社会保険労務士法人レイナアラ

『サイレントお祈り』はNG!? 応募者への誠意ある対応とは?

25.05.13
ビジネス【人的資源】
dummy

近年、採用活動の場において、『サイレントお祈り』という言葉を耳にする機会が増えました。
サイレントお祈りとは、応募書類選考や面接後に、不採用者に対して企業側から連絡をしないことを指す俗語です。
採用活動の効率化などのために行われるサイレントお祈りですが、応募者に対して非常に失礼な行為であり、企業のイメージダウンにもつながりかねません。
サイレントお祈りの問題点などを含め、応募者への適切な対応について考えます。

dummy

サイレントお祈りは企業イメージの低下に

応募書類選考や面接の結果、不採用となった応募者に対して企業から送られる不採用通知メールのことを「お祈りメール」と呼びます。
メールの文末に「今後のご活躍をお祈り申し上げます」といった言葉が添えられることが多いため、いつからか求職者の間でこのように呼ばれるようになりました。

このお祈りメールから派生して、不採用者に対して企業側から連絡をしない「サイレントお祈り」という言葉も生まれました。
かつては、不採用者一人ひとりに不採用通知を送ることが一般的でしたが、近年では応募者数の増加や採用活動の効率化などを背景に、サイレントお祈りを選択する企業も出てきています。

近年、インターネットやスマートフォンなどの普及により、求職者は容易に多くの企業に応募できるようになりました。
そのため、特に人気の企業は大勢の応募者に対応する必要に迫られます。
さらに、採用活動にかかる時間やコストの削減を目的に、採用活動全体の効率化も考えなければいけません。

確かに、不採用者への連絡を省略することで、採用活動における負担を軽減することができます。
しかし、サイレントお祈りを行なっている企業に応募した人は、いつまでも合否の結果を知ることができず、連絡を待ち続けることになります。
就職活動や転職活動において、合否がわからなければ次の行動にも移れません。
したがって、サイレントお祈りは求職者にとって非常に不安な状況を生み出し、企業に対する不信感を抱かせる原因となります。

企業にとって、サイレントお祈りはデメリットのほうが多いといえます。
応募者に対する配慮が欠けていると受け取られ、企業イメージは悪化していきますし、SNSや口コミサイトでネガティブな評価が広がると、採用ブランディングにも悪影響を及ぼします。

近年はSNSなどで企業の採用活動に関する情報が拡散しやすくなっています。
サイレントお祈りを続けていると「応募したくない企業」として敬遠される可能性があり、人が集まらなくなる可能性があります。
優秀な人材ほど選考プロセスが丁寧な企業を選ぶため、結果的に採用の質が下がるリスクがあるでしょう。

応募者に対する誠意ある対応とは?

採用活動においては、まずできるだけ早く応募者に結果を知らせて、企業イメージを損なわないようにすることが重要です。
サイレントお祈りは避けるべき行為であり、合否にかかわらず、選考結果は必ず通知しましょう。
通知方法はメール、電話、郵送など、応募者が希望する方法でかまいません。
可能であれば、差し支えない範囲で不採用の理由に触れることも有効です。
応募者は不採用理由を知ることで、今後の就職・転職活動に役立てることができます。

採用活動の効率化を図るのであれば、テンプレートやフォーマットなどを活用して、手間をかけずに返信を行う仕組みを整えるのも方法の一つです。
企業側の負担を減らしつつ、応募者との良好な関係を維持する工夫を考えていくことが大切です。

企業によっては、応募者に対して誠意ある対応を行い、企業イメージを高めているケースもあります。
食品大手のカゴメ株式会社は、新卒採用活動において、エントリーシートや履歴書を提出したすべての学生に対し、自社製品のセットを贈る取り組みを15年以上前から続けています。
この取り組みはニュースや各メディアにも取り上げられ、話題になりました。

同社のような施策はむずかしくても、たとえば、採用活動の進捗状況や選考基準などを積極的に情報発信することで、応募者の不安を解消し、企業への信頼感を高めることはできます。
また、不採用の場合でも、丁寧なフィードバックを行うことで、企業の印象はよくなるでしょう。

応募者への誠意ある対応は、企業の信頼向上と採用力の強化につながり、優秀な人材の獲得にもつながります。
応募者の立場に立ち、信頼を獲得できるコミュニケーションを心がけることが重要です。
今一度、自社の応募者への対応を見直してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。