Management LABO 経営会計事務所

資金繰りに行き詰まった企業が知っておきたい支払いの優先順位

24.02.13
ビジネス【税務・会計】
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赤字決算が続いて資金繰りが悪化した企業にも、毎月のようにさまざまな支払いが発生します。
銀行からの追加借入ができず、資金調達も叶わない状況で経営者が考えなければいけないのが、支払いの優先順位です。
正しい優先順位で支払いを行い、適切な対処をすれば、資金繰りを改善できるかもしれません。
しかし、この優先順位を間違えてしまうと、経営が厳しくなる可能性が高まります。
経営者であれば手遅れになる前に知っておきたい、支払いの優先順位について解説します。
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支払いが滞りそうなら返済のリスケを検討

東京商工リサーチが2023年10月に発表した『全国企業倒産状況』によると、2023年上半期(4ー9月)の企業倒産は4,324件と、前年の同期から約37%増となりました。
倒産件数が増加した理由の一つに、新型コロナウイルス対策として、中小企業向けに行われた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化したことがあげられます。
ゼロゼロ融資は、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関のほかに、民間の金融機関も行なっていた施策でした。

企業の支払いは「手形の支払い」「従業員の給与」「原価(材料費・外注費等)」「諸経費」「税金や社会保険料」、そして、ゼロゼロ融資などを含む「銀行への返済」の6つに大別することができます。
もし、資金繰りが悪化して追加借入ができない段階であれば、これらの支払いの優先順位について、よく考えなければいけません。

多くの企業は運転資金として銀行から借入を行なっています。
借入金の返済が滞ると新しく借入ができなくなってしまうことから、資金繰りが悪化した際に、銀行への返済を優先してしまう経営者が少なからずいます。
しかし、新たな借入ができなくても、すぐに会社が倒産するわけではないのです。

実は、銀行への返済は必ずしも最優先しなければいけないわけではありません。
なぜなら、交渉によって、元金の返済を止めたり毎月の返済額を減額してもらったりすることが可能だからです。
こうした返済のためのスケジュール調整のことを、「リスケ(リスケジュール)」といいます。
リスケはビジネス用語で「スケジュールの見直し」を意味しますが、金融用語では「返済計画の見直し」や「条件の変更」を指します。

リスケの交渉を行えば、銀行からの信用は下がるかもしれません。
しかし、ある程度の返済の猶予はできます。
半年から1年程度、利息分の返済のみ(元金返済なし)というかたちで対応してもらえるのが一般的です。
しばらくは借入ができないかもしれませんが、その間に業績を回復することができれば、再び融資を受けることも可能です。
実際に、ゼロゼロ融資においても、すでにリスケを行なっている企業は存在します。

会社を潰さないためには手形支払いが最優先

では、会社の資金繰りが悪化したら、どのような順番で考えていくのがよいでしょうか。
具体的には、まず銀行と相談のうえリスケをして、返済を待ってもらいます。
そして、後回しにした銀行の返済分を、ほかの支払いにあてます。

キャッシュフローに苦しんでいる企業は、「手形の支払い」「従業員の給与」「原価(材料費・外注費等)」「諸経費」「税金や社会保険料」の順番で支払いをしていき、最後に銀行への返済を行いましょう。

まず、手形はどの支払いよりも優先させなければいけません。
振り出した手形は、支払期日までに当座預金に入金し、受取人が引き出せるようにしておく必要があるからです。
受取人が決済できないことを「不渡り」と呼び、法律上は1回目の不渡りから6カ月以内に2回目の不渡りを出すと銀行取引停止処分となり、事実上の倒産となります。
一日でも支払期日を過ぎると不渡りとなるため、会社を潰さないためには、手形の支払いがどの支払いよりも優先されます。

次に優先されるのは、従業員の給与です。
給与の支払いが遅れると労働基準法違反になり、30万円以下の罰金刑または6カ月以下の懲役刑が科される可能性があります。
そればかりか、従業員のモチベーションの低下や、大量の離職を引き起こすかもしれません。
交渉によって多少は待ってもらえる可能性がありますが、用意ができ次第、迅速に支払うようにしましょう。

原価(材料費・外注費等)は仕入先となる取引企業に支払う費用で、相談すれば多少は支払いを待ってくれる可能性があります。
ただし、あまりに滞るようだと今後の仕入れに影響するため、この支払いも速やかに行う必要があります。

事務所の家賃も交渉次第ですが、水道光熱費などの諸経費は、状況によって1~3カ月ほどは待ってもらうことが可能です。
電気やガス、水道などの公共料金はすぐに止められるものではないので、余裕ができ次第、払うようにしましょう。

税金と社会保険料は、税務署や年金事務所、市町村などに相談することで、分割払いにしてもらうことも可能です。
その際、行なってはならないのが、催促を無視することです。
無視し続けると、差し押さえが行われる可能性もあるので注意しましょう。

最後に、リスケを行なった銀行へ元本を返済します。
一般的に、元本の返済を止めても金利は支払い続けることになります。金利の支払い方も含めて、銀行とよく相談することが大切です。

優先順位に従って支払いを行うことで時間の猶予ができ、業績回復のチャンスも生まれます。
資金繰りが悪化したときこそ、支払いの優先順位を意識しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。