社会保険労務士法人レイナアラ

職場の『ハラスメント』はなぜ起きる? 傾向から考える防止策

26.08.25
ビジネス【人的資源】
dummy

多くの企業は研修の実施や相談窓口の設置といった対策を講じていますが、それでもハラスメントは後を絶ちません。
なぜなら、ハラスメントは単なる個人の性格やモラルの問題にとどまらず、職場のコミュニケーション不足や、組織の構造的なひずみによって生じるケースが多いからです。
ハラスメントのない職場にするためには、「なぜその行為が起きてしまうのか」という根底にある要因を理解し、職場環境を見直すことが重要です。
厚生労働省の実態調査を踏まえながら、ハラスメントを防ぐ本質的なアプローチについて考えていきます。

dummy

ハラスメント相談件数は依然として横ばい

2022年4月1日には改正労働施策総合推進法が中小企業にも適用され、すべての事業主にパワーハラスメントの防止措置が義務づけられました。
しかし、厚生労働省の調査によると、多くのハラスメントについて、過去3年間の相談件数が「変わらない」と回答した企業の割合が最も高くなっています。

厚生労働省の「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、過去3年間にハラスメントの相談があったと回答した企業の割合は、パワハラが64.2%、セクハラが39.5%、顧客等からの著しい迷惑行為であるカスハラが27.9%、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントが10.2%、介護休業等ハラスメントが3.9%でした。
このうち、セクハラ以外のハラスメントでは、過去3年間の相談件数が「変わらない」と回答した企業が最多を占めています。

この結果は、法律に対応した仕組みを整えるだけではなく、その仕組みを職場で実効的に機能させることが重要であることを示しています。
企業にとってハラスメント対策は、引き続き、優先的に取り組むべき課題です。

ハラスメントを放置することは、被害を受けた従業員に深刻な影響を及ぼすだけでなく、従業員の士気や労働意欲を著しく低下させることにもなります。
結果として、職場全体の生産性が落ち込むことで業績悪化につながり、さらには貴重な人材の流出や、社会的信用の失墜といった企業価値の毀損をも招きかねません。
だからこそ、発生のメカニズムを理解し、より実効性のある対策を講じることが重要です。

ハラスメントの要因をどう取り除くのか

ハラスメントを引き起こす主な要因の一つに、職場内のコミュニケーション不足があります。
日頃から上司と部下、あるいは同僚間で率直に意見を言い合える関係性が築けていないと、業務上の小さな認識のズレが放置され、次第に大きな不信感や摩擦へと発展します。
そして、この摩擦が職場の不適切なパワーバランスと結びつくと、ハラスメントという形で表面化することがあります。

職場の人間関係がうまく機能していない、コミュニケーションが取れていない理由としては、職場の心理的安全性が低いことが考えられます。
自分の意見を言えば否定されるかもしれない、失敗すれば周囲の人の前で叱責されるかもしれないという不安が蔓延している職場では、従業員は次第に萎縮してしまい、自発的な行動や建設的な議論ができなくなります。

このような環境では、力を持つ者が一方的に自分のやり方や価値観を押し付けやすくなり、結果として権力の乱用が引き起こされやすくなります。
権力の乱用はパワハラにつながるおそれがあり、企業としても見過ごすことができません。

しかし、権力の乱用を防ぎ、職場をまとめるはずの管理職が公正な姿勢で部下を支えるリーダーシップを発揮できていない場合、ハラスメントが起きやすい状況をつくり出してしまうおそれがあります。
たとえば、特定の部下だけを優遇したり、部下の悩みやキャリアに対する思いに耳を傾けずに目の前の結果だけを求めたりする管理職のもとでは、職場の雰囲気が悪化するかもしれません。
リーダー自身に相手を傷つける悪意がなくとも、熱心な指導の延長だと思い込み、感情的に怒りをぶつけてしまうこともあります。

ハラスメントの問題は、加害者個人の性格やモラルの欠如として片付けられがちですが、実際には個人の問題と組織の問題が複雑に絡み合っています。
個人の感情コントロールの未熟さや他者への配慮の欠如が直接的な引き金になることはありますが、その不適切な行為を周囲が黙認し、事態をエスカレートさせてしまうのは組織の不備にほかなりません。

企業としては、就業規則の規定や相談窓口の設置といったハラスメントを防止するための仕組みづくりを進めつつ、同時にハラスメントを生み出す要因そのものを取り除くための施策も考える必要があります。

たとえば、管理職にはハラスメントの定義を教えるだけでなく、部下の話を引き出す傾聴スキルや、自分のなかにある無意識の偏見に気づくための研修を行うことも有効です。
また、定期的な対話の機会を設けるのも、コミュニケーション改善に役立ちます。
まずは、簡単に着手できる取り組みとして、上司と部下が1対1で行うミーティングの機会を増やしてみてはいかがでしょう。


※本記事の記載内容は、2026年8月現在の法令・情報等に基づいています。