社会保険労務士法人レイナアラ

就業規則に『服務規律』を設ける際のポイントと注意点

26.05.26
ビジネス【労働法】
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会社という組織において、円滑に業務を遂行し社員が安心して働くためには、共通の「行動基準」が必要です。
その基準となるのが、「服務規律」です。
服務規律とは、組織の秩序を守るために必要なマナーやルールのことです。
法律上、服務規律の作成自体は義務ではないものの、ルールがない状態では、ささいな誤解が大きなトラブルになったり、職場の風紀が乱れたりするリスクがあります。
服務規律を設けることは、社員のコンプライアンス意識を高め、健全な組織文化を育てる第一歩といえます。
今回は、服務規律を作成する際のポイントを解説します。

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服務規律を設ける重要性と具体的な項目

服務規律は、法律で定められた労働時間や賃金といった「条件」とは異なり、「社員がどう振る舞うべきか」という「規範」に焦点を当てたものです。
規範を明文化することで、会社は組織としての秩序を維持し、トラブルを未然に防ぐことができるようになります。

また、社員にとっても「何をすれば問題になるのか」という基準が明確になるため、心理的な安心感につながります。
コンプライアンスが重視される現代において、社員の不適切な言動が企業のブランド価値を一瞬で失墜させることも少なくありません。
服務規律を通じて企業の姿勢を浸透させることは、リスク管理の観点からも効果的といえます。

服務規律に記載する内容は多岐にわたりますが、たとえば、遅刻、早退、欠勤に関するルールを定めた「勤怠」、勤務時間中の私的な行動の禁止や施設内での物品の取り扱いなどについて定めた「勤務態度」は、多くの企業の服務規律に含まれている項目です。

また、「情報の取り扱い」に関する規律も、現代のビジネス環境には欠かせない項目の一つです。
顧客情報や機密情報の漏えいを防ぐためのルール、業務内外でのPCやスマートフォン、SNS利用に関するルールなどは、必ず盛り込んでおきたい要素といえるでしょう。

さらに、職場環境の健全性を保つために、法律で義務づけられた防止措置の一環として、「ハラスメントの禁止」も必要な項目です。
パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントだけでなく、最近では妊娠・出産・育児休業などに関する嫌がらせの禁止なども明記する必要があります。

ほかにも、本業に支障が出ないようにするために必要な「副業・兼業」、接客業などでは特に重要な「身だしなみ」なども入れておきたい項目です。

このように、単に「真面目に働くこと」と抽象的に書くのではなく、時代の変化に合わせて具体的に「何が許されないのか」を明確に書き出すことが、実効性のある服務規律をつくるポイントです。

就業規則への組み込みと法的な手続き

服務規律は就業規則のなかの一つの章や項目として組み込まれ、定められていることが一般的です。
なお、服務規律を就業規則に含めず、「服務規程」などとして別の書類にまとめても問題はありません。
すでに就業規則がある会社が新たに服務規律を追加したり、内容を更新したりする場合は、就業規則の変更手続きを踏む必要があります。

まず、労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は労働者の過半数代表者)から意見を聴取し、意見書を作成します。
その後、変更後の就業規則にその意見書を添えて、管轄の労働基準監督署へ届け出ることが法律で定められています。

この手続きは、常時10人以上の労働者を使用する事業場において義務づけられていますが、10人未満の会社であっても、ルールを明確にしておくことはトラブル回避のために非常に有効です。
組織の規模に関わらず、公式な手順を経てルールを形にすることで、その規律に納得性と正当性を持たせやすくなります。

また、服務規律を定める際に、最も注意しなければならないのが「不利益変更」の問題です。
新しい規律を設けることで、これまでの労働環境や慣習、あるいは規律が社員にとって一方的に悪くなる場合、合理的な理由が必要になります。
重大な変更を行う際は、十分な説明を行い、個別の同意を得るなどの丁寧なプロセスが欠かせません。

さらに法律上、就業規則は社員がいつでも確認できる状態にしておく「周知義務」があります。
そのため、服務規律を就業規則のなかに組み込んでいる場合は、社内ネットワークでの公開や、休憩室への備え付けなど、誰もがアクセスできる環境を整えておきましょう。

ほかにも、服務規律違反に対する「懲戒処分」についても慎重な判断が求められます。
規律に違反したからといって、いきなり重い処分を下すと「懲戒権の濫用」とみなされ、法的に無効になるおそれがあります。
服務規律はあくまで社員の成長と組織の調和を目的としたものであるという視点を忘れないようにしましょう。

明確なルールは自由を縛るものではなく、社員が迷いなく働くための基準となります。
もし、就業規則に服務規律の章を定めていないのであれば、社内の安定を図るためのポジティブな取り組みとして、整備を進めてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2026年5月現在の法令・情報等に基づいています。