Management LABO 経営会計事務所

預⾦債権の仮差し押さえをされた際の対処方法

21.02.09
ビジネス【企業法務】
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会社を経営するには、当然、運転資金が必要です。
その運転資金は、会社のメインバンクの預金口座に入っているのが通常ですが、会社が債権者からの支払請求を拒否した場合、債権者は、その会社のメインバンクに対する預金債権に仮差し押さえをかけ、預金を凍結できる場合があります。
今回は、その預金債権の仮差し押さえと、仮差し押さえをされた場合の対処方法について説明します。
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預金債権の仮差し押さえの方法

会社債権者が、支払請求を拒否した会社の預金債権を仮差し押さえするための要件は、以下の2つです。

(1)会社債権者が会社に対して債権を有していること(被保全債権の存在)
(2)保全の必要性があること

(1)被保全債権の存在は、通常、会社債権者と会社間の契約書などを証拠として提出し疎明します。
疎明とは、裁判官が一応確からしいという推測を得た状態、またその状態に達するよう当事者が証拠を提出することを意味する言葉です。
(2)保全の必要性は、会社に財産がないことや会社が財産を隠匿・消費するおそれがあることなどが疎明されることによって認められます。

財産の有無は、会社が預金債権を有しているか(会社の預金通帳を証拠として入手しているなら、その預金通帳内の残金がいくらあるかを立証することができる)といったことや、会社が不動産を所有しているか否か(不動産の登記簿などを入手することによって立証することができる)といったことを調査することで判明します。


保全の必要性の判断は、財産の種類にもよる

保全の必要性の判断は、会社が保有している財産の種類によっても左右されます。
預金債権は、仮差し押さえをされると動かすことができなくなってしまうため(会社が預金を下ろして使用することができなくなる)、会社の運営に重大な悪影響があります。
したがって、仮に会社が不動産を保有しているのならば、優先順位としては会社への悪影響の程度が低い不動産の仮差し押さえをまず行うこととなり、預金債権に対する仮差し押さえは原則として保全の必要性に欠け、許されないことになります。

そのため、会社の預金債権を仮差し押さえしたい会社債権者は、会社が不動産を所有していないことをまず調査し、それを疎明する資料を提出したうえでないと、原則として預金債権を仮差し押さえできないことに注意が必要です。


仮差し押さえをされた場合の争い方

会社のメインバンクに対する預金債権が仮差し押さえられると、会社の運転資金が凍結され引き落としなどができなくなり、仮に会社のメインバンクや金融機関から融資を受けていた場合、その融資額を一括返済するよう求められる(期限の利益の喪失という)こともあることから、会社の運営上、重大な支障が生じます。

そこで、会社としては、仮差し押さえを外すための努力をしなければなりません。
そのための法的手段として主に以下のものがあります。

(1)保全異議の申立て
(2)保全取消の申立て
(3)仮差押解放金の供託

(1)保全異議の申立てとは、仮差し押さえがなされた際、『被保全債権が存在しなかったこと』、『保全の必要性が存在しなかったこと』を疎明し、仮差し押さえの要件が欠けていたとして仮差し押さえを外す手続きです。

(2)保全取消の申立てとは、仮差し押さえがなされた時以降に、会社の財産状況が回復し、保全の必要性が失われたとして仮差し押さえを外す手続きです。

(3)仮差押解放金の供託とは、仮差し押さえ命令が発令される際に、裁判所が定める仮差押解放金という金額を会社が供託し(会社債権者は、その供託金から満足を得る、つまり債権を回収すればよいことになるため、仮差し押さえを行う必要性がなくなる)、それによって仮差し押さえを外す手続きです。

会社のメインバンクに対する預金債権が仮差し押さえされてしまうと、会社の運営は危機に瀕する場合もあります。
会社としては、万が一会社のメインバンクに対する預金債権に仮差し押さえが行われてしまった場合、これらの手段を用いて仮差し押さえを外す努力をすることになります。
しかし、仮差し押さえを外すことは必ずしも容易ではないため、会社債権者に対する弁済を拒否する際は、注意が必要です。


※本記事の記載内容は、2021年2月現在の法令・情報等に基づいています。