税理士法人加藤会計事務所

労働安全衛生法が改正! 個人事業者に対する安全衛生対策の推進とは

26.07.28
ビジネス【労働法】
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働き方の多様化が進むなかで、会社員と個人事業者が同じ現場で働くケースも増えてきました。
しかし、会社員などの労働者と、フリーランスや一人親方といった個人事業者は、法律上の立場が異なるため適用される法律も異なります。
安全管理の観点から、2025年に労働安全衛生法の改正が行われ、「個人事業者等に対する安全衛生対策の推進」が法的に位置付けられることになりました。
この法改正により、個人事業者の安全衛生対策に関する措置が段階的に施行されます。
特に異なる立場の人が混在する現場を監督する企業は、措置の中身について理解しておきましょう。

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労働者と個人事業者が同じ現場で働くケース

近年、プロジェクト単位での業務委託や、個人が企業と雇用契約を結ばず、単発・短時間で仕事を請け負う「ギグワーク」の普及など、働き方の多様化が進んでいます。
これに伴い、特定の企業に雇用されていないフリーランスや一人親方などの個人事業者が、正社員などの労働者と同じ現場で業務を行う場面が日常的になりました。

これまで個人事業者は法律上、労働者とは区別されており、労働基準法や労働安全衛生法といった労働法による保護の対象外とされてきました。
しかし、現実の作業現場では、雇用形態の違いにかかわらず、誰もが同じリスクを共有しています。
特に個人事業者が特定の作業現場のルールに不慣れであったり、事業者側から十分な安全衛生教育が行われていなかったりするケースでは、安全確認の漏れや、不適切な手順での作業が発生しやすい状況にあります。
結果として個人事業者本人が怪我をするだけでなく、周囲の労働者を巻き込んだ労働災害を引き起こしてしまうリスクがあります。

このような現場の実態と法制度の乖離を解消するため、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が国会で成立し、2025年5月14日に公布されました。
この改正は、雇用形態にかかわらず、働くすべての多様な人材が安全に、かつ安心して働き続けられる職場環境の整備を推進することを目的としています。

具体的な内容として、職場のメンタルヘルス対策の推進などと並んで、「個人事業者等に対する安全衛生対策の推進」が盛り込まれました。
これにより、個人事業者は労働安全衛生法における保護の対象となると同時に、みずからも安全を守る義務の主体として位置付けられることになります。

段階的な施行に向けた具体的なポイント

法改正によって、「個人事業者等に対する安全衛生対策の推進」に関する措置は、段階的に施行されます。

まず、2026年4月1日に「混在作業場所における元方事業者等への措置義務対象の拡大」が施行されました。
これは、労働者と個人事業者が一緒に働く現場において、事業者は個人事業者に対しても、自社の労働者と同等の安全措置を行うことが求められるようになったということです。
たとえば、危険な作業を伴う場所への立ち入り制限や、退避指示などについて、自社の労働者と同じように、個人事業者にも指導や連絡調整を行わなければいけません。

続く2027年1月1日には、個人事業者の労働災害に関する「業務上災害報告制度」が施行されます。
これまで個人事業者の業務上の怪我や病気は、労働災害として正確に把握されにくい側面がありました。
しかし、この制度が創設されたことで、個人事業者の業務に起因する労働災害が発生した場合、厚生労働大臣は事実関係を調査し、関係する事業者に報告を求めることができるようになります。
これにより、行政が事故の実態を把握し、再発防止策を講じるための仕組みが整うことになります。

さらに、2027年4月1日からは、個人事業者等の安全衛生対策に関して、「個人事業者等自身への義務」が課されることになります。
これは、事業者側にのみ安全管理の負担を強いるのではなく、働く側である個人事業者にも責任を求めるものです。
具体的には、個人事業者が労働者と同じ場所で作業を行う場合、事業者が定めた安全ルールに従うことや、必要に応じて安全衛生に関する措置を講じることなどが法律上の義務となります。

今回の労働安全衛生法の改正は、多様な働き方を社会全体で支え、現場の安全を底上げするための転換点となるものです。
企業側は、まず自社の作業現場にどのような立場の人がかかわっているのか、あらためて把握する必要があります。
そのうえで、2026年4月から始まった段階的な施行を踏まえて、業務委託契約の見直しや現場の安全ルールの再整備、個人事業者を含めた安全教育の体制づくりを進めていくことが求められます。
法律上の義務を果たすのはもちろん、同じ職場で働く仲間の命と健康を守るという基本に立ち返り、安全な職場環境を構築していきましょう。


※本記事の記載内容は、2026年7月現在の法令・情報等に基づいています。