社会保険労務士法人レイナアラ

借金に困ったら? 裁判所で話し合う『特定調停』という選択肢

26.10.27
ビジネス【法律豆知識】
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個人で借金を抱え、やりくりしても元本が一向に減らない状況に陥ると、精神的な負担が大きくなります。
そんな苦しい状況を打開する手段として「債務整理」があります。
一般的に弁護士などの専門家ではないと扱えないと思われがちな債務整理ですが、実は自分の手で借金問題を解決に導くことのできる法的手続があります。
それが、裁判所を介して債権者と話し合いを行う『特定調停』という制度です。
特に債務整理を検討している人に向けて、特定調停の仕組みや利点、注意点などについて解説します。

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個人ができる債務整理の方法を紹介

債務整理には、いくつか種類があります。
代表的なのが、裁判所に申し立て、免責が認められることで原則として借金の支払義務が免除される「自己破産」です。
また、住宅などの財産を手元に残しつつ、借金の一部を減額して原則3年かけて返済していく「個人再生」という方法もあります。
どちらも裁判所を通じた手続ですが、裁判所を通さずに債権者と直接交渉し、利息をカットしたり返済期間を延ばしたりする「任意整理」も広く利用されています。

これらの手続は、弁護士などの法律の専門家に相談しながら進めるのが一般的です。
一方、国が用意した公的な手続を利用して、自力で解決を図る道もあります。
それが『特定調停』です。

特定調停は、借金の返済に行き詰まるおそれのある人が、簡易裁判所に間に入ってもらい、債権者と返済方法について話し合う手続です。
裁判所の調停委員が申立人と債権者の間に立ち、双方の事情を聞きながら無理のない返済計画を立てる手助けをしてくれます。

特定調停は、調停委員が間に入ってくれるほか、自分で申立てる場合には申立てにかかる裁判所費用を低く抑えられることもメリットの一つです。
別途、申立手数料と、書類送付用の郵便切手代などが必要になります。

また、申立書の作成もむずかしくありません。
簡易裁判所の窓口には、申立書のひな型が用意されており、特別な法律知識がなくても、ひな型や記載例を参考に作成することができます。

さらに、任意整理と同じように、対象とする債権者を選ぶことができるのも利点です。
たとえば、住宅ローンや自動車ローン、あるいは保証人がついている借金は手続から外し、消費者金融やクレジットカードのキャッシングなど、利息の負担が重い借金のみを対象にして話し合いを進めることが可能です。
これにより、生活に直結する財産を守りつつ、返済の負担を軽減することができます。

借金の返済が滞った場合のリスクには要注意

ただし、特定調停の利用にあたっては、気をつけるべき点がいくつかあります。
まず、申立ての際に借金の状況を整理した関係権利者一覧表や、現在の収入と支出、財産の状況を証明する明細書などの書類を自分で準備しなければなりません。
また、手続中は簡易裁判所に足を運ぶ必要があります。
通常、調停が成立するまでに複数回、平日の日中に裁判所へ出向く必要があり、就労者にとっては日程の調整が負担になる可能性があります。
こうした手間や時間はデメリットといえるでしょう。

さらに、調停で合意した内容は「調停調書」という公的な文書にまとめられます。
調停調書には確定判決と同様の効力があるため、もし合意した通りに返済ができなくなってしまった場合、債権者はあらためて裁判を起こすことなく、給与や預貯金などの財産に対して強制執行を申立てることが可能になります。
特定調停では調停調書に基づいて強制執行を受ける可能性があるため、合意後に返済できなくなった場合のリスクを理解しておく必要があります。

加えて、調停委員が間に入るとはいえ、あくまで話し合いであるため、債権者のなかには調停に協力的でない企業や個人も存在します。
非協力的な相手の場合、交渉が難航し、結果的に調停が不成立に終わる可能性があることも理解しておきましょう。

特定調停を利用する際の流れ

特定調停を利用するには、原則として、相手方である債権者の住所地を管轄する簡易裁判所の窓口へ行き、特定調停の手続について相談します。
そこで申立書のひな型や必要書類の説明を受け、準備を進めます。
自身の借入状況や家計の収支を正確に把握し、関係権利者一覧表や財産状況の明細書を作成し、書類が整ったら裁判所に提出し、申立てを行います。
申立てが受理されると、裁判所から債権者に対して通知が送られ、特定調停の手続が進められます。

その後、裁判所から指定された期日に出頭し、調停委員との面接が行われます。
ここで、借金が膨らんでしまった経緯や現在の生活状況、どのくらいなら毎月返済できるかといった事情を詳しく伝えると、調停委員が状況を把握し、いよいよ債権者との交渉が始まります。
債権者が合意に至れば調停が成立し、合意内容が記された調停調書が作成されます。
債権者との合意に至らない場合でも、裁判所が適切だと判断すれば「調停に代わる決定」という形で返済条件を定めることもあります。
調停成立後は、調書に記載された新しい計画に従って、着実に返済を続けていくことになります。

特定調停は費用面でのメリットが大きい反面、返済できなくなった際に財産を差し押さえられるかもしれないリスクや、債権者が利息カットに応じないケースなどがあります。
少しでも交渉に不安がある場合や、自力での手続がむずかしい場合は、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。


※本記事の記載内容は、2026年10月現在の法令・情報等に基づいています。