社会保険労務士法人レイナアラ

不正会計とみなされる『循環取引』の発生を防ぐには

26.06.23
ビジネス【企業法務】
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「循環取引」は複数の企業が結託して売上を水増しする「架空の取引」を指します。
2026年3月には、国内大手通信会社の子会社が循環取引による巨額の不正会計を行なっていたことが報じられました。
企業にとって、売上の向上は至上命題ですが、一線を越えた循環取引は、金融商品取引法違反や詐欺罪といった重い刑事罰を招くだけでなく、築き上げた信頼を失うことにもつながります。
では、なぜこのようなリスクがあるにもかかわらず、循環取引は行われてしまうのでしょうか。
そのメカニズムとさまざまなリスク、自社を守るための防止策などを解説します。

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循環取引は他社と共謀する典型的な不正会計

循環取引とは、平たくいえば、「企業間で特定の商品の売買を繰り返し、実態のない売上を計上する」という不正行為です。
複数の企業が事前に口裏を合わせ、商品の転売やサービスの提供を繰り返すことで、あたかもそこに実態のある取引が存在するかのように見せかけます。

たとえば、A社が、実際には移動させない商品をB社に100万円で売ります。
次にB社が、その商品をC社に105万円で転売します。
さらにC社が、今度は最初のA社に対して110万円で売り戻します。
このように、最初に出発した商品が複数の企業を経由して、最終的には元の企業に戻ってくる様子が円を描くようであるため、「循環取引」と呼ばれています。

このプロセスにおいて、帳簿上では各社にしっかりとした「売上」と「利益」が計上されます。
上記の例では、A社、B社、C社それぞれに売上が立ちます。
しかし、現実には商品が移動していないことも多く、ただ書類やデータ上だけで数字が膨らんでいるに過ぎません。
これは典型的な不正会計であり、他社との共謀はもちろん、同じグループ会社間や、ときには個人・部門単位で行われることもあります。

循環取引に手を染めてしまう理由とは

なぜ、これほどまでにリスクの高い行為が行われるのでしょうか。

その動機の一つに、「売上目標の達成」があります。
特に決算期末が近づき、ノルマが達成できていない、目標数値に届かないといった状況下で、取引先や仕入れ先と結託して数字をつくってしまうということがあります。

近年、発覚した大手通信会社の子会社による事件では、架空の循環取引によって、実態のない巨額の売上が計上されていたことが明らかになりました。
巨額の不正が行われた背景には、組織全体が「数字を出すこと」に固執し、グループ内統制の甘さがあった可能性も否定できません。

また、損失を隠すために循環取引が行われるケースも少なくありません。
売上高や成長率は企業の『通知表』のようなものであり、株式を公開している企業であれば株価に直結します。
業績がよく見えれば、銀行からの融資も受けやすくなります。

さらに、資金繰りに苦しんでいる企業にとっては、譲り受けた売掛債権を利用して、短期間のうちに現金を手に入れる「運転資金確保」の手段として悪用されることもあります。

刑事罰だけではない循環取引のリスク

循環取引が発覚すると、非常に重いペナルティが科せられます。
まず、上場企業などが虚偽の有価証券報告書を提出した場合には、金融商品取引法違反に問われます。
これは投資家を騙す行為であり、市場の秩序を乱す重大な犯罪です。

さらに、会社に損害を与えたとみなされれば「特別背任罪」が適用される可能性があります。
また、実態のない取引を根拠に銀行から融資を引き出したのであれば「詐欺罪」として立件されることもあります。
これらの罪に問われれば、関与した個人には懲役や罰金が科せられるだけでなく、会社としても巨額の課徴金を支払わなければなりません。

また、刑事罰だけではなく、一度でも「不正会計を行う会社」というレッテルを貼られてしまえば、築き上げた信頼が崩れてしまうというリスクもあります。
取引先は離れ、銀行の融資は止まり、優秀な人材も去っていく可能性があります。
最悪のケースとして、倒産に追い込まれることも珍しくありません。

このような事態を防ぐためには、社内で循環取引を防ぐための仕組みが必要です。
たとえば、一人の担当者が商品の仕入れと販売の両方の権限を持っていると、一人で循環の仕組みをつくることが容易になってしまいます。
発注、納品確認、支払、請求といった各工程の担当者を分けることで、相互にチェックが働く仕組み(内部牽制)を構築することができます。

また、現場に任せきりにせず、抜き打ちの監査を行うことも重要です。
特に期末近くの不自然な大量発注や、特定の企業間での頻繁な売買、さらには売掛金の回収が滞っている取引などがないか、ランダムに調査を行うと効果的です。
外部の専門家による監査を定期的に実施することも、社内に対する強い抑止力となります。

その他、弁護士などの専門家を交えたリーガルチェックも効果的です。
業務のフローが法的に健全なのか、不正が入り込む余地がないかを確認し、必要であればコンプライアンス研修などを徹底させることが循環取引を防ぐためのポイントとなります。


※本記事の記載内容は、2026年6月現在の法令・情報等に基づいています。