『商業登記』と『法人登記』の違いは? それぞれの登記申請を解説
「商業登記」は株式会社や合同会社についての情報を法務局に登録し、公示する制度です。
会社を設立する際には、法務局に商業登記の申請を行う必要があります。
よく似た登記に「法人登記」がありますが、商業登記との違いを明確に理解している人は意外に少ないのではないでしょうか。
会社を設立するにあたって知っておきたい商業登記と法人登記の違いや、それぞれの登記申請などについて解説します。
対象が異なる「商業登記」と「法人登記」
「商業登記」とは会社法に基づいて行われる登記であり、株式会社や合同会社などの会社が対象となります。
会社の情報を広く一般に公示することで、商業取引の安全性を確保することが登記の目的です。
一方、「法人登記」は、一般社団法人や一般財団法人やNPO法人など、「会社以外の法人」を対象とする登記です。
混同されがちな商業登記と法人登記は、対象になる法人の種類が異なるという点が最も大きな違いです。
不動産登記と区別するために、まとめて「法人登記」や「会社登記」と呼ばれることもありますが、厳密には違う登記であることを理解しておきましょう。
したがって、多くの人が会社を設立する際に行う登記は、商業登記ということになります。
法務局が管理する商業登記簿には会社名、所在地、代表者名、資本金、事業目的など、会社に関する重要な情報が記録されており、登記の状況を確認したい場合、登記事項証明書などの証明書を取得して確認することになります。
設立登記は法人の効力発生要件なので、登記申請をしないまま事業活動を行うことはできません。
定められた期限内に登記申請をしないと、会社法で定められた義務違反となり、100万円以下の過料に処される可能性もあるので注意してください。
また、商業登記は会社設立時だけではなく、会社の所在地および役員、社名、事業内容などに変更があった場合や会社を解散する場合などにも、申請手続きが必要になります。
2023年度の会社の設立や変更などを含めた商業登記の件数は、合計131万5,724件でした。
会社を設立する際の登記申請までの流れは、まず商号や事業目的などの会社概要を決め、その内容をもとに会社の基礎となるルールの定款を作成します。
その後、資本金の払い込み、最後に商業登記の申請手続きを行います。
登記申請に必要な書類は、会社の種類や状況によって異なるので、確認しておきましょう。
増加傾向にある会社以外の法人の種類
会社以外の一般社団法人、一般財団法人、NPO法人を設立する際には、商業登記ではなく、法人登記の申請を行います。
2008年の法施行以降、一般社団法人と一般財団法人は設立件数を順調に伸ばしており、2022年時点で合計7万8,362法人を記録しました。
NPO法人も2011年の改正法の施行以降、右肩上がりで増えており、2023年時点で4万9,941法人が法人格として認証されています。
こうした会社以外の法人には、どのような特徴があるのでしょうか。
いずれも法人格を持つ非営利組織ですが、設立目的や活動内容が異なります。
一般社団法人は、事業に制限を受けず、幅広い活動が可能な法人です。
たとえば、業界団体や学会、スポーツクラブなどの任意団体を法人化して、運営する場合に適しています。
一般財団法人も事業に制限を受けませんが、設立者が拠出した財産をもとに運営するという違いがあります。
一般社団法人が共通の目的を持った「人」が主体となって活動するのに対し、財団法人は「財産」を活用するために運営を行います。
一般財団法人の目的は、主に文化振興や社会福祉などです。
NPO法人は「特定非営利活動法人」とも呼ばれ、「保健、医療又は福祉の増進」や「社会教育の推進」など、社会的な公益性を持つ20分野の非営利活動に限定された事業運営を行うための法人です。
また、一般社団法人と一般財団法人は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)」、NPO法人は「特定非営利活動促進法(NPO法)」に基づき、設立などの際は、登記申請を行う必要があります。
どの種類の法人でも、設立者自身で登記申請を行うことはできますが、商業登記も法人登記も専門知識が必要となるため、基本的には司法書士に依頼することをおすすめします。
商業登記や法人登記の代理申請業務は、司法書士の独占業務です。
個々のケースに沿ったアドバイスを受けることができるのはもちろん、登記申請書の作成や必要書類の準備などの複雑な手続きを代行してもらえるため、登記漏れやミスを防ぐこともできます。
特に初めて法人を設立する場合は、事前に信頼できる司法書士に相談してみましょう。
※本記事の記載内容は、2025年4月現在の法令・情報等に基づいています。