Management LABO 経営会計事務所

所有&相続不動産が把握できる『所有不動産記録証明制度(仮称)』

21.11.01
業種別【不動産業(登記)】
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2021年(令和3年)4月、『所有者不明土地』解消に向けた不動産登記法の改正法が成立し、その際に『所有不動産記録証明制度(仮称)』が新設されました。
この制度は改正法公付後5年以内に施行するため、2026年(令和8年)4月までにスタートする予定で、特定の名義人が所有する不動産の登記内容を証明した書類の交付を、法務局に請求できるというものです。
これにより、名義人が所有している不動産と相続する不動産をすべて把握することができ、相続人が、相続した不動産の登記漏れを防ぐことにもつながります。
所有不動産記録証明制度の概要と、懸念事項について解説します。
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名寄帳を進化させたといえる制度

所有者不明土地は全国に数多く存在し、公共事業や民間取引を妨げる原因になっています。
高齢化社会の訪れによって、今後も所有者不明の土地は増加していくと予想され、その方策として今回、不動産の相続登記が義務化されました。
さらに、相続登記録漏れを防止することを主な目的として、所有不動産記録証明制度が創設されます。
所有不動産記録証明制度は、登記官に手数料を納付することで、特定の者が名義人となっている不動産の登記情報の一覧を、証明書(所有不動産記録証明書)として発行してもらえる制度です。
相続が発生した際に、相続人が、被相続人の所有する不動産の全容を把握しやすくする効果が期待されています。

これまでも、『名寄帳』として、固定資産課税台帳を所有者ごとにまとめた不動産の一覧表は存在していました。
しかし、名寄帳は市区町村ごとに作成されており、市区町村をまたいで不動産を所有している場合は、それぞれ各市区町村で名寄帳の発行手続きを行う必要がありました。

このほかにも、管理会社への問い合わせや、固定資産税の支払い記録および通知書など、被相続人の所有していた不動産の所在を知る方法はいくつかあります。

もし、被相続人の不動産が複数の市区町村にまたがっている場合は、とりあえず思い当たる市区町村に名寄帳を請求して不動産の有無を確認することも可能でした。
しかし、どこに所有不動産があるのか心当たりもなく、予想もできない場合は、専門家に依頼し、相続財産調査を行う必要があります。
それでも所在がわからない場合は、不動産が正しく相続されず、そのまま所有者不明の土地になってしまうケースもあったのです。


所有不動産記録証明制度への期待と課題

この名寄帳に対し、所有不動産記録証明書は、特定の名義人の“すべての所有不動産”を一覧で示してくれるため、相続人が不動産の全容を把握しやすくなります。
全容が把握できれば、相続の手続き漏れも防ぐことができるというわけです。

ただし、所有不動産記録証明制度には、課題もあります。

法務省の、民法・不動産登記法部会資料では、不動産の登記記録に記録されている名義人の氏名や住所は、過去に登記した時点のものであるため、必ずしもその情報が更新されているものではないことなどから、たとえば名前が変わっていたり、現住所が当時と違っていたりした場合には、検索に引っかからない不動産が出てくる可能性があるということです。

実際に制度の運用がスタートしてみないと利便性やシステムなどはわかりませんが、所有不動産記録証明制度を利用すれば、不動産が一覧で見られることになり、自身の財産管理もしやすくなります。
何かと便利な制度なので、将来的に運用が開始されたら、ぜひ利用を検討されてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2021年11月現在の法令・情報等に基づいています。