社会保険労務士法人レイナアラ

黒字でも倒産!? 急増している『隠れ倒産』の対応策

25.03.25
ビジネス【企業法務】
dummy

会社経営においては、赤字が続くと資金繰りが苦しくなり、倒産に至ることになります。
しかし、会社が倒産するのは赤字のときだけではありません。
近年、黒字経営にもかかわらず、事業を継続できないケースが増えています。
このように、経営する資金的な余裕を残しつつも、実質的に事業が継続できなくなる状態のことを「隠れ倒産」と呼びます。
隠れ倒産が急増している背景と、隠れ倒産に陥らないための対策を解説します。

dummy

隠れ倒産も含めた全体の倒産件数が増加!

隠れ倒産とは、会計上は黒字であっても、実際には事業継続が困難になる状態を指します。
事業継続が困難になる要因として、一般的には資金繰りの悪化や過剰な借入による赤字化があげられますが、隠れ倒産は主に「人手不足」や「後継者の不在」などにより引き起こされます。

2024年の1年間で倒産した企業などの件数は10,000件を超え前年比で15.1%増加し、2013年に次ぐ、11年ぶりの高水準を記録しました。
3年連続で前年を上回った倒産件数は今後も増加傾向が続くと見られています。
倒産の原因は最多が「販売不振」でしたが、実は人手不足や後継者の不在も倒産件数の増加に大きく影響しています。
人手不足による倒産の件数は289件と過去最多を記録し、後継者の不在による倒産も過去最多の462件と高水準となりました。
さらに、数字には表れない隠れ倒産を含めると、人手不足や後継者の不在を原因とした倒産は、膨大な数になると推察されます。

倒産は、基本的に「私的倒産」と「法的倒産」の2つがあり、赤字経営に陥った会社を倒産させるために、経営者はどちらかの方法を選ぶことになります。
私的倒産は、裁判所を介さずに債権者との話し合いで債務の整理を行う手続きのことです。
法的倒産はさらに「再建型」と「清算型」に分けられます。
再建型には会社の再建を目指す「会社更生手続」と「民事再生手続」、清算型には会社を畳むための「破産手続」と「特別清算手続」があります。
しかし、隠れ倒産はこうした手続きを行わないため、統計上は倒産にカウントされません。

経済的な理由以外で事業が継続できない

隠れ倒産は、倒産の手続きを行うことなく、自主的に会社を休廃業したり、解散したりすることを指します。
人手不足や後継者の不在など、経済的な理由以外で事業の継続を断念する隠れ倒産は、正確な件数こそわからないものの、表に出ている倒産件数と同様に、増え続けているといわれています。

近年は、すべての産業で人手不足が深刻化しており、人材の確保も容易ではありません。
求人難や人件費高騰のなかで、特に資金力が弱い中小企業は人材を確保できず、苦しい状況に追い込まれています。
人材が足りなければ、どんなに仕事を請け負ったとしても、業務を遂行できません。
また、近年は働き方の変化や流動性の高まりなどから、転職が当たり前になり、採用した人材が数年で会社を離れてしまうケースも増えました。
求人難や人件費高騰に加え、従業員の離職率の増加を止められず、事業が継続できなくなってしまった企業も少なくありません。

人手不足はどの企業にとっても優先的に解消しなければならない課題です。
採用手法の見直しや業務の効率化、労働環境の改善などの方法で、人手不足の解消に取り組みましょう。
もし、人手不足の解決がむずかしいのであれば、事業を縮小するというのも方法の一つです。
利益率の低い事業からは撤退し、利益率の高い事業にのみ限られた人材を投入することで、会社を存続させることが可能です。

また、隠れ倒産が起こる要因の一つとして、経営者の高齢化に伴う後継者の不在も考えられます。
経済産業省の報告によれば、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人に達し、そのうち約半数の127万人に後継者がいないといわれています。

後継者が見つからなければ、当然、事業を継続できません。
しかし、黒字化している会社であれば、M&Aによる合併や買収の相手が見つかる可能性は高く、M&Aが成功することによって、隠れ倒産を避けられるかもしれません。
M&Aを実施する際は、専門的な知識やノウハウが必要になるため、M&A仲介会社やアドバイザリー会社などに相談することをおすすめします。

隠れ倒産は、黒字経営でも起こり得る深刻な問題です。
まずは隠れ倒産にならないように、従業員の定着率向上や後継者の育成など、普段から必要な対策を講じて、できるだけ隠れ倒産のリスクを軽減するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。