Management LABO 経営会計事務所

『賃上げ促進税制』強化! 赤字企業は5年の控除繰り越しが可能に

24.02.26
ビジネス【税務・会計】
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雇用者全体の給与を基準よりも増やした企業は、『賃上げ促進税制』によって、支給した給与のうち増額分について一定の割合を法人税から控除することができます。
この賃上げ促進税制は2022年4月からスタートしましたが、2024年度税制改正によって、適用期間が延長されることになりました。
さらに、赤字の中小企業に対しても賃上げを促すために、賃上げを実施した年度に法人税から控除できなかった金額を5年間は繰り越せるようになります。
賃上げ促進税制の強化によって新たに創設された、中小企業に対する『繰越控除措置』について、説明します。
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中小企業向けの賃上げ促進税制が強化された

物価の上昇や円安が続き、国民の生活は厳しい状態が続いています。
この状況に対応し、暮らしやすい環境にするため、企業による持続的な賃上げが求められています。
労働者の賃上げによる消費の拡大を狙い、政府はこれまでさまざまな『賃上げ税制』を講じてきました。
2013年に企業の賃上げ促進を目的に『所得拡大促進税制』が創設されたのを皮切りに、以降は複数回の見直しを経て、2022年4月1日からは新たな賃上げ税制として、『賃上げ促進税制』がスタートしました。

賃上げ促進税制は、大企業向けと中小企業向けに分かれています。
中小企業向けの賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業等または個人事業主が前年度より給与等支給額を増加させた際に、その増加額の一定の割合を法人税または所得税から控除することのできる制度です。

これまで、中小企業向けの賃上げ促進税制では、雇用者全体の給与等支給額の増加額の最大40%を控除することができました。
この割合のことを『税額控除率』といいます。
2024年度の税制改正によって、税額控除率が現行の最大40%から最大45%まで引き上げられることになります。
この強化された賃上げ促進税制においては、2024年4月1日から2027年3月31日までに開始する各事業年度が適用期間となります。

さらに、改正された賃上げ促進税制では、ある課題を解決するための措置も創設されました。
その課題とは、赤字の中小企業は賃上げを行うメリットがないというものです。
赤字の中小企業は法人税がかからないため、賃上げを行なっても、これまでは増加額の一定の金額を控除することができませんでした。
控除ができなければ節税メリットがないため、賃上げにも消極的になってしまいます。
そこで、赤字の多い中小企業にも賃上げを促すため、新たに『繰越控除措置』が創設されました。

赤字になっても別の年度に控除を繰り越せる

賃上げ促進税制での繰越控除措置とは、赤字の中小企業が賃上げを行なった年度に控除しきれなかった金額を、5年間は繰り越すことのできる措置です。

たとえば、改正後の中小企業向けの賃上げ促進税制では、雇用者全体の給与等支給額を前年度比で2.5%アップさせた場合、税額控除率は30%になります。
税額控除率が30%ということは、賃上げの増加分が100万円の場合は30万円を法人税額から控除できるということです。
その年度が赤字であれば法人税額は0円のため、本来は控除することができません。
しかし、繰越控除措置によって、この30万円を5年間のうちの黒字の年度に繰り越すことが可能になりました。
ただし、繰り越して控除するには、繰り越し先の黒字になった年度も雇用者全体の給与の支給額が前年度より増えている必要があるので注意してください。

また、複数の上乗せ要件を満たすことで、税額控除率は最大で45%になります。
税額控除率が45%ということは、賃上げの増加分が100万円の場合は45万円を税額控除できるということです。
その年度が赤字であれば、5年以内で黒字になった時に45万円を控除できます。

2023年度に賃金の引き上げを実施した中小企業は約6割にもなり、給与を3%以上賃上げした企業は5割を超えました。
賃上げは税額控除による節税メリットはもちろん、優秀な人材の確保や定着、従業員のモチベーションアップなどにもつながり、特に中小企業においては有効な施策となります。
繰越控除措置によって、赤字の中小企業でも節税の恩恵を受けられるようになった今だからこそ、賃上げ促進税制による賃上げを検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。