社会保険労務士法人レイナアラ

日本でも広がりを見せる『ライブコマース』の最前線

25.03.25
ビジネス【マーケティング】
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近年、インターネットやスマートフォンの普及に伴い、世界中のEC市場が急速に拡大しています。
そのなかでも、新たな販売手法として注目されているのが「ライブコマース」です。
ライブコマースは、ライブ配信とEコマース(電子商取引)を融合させたもので、視聴者とリアルタイムに双方向のコミュニケーションを取りながら、商品を販売できます。
中国やアメリカではすでに大きな市場を形成しており、日本でも徐々にその存在感を増しています。
国内外の市場規模やプラットフォームなどを紹介しながら、日本におけるライブコマースの可能性を探ります。

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リアルタイムの双方向のやり取りが特徴

ライブコマースとは、ライブ配信プラットフォーム上でリアルタイムに商品を紹介し、販売する手法を指します。
視聴者は配信中にコメントや質問を投稿したり、その場で商品を購入したりすることが可能です。

リアルタイム性や臨場感はライブコマースの大きな特徴ですが、これまでもリアルタイムで商品を紹介し、視聴者に購入を促すテレビショッピングという販売手法が存在していました。
では、ライブコマースとテレビショッピングは何が違うのでしょうか。
この2つの違いは、双方向性にあります。

テレビショッピングは視聴者が一方的に情報を受け取ることしかできませんが、ライブコマースはコメントや「いいねボタン」などを通じて、リアルタイムでの双方向のやり取りを実現しました。
テレビショッピングは電話で注文ができますが、基本的に番組内で視聴者と直接やり取りすることはありません。
しかし、ライブコマースでは、たとえば視聴者が「サイズ感はどう?」「素材の質感は?」とコメントすると、配信者はその場で回答できます。
これにより、視聴者の疑問が解消され、購入につながりやすくなります。
また、消費者参加型の販売形態のため、よりエンゲージメントが高まるというメリットもあります。

中国やアメリカでは市場の規模が年々拡大

双方向性を軸に、次世代の販売手法として人気を集めるライブコマースは、中国やアメリカなどで、すでに大きな市場を形成しています。
中国はライブコマース市場が最も発展している国の一つで、2021年の流通額は約48.7兆円に達しました。
プラットフォームは、「淘宝(Taobao)」「抖音(Douyin)」「快手(Kuaishou)」などが市場の中心となり、各プラットフォームでは人気インフルエンサーがライブ配信を行い、多くの視聴者を集めています。

一方、アメリカでもライブコマース市場は急速に拡大しています。
米国のコンサルティング会社の調査によると、アメリカのライブコマース市場規模は2022年に約2.21兆円(170億ドル/1ドル130円で計算)を記録し、2026年までに約7兆150億円(550億ドル)に達すると予測されています。
アメリカでは、「Facebook Live」「Instagram Live」「Amazon Live」などのプラットフォームがライブコマースを牽引しています。
これらのプラットフォームでは、人気ブランドや有名小売業者がライブ配信を行い、視聴者である顧客とのエンゲージメントを高めています。

日本におけるライブコマースの可能性は?

発展途上ながら、日本でもライブコマース市場が急速に成長しています。
2020年は約140億円だった市場規模は2023年には約3,000億円に達し、3年で約20倍に成長し今後も成長が見込まれています。
日本国内では、「楽天ショッピングチャンネル」「au PAYマーケット ライブTV」などのプラットフォームのほか、「Instagram Live」「TikTok LIVE」「YouTube Live」などSNSのライブ配信でもライブコマースが行われています。

ライブコマースはさまざまな分野や商品に向いており、各プラットフォームでは、多くの商品が紹介されています。
特に相性がよいのは、ライブ映像を通じて素材感や着用感、使用感などを伝えることのできるアパレルやコスメ、調理方法や試食の様子を配信できる食品、機能や使い方を周知できる家電などです。
いずれの商品も、ライブコマースであれば、ライブ映像を通じて商品の魅力をリアルに伝えられるため、視聴者の購買意欲を高められるでしょう。

ただし、ライブコマースは不適切な発言や表現があった場合に、炎上するリスクがあることを留意しておきましょう。
医薬品や化粧品などを販売する際には、薬機法に注意する必要もありますし、商品や紹介の仕方によっては、景品表示法などに抵触する可能性もあるので、まずは法的な問題や規制がないか、専門家と共に確認しておくことをおすすめします。

さらに、ライブコマースはライブ配信の準備や運営に時間や労力がかかりますし、視聴者の個人情報保護や配信するコンテンツの著作権などにも気を配らなければいけません。
メリットだけではなく、デメリットもしっかりと把握したうえで、準備を進めていきましょう。

ライブコマースを始めるには、プラットフォームの選定、商品セレクト、配信内容の企画、配信準備、効果測定など、さまざまな要素を考慮する必要がありますが、すべてが噛み合って成功すれば、新しい顧客層の獲得も期待できます。
現状のEコマースに行き詰まりを感じているのであれば、日本においても市場が拡大していくことが予想されるライブコマースへの参入を検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。