Management LABO 経営会計事務所

新規システムを導入する際に気をつけたい著作権について

23.07.11
ビジネス【企業法務】
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昨今、ビジネス界でDX化が進み、さまざまな企業においてシステムの新規導入が活発になっています。
企業によってはシステムを独自に開発することも少なくありません。
しかしシステム開発には、たとえば契約不適合責任(要件定義とシステム開発の関係)、損害の範囲、準委任か請負なのかなど、法律的にさまざまな論点があります。
今回は著作権の観点から、システム開発について見ていきましょう。
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システム開発と著作権法上の問題点

新規にシステムを導入する場合、大きく2つのパターンが考えられます。
パッケージ品といわれるベンダーが開発した商品をそのまま導入する場合と、システムをみずから開発して導入するパターンです。

まずパッケージ品をそのまま導入する場合、著作権法上、見解が分かれるような不明な点はあまりありません。
パッケージ品の著作権は開発したベンダーのものであることは明白であり、そのシステムを導入した企業は、契約の範囲内で当該パッケージ品を利用することが認められます。
そのため、目的範囲外での製品の複製や翻案はもちろんのこと、リバースエンジニアリングといったシステムを独自に解析する行為も禁止されるのが一般的です。

他方で問題となるのが、システムをみずから開発して導入する場合です。
「システムを開発する」といっても、既存のシステムに手を加えるいわゆるカスタマイズや、ハーフスクラッチといった、既存の土台がある状態からその企業独自のシステムを追加するのが一般的です。これらは、著作権自体の帰属が問題となることが少なくありません。

カスタマイズやハーフスクラッチでシステム開発を行う場合、企業はITベンダーに費用を支払って開発することが一般的です。
そして企業側が費用を支払っている以上、そのシステムの著作権は、開発したITベンダーではなく、企業に帰属させるべきだという議論が生じやすいといえます。
著作権法上、著作権は著作物(この場合はプログラムの著作物)の制作者に帰属することになっています。
しかし、著作権自体は譲渡可能な権利のため、このような問題が生じるのです。

この点に関して、絶対的な正解はありません。
たとえば共同で著作権者になるという折衷的な方法もあり、必ずしもいずれか一方に帰属させるという結論を採る必要はないのです。
また、著作権自体をいずれかに帰属させたとしても、契約で著作権の使用範囲を限定的に解除することもできます。

自社で加えた『ノウハウ』の扱いは慎重に

システム開発を検討する際に忘れてはならないのは、ノウハウに関する決めごとです。
企業がカスタマイズやハーフスクラッチでシステム開発を行う場合、システムに反映させたいビジネス上のノウハウがいくつも発生します。

しかし、このノウハウはアイデアのレベルであり、著作権で保護される対象に含まれないため、ノウハウの扱いに関してはきちんと定めておく必要があります。
その理由は、企業側としては自分達が開発したシステム自体は著作権で保護されるとしても、ノウハウは保護されないため、ベンダー側は別のシステム(たとえば他パッケージ品など)にそのノウハウを搭載したシステムを開発し、パッケージ品の価値を上げたうえで他社に販売することも可能であるからです。
そうなると、企業は費用だけでなく、ノウハウもとられるという事態になりかねません。

このような場合、ノウハウの使用を禁止するというのも一つです。
それが難しい場合には、ノウハウを提供する代わりに費用のディスカウントを請求したり、ノウハウを使用する場合のフィーを設定しておいたりして、自社が一方的に負担を負うことにならないような対策をとるとよいでしょう。

もっともノウハウといっても、企業が本当に守りたい社外秘レベルのものから、ノウハウというに及ばないありきたりのものまで、さまざまなレベルがあります。
自社でつくりあげたノウハウとしてどこまで守るかは、しっかりと検討すべきでしょう。
決めごとが曖昧なままでは契約交渉が長引いてしまい、システム開発のスケジュールに支障が生じかねません。

システム開発には、注意するべき法的な観点がいくつか存在します。
著作権契約を結ぶ際は、ノウハウの扱いも含めて細かくルールを決め、システム導入後もトラブルなく事業活動を続けていけるよう、しっかりと確認をするようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2023年7月現在の法令・情報等に基づいています。