社会保険労務士法人レイナアラ

短時間労働者の労働時間延長と社会保険加入促進の取り組みを支援

25.11.11
ビジネス【助成金】
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近年、短時間労働者が「年収の壁」(106万円・130万円)を意識して労働時間を制限する傾向が強まり、企業は人材確保に苦慮しています。
こうした状況を打開するため、令和7年7月1日より「キャリアアップ助成金・短時間労働者労働時間延長支援コース」が新設されました。
本制度は、短時間労働者の労働時間延長と社会保険加入を促進し、企業の人材定着と従業員の処遇改善を両立させることを目的とした、企業と従業員の双方にメリットをもたらす助成金です。

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短時間労働者労働時間延長支援コース

「短時間労働者労働時間延長支援コース」は、キャリアアップ助成金の新設コースであり、パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者に対して、労働時間を延長し、社会保険に加入させる取り組みを行なった事業主に対して助成金を支給する制度です。
従来の「社会保険適用時処遇改善コース」の労働時間延長メニューを見直し、より手厚い支援を行うために創設されました。

【支給対象事業主】
以下の要件を満たす事業主が対象となります。
(1)新たに社会保険の被保険者とした対象労働者を、各支給対象期の期間以上継続して雇用し、当該労働者に対して同支給対象期分の賃金を支給した事業主
(2)新たに社会保険の被保険者とした対象労働者について、基本給および定額で支給されている諸手当を合理的な理由なく減額していない事業主
(3)新たに社会保険の被保険者とした対象労働者について、社会保険の被保険者要件を満たすこととなった日以降のすべての期間、雇用保険および社会保険の被保険者として適用させている事業主
(4)新たに社会保険の被保険者とした対象労働者について、週所定労働時間および社会保険加入状況を明確にした雇用契約書等を作成および交付している事業主
(5)社会保険適用時処遇改善コースの併用メニュー(3期目)または労働時間延長メニューの対象労働者に限り、短時間労働者労働時間延長支援コースへ切り替えての申請を可能とするが、この切替えを行う場合は、当該対象労働者に係る併用メニュー(3期目)または労働時間延長メニューの支給申請が提出されていない事業主
(6)雇用する有期雇用労働者等について、週所定労働時間を5時間以上延長または2時間以上5時間未満延長するとともに基本給を増額した事業主
(7)社会保険の適用拡大、基本給の増額または労働時間の延長等によって、対象労働者が新たに社会保険の被保険者要件を満たし、当該者を新たに社会保険の被保険者とする場合であって、適用日の1カ月前の日から起算して3カ月が経過する日の前日までの間に、(6)の措置を講じた事業主、または(6)の措置を講じ、それによって、新たに社会保険の被保険者としての要件を満たした対象労働者を、その被保険者とした事業主
(8)(6)の取り組み後、第2期支給対象期の開始日までに、対象労働者に対して、次のaからcまでのいずれかの措置を講じた事業者
a 週所定労働時間を2時間以上延長する
b 基本給を5%以上増額する
c 昇給、賞与もしくは退職金制度のいずれかの制度を新たに適用させる

【支給対象労働者】
以下の要件を満たす労働者が対象となります。
(1)週所定労働時間を延長等した日または新たに社会保険の被保険者とした日のいずれか早い方の日の前日から起算して6カ月前の日から継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等
ただし、複数年かけて週所定労働時間の延長等を行う場合は、週所定労働時間の延長等をした最初の日の前日から起算して6カ月前の日から継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等
(2)新たに社会保険の適用を受ける日の前日から起算して1カ月前の日から3カ月が経過するまでの間に、週所定労働時間の5時間以上の延長、または2時間以上5時間未満の延長および基本給の増額が講じられ、新たに社会保険の被保険者要件を満たすこととなった労働者
(3)社会保険の適用日の前日から起算して過去6カ月間、社会保険の適用要件を満たしていなかった者であって、かつ支給対象事業主の事業所において過去2年以内に社会保険に加入していなかった者
(4)週所定労働時間の延長等を行なった事業所の事業主、または取締役の3親等以内の親族以外の者
(5)支給申請日において離職していない者

【支給額】
1年目の支給額(一人当たり)
小規模企業:50万円
中小企業:40万円
大企業:30万円
要件
・週の労働時間を5時間以上延長
・週の労働時間を4時間以上5時間未満延長させ、基本給を5%以上増額
・週の労働時間を3時間以上4時間未満延長させ、基本給を10%以上増額
・週の労働時間を2時間以上3時間未満延長させ、基本給を15%以上増額

2年目の支給額(一人当たり)
小規模企業:25万円
中小企業:20万円
大企業:15万円
要件
労働時間をさらに2時間延長、または、基本給をさらに5%以上増額または昇給・賞与もしくは退職金制度の適用

【注意点】
対象となる労働者は、社会保険の加入日の6カ月前の日以前から継続して雇用され、社会保険の加入要件を満たさない条件で就業した者です。

【おわりに】
短時間労働者の労働時間延長と社会保険加入を支援する本コースは、企業の人材確保と従業員の安定した働き方の両立を図る、非常に有効な制度です。
年収の壁による働き控えを防ぎ、職場の定着率向上や処遇改善にもつながるこの助成金は、今後の人材戦略において重要な役割を果たすでしょう。
企業と従業員の双方にとってメリットのあるこの制度を、ぜひご活用ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html


※本記事の記載内容は、2025年10月31日現在の法令・情報等に基づいています。