社会保険労務士法人レイナアラ

『利益』と『所得』の違いって? 税務・会計における基本の用語

25.03.25
ビジネス【税務・会計】
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事業活動において「収入」「収益」「利益」「所得」「益金」といった用語を頻繁に耳にします。
これらの用語は一見似ていますが、税務と会計においては異なる意味を持ち、それぞれの用語が自社の経営状況を分析するうえでの重要な指標となります。
正しく経営判断するためにも、経営者であればこうした言葉の意味を正確に理解しておかないといけません。
今回は、税務や会計に関連する業務で使用する用語について、解説します。

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「収入」は税務上、「収益」は会計上の用語

事業活動を遂行するうえでは、財務に関する業務が欠かせません。
「会計」と「税務」はどちらも企業の財務に関する業務の一つですが、それぞれ目的や役割が異なります。

会計は財務諸表の作成や情報分析などによって、組織の財務状況や経営成績を明確にし、株主や投資家といったステークホルダーに情報を提供することを目的としています。
一方、税務は税法や税制に基づき、適切に税金を計算して納付することを目的としており、所得税や法人税の計算、税務申告書の作成や提出などが主な業務となります。
会計と税務の違いを理解しておかないと、双方に関連する用語を勘違いしてしまう可能性があります。

たとえば、「収入」と「収益」は、事業者が経済活動を通じて得た成果の総額を指す似た概念の言葉ですが、収入は税務の文脈で使われることが多く、収益は会計に関連する用語として使われます。
収入は実際に手元に入ってきた段階で発生するのに対し、収益は取引が成立した段階で発生します。
したがって、企業が商品を販売して収益が発生したとしても、代金が掛取引で後日支払われる場合には、現金が入り収入として計上するタイミングと異なることが少なくありません。

そして、この収益から費用や損失を差し引いたものが「利益」となります。
利益は会計上の用語で、企業が経済活動やビジネスの結果として得られる金銭的な成果を指します。
たとえば、2万円の製品を仕入れて、10万円で販売した場合に、販売価格の10万円が収益となり、利益は仕入れ価格の2万円を差し引いた8万円となります。 費用は仕入れ価格の2万円です。

また、税務上の用語である「所得」も利益とよく似た概念ですが、所得は課税所得の対象となる収入(益金)から損金を差し引いたものを示すため、利益と所得の金額には差が生じるのが一般的です。
ちなみに、「損金」は事業を営むうえで必要となる経費のことを指す税法上の用語です。

収益のなかに含まれる売上と営業外収益

事業活動によって獲得した収益から、費用や損失を差し引いたものが利益ですが、この利益は、さらに「売上(営業収益)」と「営業外収益」に分けられます。
売上とは、企業が本業としている事業の商品やサービスを販売することで得た収益のことだけを指し、それ以外の方法で獲得した収益は営業外収益と呼びます。

企業が得る収益は商品の売買だけで発生するものではありません。
預金や貸付金からの利息や保有する株式からの配当金、株式や債券の売却による利益、建物や土地を他人に貸し出して得る利益なども含まれます。
こうした本業には直接関係のない営業外収益と、本業の売上を合計したものがその組織の収益となります。
ただし、本業の売上だけで収益を上げている会社であれば、売上と収益が同じ意味合いで使われることもあります。

また、税務上の用語である「益金」は、課税所得の対象となる収入を指します。
益金は収益と同じく売上や営業外収益などの企業が経済活動を通じて得た利益のことですが、会計上は収益でも株式の配当金や税金の還付金など税務上は益金として計上しない収入もあるため、会計上の収益と完全に一致するわけではないことに注意が必要です。

多くの企業は、収益の増加を目指して事業を拡大し、利益率の向上のために効率化を図ります。
また、税金を最小限に抑えるために、所得を抑える対策にも注力しています。
経理担当者はもちろんですが、経営者がこれらの用語を理解することで、経営状況をより正確に把握し、適切な経営判断ができるようになるでしょう。
会計や税務の基礎知識を習得するためには、参考書やオンライン学習、実務ツールなどが効果的です。


※本記事の記載内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。