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自社の契約形態は大丈夫? 民法改正で新設された『定型約款』とは

20.10.13
ビジネス【企業法務】
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2017年5月に成立した改正民法が、2020年4月1日に施行されました。
約120年ぶりの大改正で多くの規定が見直されましたが、そのなかで注目すべきなのが、新たに設けられた『定型約款』に関する規定です。
そこで今回は、『定型約款』とは何か、どのようなものが定型約款に該当するのか、また、契約後に変更したい場合の方法などについて解説していきます。
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なぜ『約款』にルールがつけられたのか

新たな民法では、『定型約款』とは『定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体』とされました(改正民法548条の2第1項柱書)。
一般的には、本来なら『契約書』をかわすべきところを、そのプロセスを省いて簡略化した『利用規約』『ご契約のしおり』などの形で多く使われています。
効力としては、契約書とほぼ同じ拘束力があると考えられています。

これまで、こうした約款のほとんどは、文字量も多く、また難解な言葉で書かれているため、ほとんど読まずにサービスを利用する人が多くいました。
それなのに、契約書にサインしたのと同じように約款に拘束されてしまうのでは、利用者にとって不利ともいえます。
そこで、2017年の民法改正ではじめて、約款についてのルールである定型約款が導入されたのです。

定型約款が適用される『定型取引』とは、まず第一に、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引のことです。
たとえば、労働契約や事業者間の取引などは、定型取引に該当しません。
第二に、その内容の全部または一部が、画一的であることが当事者双方にとって合理的なものである必要があります。
当事者の一方のみにとって利便性があるというだけでは認められず、当事者双方にとって有利なものでなければなりません。

『定型取引』は、日常のあらゆるところにおよんでいます。
たとえば、旅行会社との旅行契約、スポーツクラブを利用する際の施設利用契約、または現代において盛んに利用されているインターネット通販による売買契約などです。

では、どのような要件を満たせば、定型約款の規定が適用されるのでしょうか。
定型約款を準備した者の相手方(消費者など)が、定型約款の個別条項に合意したものとみなされるための要件は、以下の通りです。

(1)定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき(改正民法548条の2第1項第1号)
(2)定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき(改正民法548条第1項第2号)

約款の個別の条項についての同意までは必要なく、具体的な約款名を特定する必要もありません。
あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示するだけで、定型約款の個別条項に合意したことになるというのが一つのポイントといえるでしょう。


要件を満たせば、定型約款の変更も可能

契約後に定型約款を変更することになった場合、変更後の定型約款の条項について、相手方と個別に合意をしなければならないのでしょうか。
民法の原則では、契約当事者の合意がなければ、一旦締結した契約の個別の条項を変更することはできません。
しかし、次の要件を満たせば、契約の内容を変更することができます。

(1)定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。(改正民法548条の4第1項)
・定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき
・定型約款の変更が契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性がこの条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無およびその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき
(2)定型約款準備者は、定型約款の変更の効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨および変更後の定型約款の内容ならびにその効力発生時期をインターネット等で周知しなければならない。(改正民法548条の4第2項)

特に、(2)の場合については、変更の効力発生時期が到来するまでに周知しなければなりません。
わかりやすくいうと、ホームページの『新着情報』として掲載するなどの方法が考えられるでしょう。
 
以上のように、定型約款に関することが新たに民法に規定され、個別の合意がなくとも、あらかじめその定型約款を契約の内容とすることを相手方に表示しただけで、相手方は個別の条項に合意したとみなされるようになりました。

インターネットを利用してサービス提供を行う業種など、定型約款を利用したビジネスは今後も広がっていくことが予想されます。
インターネット上で取引や契約業務を行っている企業においては、この機会に、自社の契約書のひな形などを再検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2020年10月現在の法令・情報等に基づいています。