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銀歯材料はなぜ値上がりしている? 『逆ザヤ』問題のポイントを解説!

21.11.30
業種別【歯科医業】
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近年、値上がりが続いている『金銀パラジウム合金』。
実勢価格が上昇しつづけているため、2020年からは厚生労働省の告示価格の見直し期間が6カ月から3カ月に変わり、話題を呼びました。
しかし、市場価格の上昇は止まらず、いまだに『逆ザヤ』問題があるといわれています。
今回は、値上がりの理由や知っておくべきポイントについて解説します。
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なぜ起きた? パラジウム『逆ザヤ』問題

虫歯の保険治療において、欠かすことのできない『銀歯』。
金属材料には『パラジウム合金』が多く使われていますが、この素材となるパラジウムの異様な値上がりが起きています。

パラジウムは供給量が少ないレアメタルで、価格が変動しやすく、厚生労働省は、診療報酬の改定時以外にも、随時、改定を行ってきました。
しかし、最近では値上がりが激しく、また長く続くため、厚生労働省の価格改定が間に合わず、保険材料であるにもかかわらず、歯科医療機関が、治療報酬よりも高い銀歯を持ち出しで購入する事態になっています。
これが、よくいわれる『逆ザヤ』問題です。

なぜ、パラジウムがこれほどまでに高騰してしまったのでしょうか。
歯科においては詰め物やかぶせ物、欠損部分をつなげるといった用途に使われているパラジウムですが、用途としては、電子部品や排ガス浄化装置の触媒コンバーターのほうに幅広く使われています。
世界的に排ガス規制が進むなか、中国などの排出国でコンバーターの需要が高まっており、そのせいでパラジウムの需要が急拡大しているのです。
現在は、金やプラチナよりも高い相場で取引されており、値下がりの見通しは立っていません。

厚労省では、『随時改定Ⅰ』として、4月と10月に現在の告示価格に対して、素材価格が±5%を超えた場合、価格改定を行います。
その3カ月後(7月と1月)、改定価格からさらに±15%を超えていれば、『随時改定Ⅱ』として再び価格の変更をし、価格の変動に対応します。

ただし、15%以上の変動がなければ、値上がりしても価格は据え置きになってしまいます。
そのため、次の価格改定までの間に、逆ザヤが発生するのです。

素材価格の問題は、歯科医院のみならず、技工所の経営にも大きな影響を与えます。
歯科医院から仕事を受注しようと、技工所が無理に単価を安くして仕事を引き受けてしまっている実態があるからです。
こうした技工所では長時間労働が常態化しており、品質の悪化、海外への技術流出といった弊害が心配されています。


銀歯を使わない選択肢もあるが……

もちろん、銀歯が値上がりしているのなら、セラミックやレジンの歯に変えるという選択肢もあります。
銀歯を使わなければ、材料費問題で負担が増えることもなく、患者も選択肢が増えるため、経営の安定化・サービス向上といった点において、有効といえます。

近年では、治療の前にインターネットで情報を調べてくる患者も多く、「セラミックはできるか」と聞かれることも増えたと聞きます。
セラミックは
・耐久性の高さ
・金属アレルギーのリスクがないこと
・歯肉が変色しないこと
などのメリットが一般にも知られるようになっており、診察時に提案することも可能でしょう。

ただし、銀歯以外の素材は、保険導入があまり進んでおらず、銀歯を使うことをあまりに避けると患者に負担がかかってしまいます。

そもそも、保険診療で赤字が発生することのほうが不自然なのですから、患者にとっても、歯科医院にとっても、逆ザヤ問題の早期解決のほうが望ましいといえるでしょう。


※本記事の記載内容は、2021年11月現在の法令・情報等に基づいています。