採用選考で応募者の『経歴詐称』を見抜くには?
採用選考にあたって、必ず確認しなければいけないのが、応募者の経歴です。
学歴や職歴といった経歴は、従業員を採用する判断材料の一つになります。
応募者の経歴は履歴書や職務経歴書などで確認できますが、もし虚偽の記載があった場合は、会社にさまざまなリスクを及ぼす可能性があります。
採用担当者は応募者の経歴の真偽をどのように確認すればよいのでしょうか。
虚偽の記載を見抜く方法や、経歴詐称を防ぐために必要な書類などについて、解説します。
職歴証明書の提出を求めることで詐称を防ぐ
採用選考において、応募者が学歴や職歴を偽ったり、犯罪歴などを隠したりすることを「経歴詐称」といいます。
もし、応募者が経歴を詐称しており、その詐称に気がつかないまま採用してしまった場合は、会社側が損害を被ってしまうかもしれません。
採用したものの、その人物の職務遂行能力が足りておらず、ほかの社員の負担になってしまう可能性がありますし、業務の遅延も考えられます。
また、経歴詐称が明るみに出た場合、顧客や取引先の信用を失うおそれもあり、場合によっては会社側が責任を問われることもあります。
こうしたリスクを避けるために、採用担当者は応募者の経歴の真偽を確認しなければいけません。
応募者の経歴は提出してもらう書類で、ある程度まではチェックすることができます。
履歴書や職務経歴書などは応募者自身が書くものなので、真偽は確認できませんが、「卒業証明書」や「職歴証明書」といった書類で学歴や職歴をチェックすることが可能です。
「職歴証明書」とは応募者の前職企業に発行してもらう証明書のことで、前職の在籍期間や所属部署、役職や雇用形態などが記載されています。
この職歴証明書を履歴書や職務経歴書と付き合わせることで、経歴の詐称がないかどうかを確かめます。
職歴証明書の発行にはある程度の期間を要するため、履歴書や職務経歴書とあわせて、事前に提出してもらうように伝えておくとスムーズです。
また、職歴証明書の代わりに「退職証明書」を提出してもらうという方法もあります。
退職証明書は労働基準法第22条に基づき、使用者が労働者の求めに応じて交付しなければならない書類で、在籍期間や役職のほかにも、退職した年月日や退職事由などが記載されています。
面接や前の会社への問い合わせなどで確認
面接で経歴詐称が発覚するケースもあります。
経歴詐称をしている応募者は自分で作った嘘の経歴をもとに話さなければならないため、具体的な質問に対して噛み合わない答えを返してしまったり、内容に食い違いが生じてしまったりします。
明らかにおかしい回答があった場合には、経歴詐称を疑いましょう。
経歴詐称の疑惑がある応募者には「リファレンスチェック」が有効です。
リファレンスチェックとは応募者が提出した情報の正確性を確かめるために、前職の会社に問い合わせる手続きのことを指します。
このプロセスを経ることで応募者の経歴の真偽がわかります。
リファレンスチェックは、外資系企業や幹部候補の中途採用などで行われており、リファレンスチェックのサービスを提供する専門の会社もあります。
ただし、一定のコストがかかってしまうため、すべての応募者にリファレンスチェックを行うのはあまり現実的ではありません。
また、応募者がSNSなどを利用していれば、過去の投稿から実際の経歴を探ることもできます。
こうしたSNSアカウントの特定を含め、候補者の経歴に虚偽や問題がないか調査することを「バックグラウンドチェック」と呼びます。
バックグラウンドチェックも調査を請け負う専門の会社が存在するので、場合によっては利用を検討しましょう。
さらに、採用後に提出してもらう「雇用保険被保険者証」で経歴詐称を見抜けるケースもあります。
雇用保険被保険者証は雇用保険に加入した証明書で、前職の会社名や退職年月日などが記載されているため、本人の履歴書や職務経歴書と食い違いがあれば、経歴詐称を疑いましょう。
もし経歴詐称が明らかになった場合、会社側は何らかの処分を下さなければいけません。
入社前に発覚した場合は「内定の取り消し」、入社後の発覚は「懲戒処分」を行う必要があります。
懲戒処分は、厳重注意を言い渡す「戒告」や、一時的な出勤の禁止を命じる「出勤停止」、そして、最も重い処分の「懲戒解雇」などがあります。
経歴詐称といっても、職歴の空白期間をごまかしているものから、未取得の資格を記載しているものまでさまざまです。
経歴詐称の内容や度合いに応じて、下すべき懲戒処分を決める必要があります。
※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。