Management LABO 経営会計事務所

節税にもなる! 小規模企業の経営者や役員が加入できる共済制度

20.09.29
ビジネス【税務・会計】
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大企業に比べると、小規模企業の経営者や役員は廃業や退職をした際、現役時代との収入面での落差が大きい傾向にあります。
そこで、生活の安定や事業の再建に備えるために設けられているのが、『小規模企業共済制度』です。
国の機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が運営するこの制度は、“積立式の退職金制度”ともいえるもので、掛金について所得控除を受けられるため節税効果があることが大きな特徴の一つです。
今回は、小規模企業の経営者なら知っておきたいこの制度についてご説明します。
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小規模企業共済制度の節税効果とは

『小規模企業共済』は、毎月一定の額を積み立てることで、廃業や退職の際に『共済金』を受け取れるという制度です。
中小機構によれば、2018年3月末時点で、全国で約138万人が将来に備えて加入しています。

毎月の掛金は1,000円から7万円までと幅広く、500円単位で自由に設定できます
また、加入後も、掛金を増額・減額することができるほか、半年払い、年払い、前納も可能です。
そして、この毎月の掛金の全額を『小規模企業共済等掛金控除』として、所得から控除することができるのが大きなメリットの一つとなっています。
たとえば、掛金を毎月7万円に設定した場合は、1年で84万円の控除を受けることができ、高い節税効果が得られます。

小規模企業共済制度の加入資格は業種によって異なり、主な加入資格は以下のとおりです。

1.建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営んでいる場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主、または会社等の役員
2.商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営んでいる場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主、または会社等の役員
3.事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
4.常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
5.常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
6.上記1と2に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

ただし、常時使用する従業員の数には、家族従業員、共同経営者(2人まで)は含まれません。
また、協同組合、医療法人、学校法人、宗教法人などの直接営利目的ではない法人の役員や、アパート経営等の事業を兼業している給与所得者なども加入することができません。
まずは加入資格があるかどうかを確認しておきましょう。


共済金を受け取れるほか、貸付制度もある

廃業や退職の際に受け取れる共済金は、加入者の立場や共済金の請求事由によって、その金額が変わってきます。

たとえば、個人事業主で、請求事由が『個人事業の廃業』だった場合、毎月1万円の掛金で20年納付していれば、278万6,400円の共済金を受け取ることができます。
また、法人の役員が、65歳以上で役員を退任したケースでは、同じく毎月1万円の掛金で20年納付していれば、265万8,800円の共済金を受け取ることができます。

また、小規模企業共済制度の加入者は、共済金のほかに、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用することもできます。
以下のように、用途に合わせた貸付制度が用意されています。

●一般貸付制度
掛金の範囲内で、納付月数に応じて納付金の7~9割(10万円以上2,000万円以内)の事業資金を借り入れることができます。

●緊急経営安定貸付け
たとえば今年起きた新型コロナウイルスの例のように、経済環境の変化によって一時的に売上が減少した場合には、掛金の範囲内で、掛金納付月数により掛金の7~9割(50万円以上1,000万円以内)の事業資金を金利0.9%で借り入れることができます。

●傷病災害時貸付け
疾病または負傷により一定期間入院をした際、または災害等により被害を受けた際に、事業資金を金利0.9%で借り入れることができます。

●事業承継貸付け
事業承継(事業用資産または株式等の取得)に要する資金を金利0.9%で借り入れることができます。


元本割れなどのデメリットもある

掛金の全額を所得控除にでき、共済金を受け取れ、さらに貸付制度も利用できるという、メリットの多い小規模企業共済制度ですが、当然、デメリットもいくつかあります。

まず、掛金の納付開始から6カ月未満で廃業あるいは法人が解散した場合には、共済金を受け取ることができません

さらに、加入期間が20年未満の時点で任意解約してしまうと、共済金は掛金を下回り、いわゆる元本割れの状態になってしまいます。
加入期間が20年を超えていても、途中で掛金を増減させていた場合で掛金区分ごとの掛金納付月数が20年を下回ったときには、任意解約した際の共済金が掛金の合計を下回ることがあるので注意しましょう。

そして、掛金は所得控除にできましたが、廃業や退職する際に受け取る共済金に関しては、課税されます
共済金の受け取り方法には、『一括』『分割』『一括と分割の併用』があり、共済金を一括で受け取る場合には『退職所得』として、分割で受け取る場合には『公的年金等の雑所得』として、課税されることになります。

小規模企業共済はうまく利用すれば、節税になると同時に、資金面で大きなメリットを得ることができます。
その一方で、元本割れなどの可能性もある制度です。
加入したことでメリットがあるかどうかをしっかりと見極めてから、計画的に利用しましょう。


※本記事の記載内容は、2020年9月現在の法令・情報等に基づいています。