Management LABO 経営会計事務所

労働契約を円満に終了させるには、どうすればいい?

20.02.25
ビジネス【労働法】
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使用者側から申し出て、従業員との労働契約を一方的に終わらせることを『解雇』といいます。 
当然ながらどんな状況でも『解雇』できるわけではなく、客観的に見て『合理的な理由』があり、「社会通念上相当」である必要があります。 
しかし、『合理的な理由』について、法律で明確に定められているわけではありません。 
今回は、どうすれば従業員と円満に労働契約を終わらせられるのか、そのために必要なことについて説明します。
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『合理的な理由』がないと解雇できない

「問題ばかり起こす従業員を辞めさせたい」「経営の悪化に伴い人員整理を行いたい」など、企業側が従業員を『解雇』したいと思う理由はさまざまです。
しかし、『合理的な理由』を欠く場合、解雇は認められません。
たとえ解雇したとしても、労働契約法第16条により、権利を濫用したものとして解雇が無効になってしまいます。
これは、正社員はもちろん、契約社員やパートなどの期間の定めがある従業員についても同じです。

さらに、たとえば下記のような一定の場合については、『合理的な理由』の有無にかかわらず、法律で解雇が禁止されています。

業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇(以上、労働基準法)
性別を理由とした解雇(男女雇用機会均等法)
育児・介護休業などを申し出たことを理由とした解雇(育児・介護休業法)

では、いったいどんな場合に解雇ができるのでしょうか。

たとえば、会社が経営不振に陥った場合に、四方八方に手を尽くした上での最終手段として従業員を『整理解雇』しなければならない場合などは、解雇が認められることもあります。
ただし、この場合も、『解雇の必要性があるかどうか』『本当に解雇を回避するためのさまざまな手段を講じたのか』『解雇の対象者を決める基準が客観的に見て合理的か』などがポイントとなります。
最終的にその解雇に『合理的な理由』があるのかどうか、正当か不当かは裁判で争われることになり、もし裁判に負けてしまえば、解雇は無効になってしまいます。


解雇事由を契約時に知らせておく

万が一、裁判になった場合、会社側はなんとしてでも『合理的な理由』を証明しなければいけません。

そのためには、就業規則や労働契約書などに解雇事由を記載し、解雇に該当する条件をあらかじめ従業員側に周知させておくことが重要になってきます。
そうすると従業員は解雇事由に同意していたことになるため、解雇が『合理的な理由』に基づいて行われたと判断される可能性が高くなります。
裁判で合理性を争う場合には、この『解雇事由が定められているかどうか』と『従業員が知っていたかどうか』が大きな判断材料になります。

周知する解雇事由は、できるだけ幅広いケースに対応できるようにしておく必要があります。
たとえば、厚生労働省が作成した『モデル就業規則』(平成31年3月版)では、以下のように解雇事由を記しています。

第51条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
(1)勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。
(2)勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。
(3)業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む)。
(4)精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
(5)試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格であると認められたとき。
(6)第66条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。(※)
(7)事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。
(8)その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

※『モデル就業規則』第66条第2項で『懲戒の事由』が定められている。

上記を参考に、解雇事由をあらかじめ定めておき、労働契約を結ぶ際に従業員に知らせておきましょう。


問題行動の記録、解雇予告も必要

さらに、従業員の問題行動を起因とする解雇の場合には、万が一裁判になったときのために、『無断欠勤や遅刻の記録』『他の従業員とのトラブルの記録』『会社側が適切な指導を行ったが改善しなかったという記録』など、問題行動を証明できるものを残しておかなければいけません。

これだけのことを用意して、初めて『合理的な理由』が認められる可能性が高くなります。
つまり、それだけ従業員を解雇するのはむずかしいということです。

加えて、解雇を行う場合は、少なくとも30日前までに該当する従業員に告知しなければいけません。
それを行わない場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を、告知から解雇までの日数が30日に満たない場合は不足日数分の平均賃金を支払う必要があります。

労働契約を終了させるためには、その準備に大きな労力がかかります。
それらを天秤にかけてでも解雇したほうがよいのか、よく考えてから結論を出すことが望ましいでしょう。


※本記事の記載内容は、2020年2月現在の法令・情報等に基づいています。