費を煽る従来のマーケティング手法
これまでのマーケティングは、いかにして消費者の購買意欲を刺激し、新しいものを買ってもらうかということに重点を置いてきました。
「限定」「今だけ」「流行」といった言葉を使って消費者の焦りを煽り、衝動買いを促すマーケティング手法は、日本だけではなく、世界中で成功を収めてきました。
しかし、こうした従来のマーケティング手法は、「アンダーコンサンプション・コア」の中心となる若者世代に通用しないどころか、かえって企業への不信感を募らせてしまうかもしれません。
アンダーコンサンプション・コア世代ともいえる若い世代は、流行に流されてモノを買うことを無駄と感じており、過剰な消費を煽る姿勢を冷めた目で見ている傾向があります。
頻繁に新しい商品を購入させるマーケティング手法は、結果的に環境への負荷を増大させるうえ、大量生産、大量消費、大量廃棄のサイクルは環境意識の高い世代にとって嫌悪の対象になります。
また、モノを消費するだけの行動に、心の豊かさを見出せないという人も増えています。
新しいモノを手に入れたときの高揚感は一時的なものであり、その後の虚しさや、次々と新しいモノを買わなければならないというプレッシャーは、精神的な負担につながります。
長く使える商品と、価値を届ける視点が重要
アンダーコンサンプション・コア世代にアプローチするためには、「モノを売る」のではなく「価値を届ける」という考え方が重要になります。
この世代は、単なる商品スペックや価格だけではなく、その商品の背景にあるストーリーや、「長く使える」という本質的な価値を求めます。
たとえば、職人の手仕事やサステナブルな素材を使用しているといったストーリーは、この世代の「モノを大切にする」という価値観と強く結びつくでしょう。
商品の製造過程や、使用されている素材のこだわりを丁寧に伝えることも有効です。
また、アンダーコンサンプション・コア世代は、買ったモノを長く使うことに価値を置くため、商品の修理サービスやメンテナンスの充実は、単なるアフターサービスを超えた大きな価値の提供になります。
「壊れたら修理に出せる」という安心感を提供することで、消費者はより愛着を持って商品を使うことができますし、自社製品の修理パーツを販売したり、修理方法を動画で解説したりする取り組みも、この世代の共感を得ることができます。
消費者と共に「モノを育てる」パートナーとなることが、アンダーコンサンプション・コア世代に向けたマーケティング手法の一つといえるでしょう。
アンダーコンサンプション・コアは、一過性のトレンドではなく、今後の社会の消費行動を大きく変える可能性のあるムーブメントです。
これまでの「たくさん売る」という考え方から、「長く愛される商品の価値を届ける」という視点に切り替えていくことが、これからのマーケティングには必要かもしれません。
※本記事の記載内容は、2025年9月現在の法令・情報等に基づいています。