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未成年や認知症の家族が交通事故を起こした! 家族の責任は問われる?

25.09.23
ビジネス【法律豆知識】
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交通事故を起こしてしまった場合、通常は事故を起こした本人が損害賠償責任を負うことになります。
しかし、その加害者が12歳未満の未成年や、認知症の高齢者など、自分で責任を負う能力がない「責任無能力者」であった場合、家族である「監督義務者」が代わりに賠償責任を負うことがあります。
運転免許を持っていなくても、子どもが自転車に乗っていて事故を起こしてしまう可能性はゼロではありません。
責任無能力者の家族が交通事故を起こしてしまった場合の家族の責任について、解説します。

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責任無能力者の代わりに責任は監督義務者に

交通事故の加害者が損害賠償責任を負うためには、本人に責任能力がなければいけません。
多くの場合、一般的に12歳程度の年齢に達した子どもには責任能力があると判断されます。
一方で、この責任能力がないと判断された加害者のことを「責任無能力者」と呼びます。
具体的には、12歳未満の子どもや、重度の認知症患者、心神喪失者などが該当します。
そして、この責任無能力者を監督する法律上の義務を負う人のことを「監督義務者」と呼びます。
未成年の場合は主に親権者、認知症の家族の場合は配偶者や兄弟姉妹、あるいは後見人などが監督義務者となります。

責任無能力者が他人に損害を与えた場合、民法712条、713条により、原則として加害者本人は損害賠償責任を負いません。
その代わり、民法714条1項により、監督義務者が「その責任無能力者を監督する義務を怠らなかったこと」を証明できない限り、損害賠償責任を負うことになります。
つまり、監督義務をきちんと果たしていなかったと判断されると、賠償責任を負う可能性が高いということです。

認知症の家族が事故を起こしてしまったケースでは、「監督義務者が責任無能力者の行動を実際に監督し、事故を未然に防ぐことができたと判断される状況」であった場合に、監督義務者に賠償責任が課せられる傾向にあります。
逆に、その監督義務者が適切に監督していた場合や、監督しても被害が避けられなかった場合には、責任を免れる可能性があります。

また、法定の監督義務者に該当しない人でも、状況によっては損害賠償責任を負う場合があります。
それが「法定の監督義務者に準ずべき者」です。
たとえば、子どもが自転車で事故を起こした際には、親権者である両親が監督義務者になりますが、祖父母と同居していて、日頃から祖父母が子どもの世話や監督を行なっていた場合、祖父母にも監督義務者に準ずべき者としての責任が認められることがあります。

大切なのは、誰がその責任無能力者の行動を実質的に監督し、コントロールできたのかという点です。
たとえ法律上の監督義務者でなくても、実態として監督する立場にあったと判断されると、賠償責任を負うことになります。

賠償責任のリスクを減らすために必要なこと

監督義務者として賠償責任を負うリスクを減らすためには、日頃からの注意が重要です。
未成年の子どもに対しては、自転車の乗り方だけでなく、歩行者としてのルール、道路標識の意味など、具体的な状況を想定して、繰り返し教えるようにしましょう。
同時に、保護者が常に子どもの行動を把握し、危険な行動をしないよう注意を払うことも大切です。

また、家族に認知症の疑いがある場合は、絶対に運転をさせないようにしましょう。
道路交通法では、認知症と診断された人は運転免許の取り消しまたは停止の対象となっています。
「認知症で運転のおそれがあるにもかかわらず、運転を放置していた」と見なされると、家族が賠償責任を負う可能性が高くなるので注意してください。

さらに、認知症の家族が運転して交通事故を起こした場合、自動車損害賠償保障法(自賠法)により、車の所有者である家族が「運行供用者責任」を問われる可能性もあります。
所有者の許可なく運転していた場合でも、所有者が運行供用者責任を負う場合があるので気をつけなければいけません。

責任無能力者が加害者になった場合、その監督義務者が代わりに損害賠償責任を負う可能性は十分にあります。
しかし、日頃から監督義務を怠らず、適切な見守りや教育を行なっていたと証明できれば、責任を免れる可能性は高くなります。
大切なのは、事故が起こる前に免許の返納なども視野に入れながら、家族で交通安全について話し合うことです。
そして、万が一に備え、保険への加入も検討しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年9月現在の法令・情報等に基づいています。