社会保険労務士法人レイナアラ

社員が裁判員に選ばれた場合に必要な対応とは?

26.08.25
ビジネス【企業法務】
dummy

日本の裁判員制度は2009年5月にスタートし、2026年で施行から17年を迎え、来年には、制度が施行された2009年に生まれた人が対象年齢の18歳に達します。
裁判員は一般の国民から無作為に選ばれます。
社員が裁判員に選ばれた場合、裁判員の仕事に必要な休みを与えることは企業の義務ですが、有給か無給かは各企業の判断に委ねられています。
企業側が理解しておくべき裁判員制度の基礎や、社内で必要な対応について解説します。

dummy

裁判員制度の概要と裁判員選任のプロセス

裁判員制度とは、2009年5月21日に導入された日本の司法制度です。
選任された裁判員は地方裁判所で審理される刑事事件について、裁判官と共に審理に参加することになります。
制度の目的は、一般市民の感覚や常識を裁判の内容に反映させることです。
選ばれた裁判員は、刑事事件の被告人が有罪かどうかを判断します。
有罪の場合には、どのような刑にするのかを裁判官と議論して決めます。
裁判員裁判の対象となるのは、殺人罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、覚醒剤取締法違反(営利目的の密輸入)、危険運転致死傷罪など、一定の重大な犯罪に限られています。

裁判に携わる裁判員は、国民のなかから無作為に選ばれます。
かつては20歳以上で選挙権のある人が対象でしたが、公職選挙法の改正に伴い、2023年以降は18歳および19歳の人も選ばれるようになりました。
若年層の参加により、より幅広い世代の意見が反映されるようになっています。

選任のプロセスとしては、まず市区町村の選挙管理委員会が選挙権のある人のなかから翌年の裁判員候補者となる人を、毎年くじで選びます。
その後、地方裁判所ごとに「裁判員候補者名簿」が作成されます。
この名簿に載った人には、毎年秋頃にその旨を知らせる通知が送られます。
また、この通知と共に調査票も送付され、辞退の事由があるかどうかなどが事前に確認されます。

このように、裁判員は国民のなかからくじで選ばれるため、自社の社員が突然裁判員に選ばれる可能性は十分にあります。
もし社員が裁判員に選ばれた場合、会社はどのように対応すればよいのでしょうか。

労働基準法第7条では、裁判員の仕事は「公の職務の執行」に該当し、労働者がそのために必要な時間を請求できるとされています。
この休暇のことを、一般的に「裁判員休暇」と呼びます。
会社は、「現在は繁忙期だから休まれては困る」「他の人に代わってもらってほしい」といった業務上の都合を理由にして、裁判員休暇の取得を拒否することはできません。

会社が休暇の取得を認めない場合は、労働基準法違反となり、指導や罰則の対象となる可能性もあります。

裁判員休暇に必要な日数と取り決め

裁判員の仕事は、法廷での審理に出席するだけでなく、その後の評議や評決を行い、最終的な判決宣告にも出席する必要があります。
そのため、裁判員が裁判手続に参加する日数は、平均して7日前後とされています。
事件の内容が複雑であったり、証拠が多かったりする場合は、さらに日数がかかることもあります。

ただし、最初から7日間の連続した休みが確定しているわけではありません。
まずは「裁判員候補者」として裁判所に呼び出され、特定の事件の選任手続の日に裁判所へ出向くことになります。
そこで裁判官との面接などを受け、結果として裁判員に選ばれなかった場合は、その後の拘束はありません。
そのため、選ばれなかった場合に必要な休暇は、選任手続の1日のみで終わります。

会社としては、社員から裁判員候補者として呼出状が届いたとの申告があった時点で、まずは選任手続のための休みを1日確保します。
そして、もし裁判員に選ばれた場合にはさらに数日間の休みが必要になるという、流動的なスケジュールを前提に、事前の業務調整を行う必要があります。

また、社員が裁判員などに選ばれた場合、休暇を与えることは法律上の義務ですが、その休暇を「有給」とするか「無給」とするかについては、各企業の判断に委ねられています。
そのため、無給扱いとしても法律上は問題ありません。

しかし、裁判員制度は幅広い国民の参加によって成り立つ制度です。
社員が給与の減少といった経済的な不安を感じることなく、安心して裁判員の職務に専念できるよう、国は企業に対して配慮を求めています。
具体的には、通常の年次有給休暇とは別に、裁判員休暇を「特別な有給休暇」として設けるなどの対応が推奨されています。
企業の社会的責任(CSR)や社員福祉の観点から、近年は「特別有給休暇制度」を導入する企業もあります。

そして、裁判員法第100条では、労働者が裁判員や裁判員候補者としての職務を行うために休暇を取得したことを理由として、解雇、降格、減給などの不利益な取り扱いをすることを明確に禁止しています。
人事評価において不利益に扱うことも許されません。

裁判員制度は国の重要な司法制度であり、社会全体で支えていく仕組みです。
社員が裁判員に選ばれた際には、企業としてもできるだけ有給休暇とするなど、積極的な支援体制を整え、社員が社会的な役割を果たせるよう後押ししていきましょう。


※本記事の記載内容は、2026年8月現在の法令・情報等に基づいています。