税理士法人加藤会計事務所

市場が成長中の『IPビジネス』を成功させるために必要なこと

25.12.09
ビジネス【マーケティング】
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「IPビジネス」とは、キャラクターやゲーム、デザインなど、企業が持つ独自の「知的財産(Intellectual Property)」を核に収益を生み出すビジネスモデルのことです。
自社IPの商品化や他社に使用を許諾するライセンスビジネス、イベント開催など多岐にわたります。
現在、このIPビジネスの市場は急速に拡大しており、業種を問わず多くの企業にとって大きなビジネスチャンスでもあります。
これからIPビジネスへの参入を検討している企業に向けて、基礎知識から市場の将来性、ビジネスを成功に導くための具体的なポイントなどを解説します。

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IPビジネス市場が世界的に拡大している理由

人気アニメのキャラクターが描かれた商品、物語の世界を再現したテーマパーク、ブランドロゴをあしらったアパレル商品など、身の回りにはIPビジネスの成功事例があふれています。
IPビジネスの市場は年々拡大しており、IPを含む世界のコンテンツ関連産業は、2020年の時点で約220兆円規模、日本だけでも約12兆円規模と成長を続けており、今後さらなる拡大が見込まれています。

市場拡大の背景には、SNSや動画配信サービスなどの普及があるといわれています。
個人の「好き」という熱量がSNSを通じて瞬く間に拡散されると同時に、動画配信サービスで国内外の優れたIPに誰もが手軽に触れられるようになったことが、市場の拡大を後押ししました。
特に日本では、消費者の価値観が「モノ消費」から「コト消費」へ、さらには特定のキャラクターや作品を応援する「推し活」といった価値観の変化も、IPの持つ物語性や世界観への共感を高め、ビジネスとしての価値を押し上げていると推察されます。

大きな可能性のあるIPビジネスの最大のメリットは、非常に高い収益性と持続性が期待できる点にあります。
強力なIPは、グッズ販売、ライセンス収入、メディアミックスなど、多角的な展開によって長期にわたり収益を生み出し続けます。
また、ファンとの間に強いエンゲージメントを築くことができ、企業のブランド価値そのものを大きく向上させる力も持っています。
国境を越えて愛されるIPへと育てば、グローバルな事業展開も夢ではありません。

一方で、デメリットも理解しておく必要があります。
何よりも、魅力的なIPをゼロから生み出し、ファンに愛される存在へと育てるまでには、膨大な時間とコスト、そして何より情熱が必要です。
ヒットの確証はありませんし、常に不確実性というリスクも伴います。
また、IPは企業の「顔」となるため、不祥事やファンの期待を裏切るような言動があれば、そのイメージは大きく傷つき、ビジネスに深刻な打撃を与えかねません。
模倣品対策など、権利管理の複雑さも無視できない課題の一つです。

IP保有企業とのパートナーシップも検討

IPビジネスを成功させるためには、ユーザーの共感を呼ぶ強固な世界観とストーリーの構築が不可欠です。
消費者がIPに惹かれるのは、IPの背後にある物語や世界観に感情移入するからです。
見た目のデザインだけでなく、思わず人に語りたくなるような深い物語を用意することが、ファンの心をつかむ第一歩となります。

また、ファンコミュニティを育て、共に歩む姿勢も欠かせません。
SNSやオンラインサロン、イベントなどを通じて、ファンと積極的にコミュニケーションを取り、ユーザーの声に耳を傾ける、時にはファンの意見を企画に取り入れるなど、IPを「共創」していくパートナーとしてとらえることで、熱量の高いコミュニティが形成されます。

当然、IPの価値を最大化する多角的な展開戦略も必要です。
一つのメディアや商品に固執するのではなく、アニメ化、ゲーム化、書籍化、舞台化など、そのIPが持つ魅力を最も引き出せる形で展開していく「メディアミックス」の視点が求められます。
それぞれの展開が相互に作用し合い、IP全体の価値を雪だるま式に大きくしていきます。

ただし、前述した通り、自社でゼロからIPを生み出すのは大きな困難を伴います。
IPビジネスへの新規参入を考えるのであれば、すでに強力なIPを持つ企業とのパートナーシップも有力な選択肢になります。
たとえば、人気アニメと食品メーカーがコラボしてパッケージ商品を開発したり、ゲームの世界観をテーマにしたカフェを共同で運営したりするなどの例があります。
このように、成功しているIPと自社の製品やサービスを掛け合わせることで、相手のIPが持つ集客力やブランドイメージを活用し、新たな顧客層にアプローチすることが可能になります。

重要なのは、自社のブランドや製品と親和性が高く、互いの価値を高め合えるパートナーを選ぶことです。
自社でIPを育てる、あるいはパートナーと協業するとしても、一定のリスクは伴います。
ただし、成功すれば長期的な価値を創造していけるようになるでしょう。
まずは、自社のブランドや製品が、どのようなIPと親和性を持てるのか考えてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年12月現在の法令・情報等に基づいています。