税理士法人加藤会計事務所

個人事業主も加入可能に! フリーランスの労災保険制度について

25.12.09
ビジネス【労働法】
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これまでは、雇用されている労働者のための制度というイメージが強かった労災保険ですが、2024年11月から、フリーランスも原則として労災保険に加入できるようになりました。
労災保険とは、仕事中や通勤途中にケガや病気、死亡した場合に国が補償を行う制度です。
正式には「労働者災害補償保険」といいます。
フリーランスが加入できるようになったことで、誰もが安心して仕事に取り組める環境が整いつつあります。
今回は、この改正の概要と、フリーランスが労災保険に加入するための具体的な方法を解説します。

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フリーランスも労災保険の対象に

労災保険は、保険料の全額を事業主が負担し、労働者は費用を負担せずに保障を受けられるのが特徴の一つです。
制度の基本的な考え方は、あくまで雇用関係にある労働者を保護することにあります。
そのため、自分の裁量で働き、仕事の依頼主との間に雇用契約を持たないフリーランスや個人事業主は、原則としてこの労災保険の対象外とされてきました。
そのため、フリーランスの場合、業務中や通勤中に事故や病気で働けなくなっても、労災保険制度からの補償を受けることはできませんでした。

また、労働者については労災の発生状況が厚生労働省より公表されていましたが、フリーランスには災害の報告制度が設けられていないため、これまでは業務に関連した労災の発生状況が不透明なままでした。
しかし、日本に約460万人いるとされるフリーランスも、労働者と同様に労働災害に遭う可能性があります。
働き方の多様化やフリーランス人口の拡大が進むなか、フリーランスに対する労災リスクの高さが指摘されていました。

こうした社会的セーフティネットの不備を解消するため、フリーランスであっても、一部の業種に限っては、段階的に労災保険の加入が認められてきました。
2021年4月には俳優やアニメーターなどの芸能・制作関係の事業者が、同年9月にはIT関連業務従事者が特別加入の対象に追加されました。
そして、2024年11月からは、原則としてすべてのフリーランスが特別加入できるよう制度が拡大されました。
特別加入とは、労働者以外でも一定の要件を満たす場合に任意加入できる「特別加入制度」に基づくもので、加入したフリーランスは、仕事中や通勤中のケガ・病気・事故に対して、治療費や休業中の収入補償を受けることができます。
また、もし労災によって後遺障害が残ったり、万が一亡くなったりした場合にも、年金や一時金などが支給されます。

フリーランスが労災保険に加入するには

では、フリーランスが労災保険に加入するためには、どのような手続きを行えばよいのでしょうか。
労働者を雇っている会社であれば、労働基準監督署を通じて手続きを行いますが、フリーランスの場合は「特別加入団体」を通じて加入する必要があります。

この「特別加入団体」は、労働局の承認を受けた協同組合や商工会議所、業種団体などが該当します。
まず、労災保険への加入を希望するフリーランスは、自分の業務内容や地域に合った特別加入団体を探して、申し込みを行います。
団体によっては、労災保険以外にも独自の共済制度や福利厚生を提供している場合もあるため、自身にとって最もメリットのある団体を選ぶことが大切です。

申し込み後は、団体を通じて労働局へ特別加入の申請が行われます。
フリーランスは労働者ではないため「給料」という概念がなく、労災保険の給付額や保険料の算定基礎となる「給付基礎日額」を自分で決めることになります。
この額が高ければ高いほど、受け取れる補償額は増えますが、その分支払う保険料も高くなります。
給付基礎日額は、1日当たりの収入を基準に、3,500円から2万5,000円までの16段階から自分で選択します。
年間保険料は給付基礎日額の365日分の0.3%となります。
たとえば、給付基礎日額を1万円とした場合は、「1万×365×3/1000」という式となり、年間保険料は10,950円になります。
この保険料は、団体を通じて支払います。

保険料は全額自己負担となりますが、万が一の事故や病気に備えるための必要経費と考えることができます。
フリーランスとして安心して働くためにも、制度の内容を正しく理解し、信頼できる特別加入団体を通じて加入手続きを進めることをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2025年12月現在の法令・情報等に基づいています。